草食動物
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草食動物(そうしょくどうぶつ)とは、生きている植物を主な食物とする性質、すなわち草食性(herbivorous)を示す動物のことである。植食動物ともいわれる。
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[編集] 概要
草食動物は、枯死植物も含めて植物体やそれ由来の物質を食べる植(物)食性(phytophagous)の植(物)食動物に含まれる。現在では系統分類学的問題から植物と切り離されているが、同じ一次生産者である藻類を食物とする藻食動物も、生態学的、生理学的にはここに含めて考えることが多い。
草食動物が食べる植物の部位は、果実、種子、葉、茎、根などであり、こうした摂食部位の選択に応じて様々な形態的、生体的な適応の分化が見られる。
通常、植物しか食べない草食動物として思い浮かべやすい動物のひとつはウシであろう。ウシは、他の動物を捕獲することに適応した形態や器官を持たず、草をすりつぶすのに適した歯は、動物の肉を切り刻むことが困難である。動物質の食物も消化吸収は可能で、そのため効率的な成長を目指す近代牧畜ではしばしば配合飼料に動物質成分が添加されるが、これは様々な点でウシの健康に負担をかける側面があることが知られている。しかし、草食動物とされる動物には、機会的にではあるが、卵や時には死体や昆虫のような他の動物質の食物を摂取し、蛋白質の補給をしていることが知られているものも、稀ではない。
草食動物は、一次生産者である植物を直接利用するので、いったん食物網の中で動物を経由したものしか食べられない肉食動物より個体数、バイオマスともにはるかに多い。したがって、肉食動物には草食動物を主要な食物とするものが多く見られる。
なお、肉を食べないで植物系の食べ物だけを食べる人間のことをベジタリアンという。『草食動物』とは言わない。
[編集] 植物を餌とする場合の問題点
植物性の食物は種子などを除くと低蛋白質であるとともに大半の糖類が難消化性の細胞壁成分となっているため、こうした成分特性に対する様々な適応が見られる。
草食動物は、消化器官に蛋白質を分解する酵素は持ち、植物の細胞の原形質成分は容易に消化吸収できるが、植物性の食物の主要な成分であるセルロースやヘミセルロースなどの細胞壁成分(いわゆる食物繊維)を分解するのは困難であり、多くの草食動物はそのための酵素を持たない。また、セルロースなどで構成される繊維は丈夫で破砕が困難なため、なおさら消化を難しくしている。
また、かなりの植物が捕食から逃れるために、化学物質で防御しており、これに対する対応も必要である。
植物性食物に対する適応を箇条書きすると、次のようになる。
- 栄養価の高い部位の選択
- 果実や種子、新芽といった、容易に消化できる成分に富んだ部分を選択的に摂食する。
- 食物の大量摂取
- 大量の食物を次々に消化管に通し、わずかな蛋白質をかき集める。
- 細胞壁や繊維を破砕する仕組み
- よく発達した臼歯や、砂の入った消化管(砂のう)などでよくすりつぶす。
- 長い消化管
- 消化できる成分を無駄なく吸収するために消化管の通過時間を長くとる。
- 細胞壁成分の発酵
- 消化管の一部に設けた発酵タンクで細胞壁成分を嫌気発酵し、発生した酪酸などの短鎖脂肪酸をエネルギー源として吸収する。
- 微生物による分解の利用
実際にはこれらの適応が複数組み合わされていることが多い。
[編集] ケースワーク1:チョウやガの幼虫
「栄養価の高い部位の選択」と「食物の大量摂取」の両方が併用されていることが多い。基本的に共生微生物による醗酵・分解は行われず、大量の葉を摂取してそこに含まれる細胞内の原形質を分解吸収する。大顎でかじりとった葉片を機械的にさらにすり潰すなど破砕することもなく、糞粒には原型そのままといってもいい葉片が含まれる。新芽や花、果実といった蛋白質含有量の高い部位をより好んで摂取する傾向もあるが、その程度は種類によって異なる。シジミチョウ科の幼虫は共生するアリに蛋白質などを含む栄養液を提供するものが多いが、そのせいか花やマメ科植物といった蛋白質含有量の多い餌を摂取するものが多い。
この仲間では、餌とする植物(食草という)の種類が限られているものが多い。これは植物の持つ防御化学物質に対する防御機構を、それぞれの種が特定の植物ごとに発達させているためと考えられている。なかにはマダラチョウ類のチョウのように餌植物に含まれる防御物質を体内に取り込んで、捕食者からの防御に利用しているものもある。
[編集] ケースワーク2:ウシやヒツジ
[編集] ケースワーク3:ウマ
[編集] ケースワーク4:ウサギ
[編集] ケースワーク5:ヒト
[編集] よく知られた草食動物
[編集] 関連項目
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