胎生
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胎生(たいせい)とは、動物において、雌親が体内で卵を孵化させ、子は親から栄養を供給されて成長した後に体外に出るような繁殖形態のことである。
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[編集] 意味
一般に動物は卵の形で新しい個体を形成するが、卵をそのまま体外に出すのではなく、雌の体内で孵化させ、子供の形で産む動物がある。このとき、卵の持つ栄養で子供が成長して生まれるものは卵胎生と呼ばれる。それに対して、卵から生まれた子が何らかの形で母親の体との連絡を持ち、母体から栄養などの供給を受けて成長し、十分に発育した後に生まれてくるものを胎生(たいせい)と呼ぶ。卵胎生と胎生の間には進化的に連続する様々な中間段階のものが見られることがある。
[編集] 分類群
胎生をおこなう動物としては、脊索動物門ほ乳綱(単孔類以外の)が有名である。それ以外にも、同じく脊椎動物では軟骨魚類のサメの一部、節足動物門のサソリの一部、有爪動物門カギムシ類の一部なども胎生である。
[編集] 器官
胎生の動物では、雌の体内の子供を胎児と呼ぶ。当然ながら親の体内には胎児を育成する部分が必要になる。そのような袋状、あるいは管状の器官を子宮とよぶ。子宮は普通、輸卵管の一部から形成される。
子宮の中で胎児が育っている状態を妊娠と呼ぶ。胎生の動物では、卵は雌親の体を出ないので、必然的にその受精法は体内受精である。受精後、受精卵が子宮に入り、その壁と連絡を持つことで妊娠が始まる。妊娠は子供の出産によって終わる。あるいは子供の成育の失敗などによって流産で終わる場合もある。妊娠の始まりから出産までの期間を妊娠期間と言い、動物の種ごとに一定である。
[編集] 種子植物の場合
植物に対しては普通は胎生という言葉は使わない。しかし、種子植物における種子には、幼い植物体が入っており、受精卵が植物の形になるまで栄養供給して育てる、という点では胎生に似ている。
それとは別に、胎生という言葉を使われる例もある。それは、種子が親植物の上で根を伸ばすまで育つような場合で、たとえばマングローブを構成するヒルギ科の植物は、枝についた果実から太い根が伸び、やがて根の先に新芽ができた状態で果実から抜け落ちる。これを胎生種子という。