累進課税
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累進課税(るいしんかぜい)とは、課税標準(租税を賦課する課税対象)が増えるほど、より高い税率を課する課税方式のことをいう。また、この制度下における税率は「累進税率」と称される。反対に課税標準が増えるほどより低い税率を課する方式も概念的には可能であり、「逆累進課税」と名付けられるが、実際施行例は稀である。
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[編集] 根拠
累進課税が採用される理由は大きく2つある。
一つは、厚生経済学の観点によるものである。標準的な経済学では、所得が増加すると限界効用は逓減すると仮定されることが多い。この前提のもとでは高所得者の租税負担能力(担税力)は大きくなるので、一定税率よりも累進税率の方が、実質的に平等原則にかなうこととなる(一定税率の方が不平等となる)。
もう一つは、所得再分配(富の再分配)の観点によるものである。近代以降の国民国家は、所得(富)を一部の階層へ集中させるのではなく、国民全体に広く再分配することによって、社会福祉を実現することを原則としてきたが、高所得者から多く取り、その分を中・低所得者へ再分配することができるとされる累進課税は、国民国家の理念に合致する税制といえる。
以上2点を根拠として累進課税が世界各国で導入されている。もっとも累進税率を極端に高めることは、平等原則に反するだけでなく、私有財産権を脅かすことともなりかねず、疑問視する見解が圧倒多数を占める。
[編集] 方式
累進課税には大きく2つの方式がある。課税標準が一定額以上となった時、その全体に対してより高率の税率を適用する単純累進税率方式と、一定額以上になった場合にその超過金額に対してのみ、より高い税率を適用する超過累進税率方式がある。前者では税率が課税標準の変化に応じて非連続的・階段状に変化するため、課税標準が増えた以上に税金賦課額が増加することがあり得るが、超過累進税率の場合はそのようなことはない。
[編集] 逆累進的な租税
一方、所得に対して逆累進的に作用すると主張される租税として、一般的な消費税(日本では消費税として導入済)がある。これは、家計の消費が必ずしも所得に対して比例的に増大せず、多くの場合消費性向が所得に対して逓減するとの観察に基づく主張である。また、人頭税についても、所得の多寡にかかわらず人間単位で同じ税額を課すものであるため、家計所得に対して逆進的に作用するとの説明がされることもある。
[編集] 日本での議論
日本では、税収のうちでも大きなウェートを占める所得税、あるいは贈与の際に申告する義務のある贈与税が、この累進課税方式の代表例である。日本の累進税率は、欧米諸国と比較して高いとする主張、もしくは同等とする主張とに大別される。また、小泉内閣の国務大臣竹中平蔵は累進課税は「不公平」であるから、人頭税導入を理想と主張している。(『Voice』2001年5月号竹中平蔵・櫻井よしこ連載対談 目を覚ませ、日本人 第5回、佐藤雅彦との共著『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞社)77ページなど)
なお、住民税も累進課税であったが、平成19年度分から一律10%(道府県税4%、市町村税6%)となる。