第617爆撃機中隊 (イギリス空軍)
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| No. 617 Squadron | ||
|---|---|---|
| 情報 | ||
| 任務 | 爆撃・攻撃 | |
| 作戦機 | パナビア・トーネード（現第617中隊） | |
| 基地 | イギリス空軍ロジーマウス基地 | |
| モットー | "Apres Moi Le Deluge" (我らが飛べば、洪水を起す) | |
| 歴史 | ||
| 部隊創設 | 1943年3月15日 | |
| バッヂ | 小型の王冠付き円形紋章、モットー入り中帯、三つの稲妻と、爆破されたダム堰堤から流れ出る水 | |
| 特筆すべき戦歴 | 1943-1945年：ヨーロッパにおける要塞爆撃、1944年：ダムとビスケー港爆撃、1944-1945年：フランスとドイツへの爆撃、1944-1945年：北海と海峡での戦艦ティルピッツ攻撃、1945年：ドイツの港湾爆撃、1991年：湾岸戦争、2003年：イラク戦争 | |
第617爆撃機中隊（だい - ばくげきき ちゅうたい、No. 617 Squadron）は、第二次世界大戦中にドイツ工業地帯の貯水地ダムを破壊する「ダムバスターズ」として名を馳せたイギリス空軍の爆撃機部隊。第617飛行中隊（en）とも訳される。
現在も第617中隊は存続しスコットランドのロジーマウス空軍基地（RAF Lossiemouth）に駐留し、作戦機としてトーネードGR4攻撃機を使用している。
目次 |
[編集] 第二次世界大戦での戦歴
[編集] 創設
第二次世界大戦中の1943年3月15日、スキャンプトン空軍基地で第5爆撃機集団 （No 5 Bomber Group あるいは 5 Group, 第5航空群とも訳される）に第617爆撃機中隊が設けられた。目的はドイツのルール工業地帯に近くのメーネ・ダム、エーデル・ダム、ゾルペ・ダムを破壊することであった。初代指揮官はガイ・ギブスン中佐、すでに殊勲賞(en)と空軍殊勲賞(en)を授章するほどの実戦経験があった。
ギブスン中佐は、ドイツのダムを特殊な爆撃法で攻撃する事の詳細を知らされずに、隊の編制にあたった。それでも、特殊な爆撃を行うために地上要員も含めて、要員には優秀なものが選抜された。
[編集] チャスタイズ作戦
ダムの爆撃作戦はチャスタイズ作戦（Operation Chastise）と名付けられ、1943年5月17日に実行された。中隊は、バーンズ・ウォーリス技師が開発した反跳爆弾（en）を使用した。なお、成功を収めたこの作戦により、隊長ガイ・ギブソンはビクトリア十字勲章を授与された。
5月27には、617爆撃機中隊のパッチが制定された。これは、チャスタイズ作戦の成功を記念して、破壊されたダムの堰堤から水が溢れ出る情景を示し、部隊訪問中のキング・ジョージ6世にも承認された。（画像）。
[編集] トールボーイとグランドスラム
1943年の後期、指揮官がギブソンからレオナルド・チェシャに引き継がれた。チェシャは個人的に、標準的なパスファインダー機(en)の誘導による精密爆撃を可能にするための、標的特定技術を要求した。最終的に彼は、標的をマスタング戦闘機により特定させている。
終戦までに、中隊は精密爆撃のスペシャリストとして戦闘行動を継続した。また、特殊爆弾として、トールボーイとグランドスラムの二種の「地震爆弾」を使用した。これを使った作戦は、部隊編成に特別な注意を払わなければならなかった上に、多数の喪失機を出したが、ドイツ軍の要塞やインフラ施設を破壊することに成功した。詳しい戦歴はトールボーイを参照の事。
[編集] ティルピッツ作戦
数々の作戦の中でも、特筆に値するものとして、ドイツの戦艦ティルピッツを着底させた攻撃作戦がある。ティルピッツは、ノルウェー北部のフィヨルド地帯に移動して、北極海の輸送船団に対して攻撃を行うおそれがあったが、イギリス本土からは遠すぎて作戦行動範囲内になかった（北極海の戦い）。ティルピッツはすでに、イギリス海軍のミゼット潜水艦とイギリス海軍航空隊 (Fleet Air Arm) による二回の攻撃で損傷を受けていた。しかし、どちらの攻撃も沈没するほどの損傷は与えられなかった。
1944年9月15日、ティルピッツをトールボーイによって攻撃する命令が下され、第9および第617中隊がソビエトの基地に移動した。この攻撃により、ティルピッツは大きな損傷を受け、南のトロムセ・フィヨルドへ修理のための移動を余儀なくされた。このフィヨルドは、スコットランドからの爆撃作戦行動範囲内にあった。中隊は10月にスコットランドに戻り、攻撃を行ったが成功しなかった。11月12日、同二個中隊は再びティルピッツを攻撃し、着底させ行動不能とさせた。
ティルピッツに対するこれらの作戦は、J.B. "ウィリー" タイト中佐により指揮された。
[編集] その後
第617中隊の活躍は、「ダムバスターズ」と名付けられた本や映画になった。また、「ダムバスターズ・マーチ」が作曲された。この曲は、イギリス空軍中央軍楽隊により演奏されており、現在ではCDで入手できる。
第二次世界大戦後、1958年5月1日にアブロ・バルカンが配備され、現在においてはパナビア・トーネードGR1とGR4が配備されている。
[編集] 現在
一旦、トーネード爆撃機によりマーハム基地で再編されたが、現在はロジーマウス基地に駐屯している。第617爆撃機中隊は、現在においてもパイオニアとしての地位を与えられており、2003年からのイラク戦争において、MBDA社のストーム・シャドー巡航ミサイルを最初に発射している。なお、イギリス空軍の最初の女性ジェット・パイロットは、1994年8月に第617中隊に配属された。
[編集] 使用作戦機の経歴
- 1943年から：アブロ・ランカスター
- 1946年から：アブロ・リンカーン
- 1952年から：イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラ
- 1958年から：アブロ・バルカン
- 1983年から：パナビア・トーネード
[編集] 文献
- 鈴木五郎（著）、『アブロ ランカスター；ナチを崩壊させた英空軍爆撃機』、サンケイ新聞社出版局、1979年
- Max Hastings（著）、英空軍の爆撃作戦について詳しく記述されている、 Bomber Command, Pan Books, 1981, ISBN 0-330-26236-X
- Chaz Bowyer（著）、 Bomber Group at War, Ian Allan, 1981, ISBN 0-7110-1087-0
- Edward Bishop（著）、『戦闘爆撃機 モスキート；英軍の秘密急襲兵器』、サンケイ新聞社出版局、1983年
- Andrew Brooks（著）、Bomber Squadron at War, Ian Allan, 1983, ISBN 0-7110-1279-2
- Paul Blickhill（著）、矢嶋由哉（訳）、『暁の出撃』、朝日ソノラマ、1991年、ISBN 4-257-17235-5
[編集] 映画
- 『暁の出撃』（原題：The Dam Busters）、英国映画、マイケル・アンダーソン監督、1955年、アソシエーテッド・ブリティシュ
