立憲主義
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立憲主義(りっけんしゅぎ、Constitutionalism)とは、憲法に基づいて国の政治を行うという原理のこと。国家は憲法の支配のもとで統治されるべきであるという原理。
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[編集] 立憲主義の定義
立憲主義(近代立憲主義)は、権力の行使を憲法に基づかせるという考えであり、18世紀後半に確立された。それは、絶対君主制の下にあった国王の権力を、制限しようとする動きの中で生まれた。そのため、ここでの憲法は国王の権力を制限し、国民の自由を擁護することを目的とする。このような内容を持つ憲法を、特に立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)という。フランス人権宣言16条には「権利の保障が確保されることなく、権力分立が定められていないすべての社会は、憲法をもつものではない」とあるが、ここにいう「憲法」や、19世紀に各国で定められた自由主義的憲法こそ、立憲的意味の憲法である。個人の人権の保障と権力分立は、その重要な要素である。
なお「憲法」には、広義では、国家の組織・構造に関する定めや政治権力の在り方などを定めた法規範という意味もある。これを固有の意味の憲法という。この広義の「憲法」に対応して、権力行使を憲法によって規正しようとする意図を広義の立憲主義という(古典的立憲主義ともいう)。しかし、権力の行使を制限する契機に乏しく、「憲法」に従った無制約の権力行使を許していた。
[編集] 立憲主義の形態
立憲主義にはいくつかの形態がある。
- アメリカ型立憲主義 - 厳格な権力分立制をその特徴とする形態。
- ヨーロッパ型立憲主義 - フランスなどに見られる議会主義を発展させた形態。
- ドイツ型立憲主義(外見的立憲主義) - 皇帝(君主)勢力の温存を図ったため、国民の人権保障の機能が弱い形態。大日本帝国憲法はこの形態を採る。詳細は立憲君主制を参照の事。
[編集] 立憲主義と民主主義の関係
立憲主義は、国民の自由を擁護することを目的とする原理であり、自由主義をその基底に持つ。そして、国民の自由を適切に擁護するためには、国政が国民自らの手により行われること、すなわち民主主義が必要とされた。そのため、自由主義は自由民主主義として、立憲主義は立憲民主主義として、民主主義と不可分に結びつくこととなる。
こうして、近代立憲主義は、個人の人権保障と権力分立、個人の尊重などといった国家権力への制限を第一の特徴とし、人民主権に基づいた代表民主制を第二の特徴とするに至った。
この二点、すなわち立憲主義・自由主義と民主主義は、相互に対立する可能性を含んだ概念である。たしかに、民主主義は多数決をその要素として持つため、少数者の自由を侵害しやすいという点で自由主義と対立し、多数者の権力行使を制限するという点では立憲主義と対立する。しかし、そもそも、民主主義は自由主義や立憲主義を実現するための手段であって、目的ではない。民主主義が多数者の暴走とならないよう抑制して、立憲主義・自由主義の実現を図る体制が採られている。
[編集] 今日における立憲主義の課題
20世紀には、福祉国家化(社会国家化)が進む中で行政権の役割が増大し、行政国家現象が生じた。ここに立憲主義は、国家権力から国民の自由を守るという原理から、国家権力に対し国民の権利・自由を積極的に保障するよう求めるという現代型立憲主義へと修正される。これは、立憲主義の大幅な変革あるいは否定を伴う社会主義との対抗上、なされた修正であるとも見られる。
20世紀の末には、多くの国で「小さな政府」が求められるようになる。これは、社会主義国家の相次ぐ破綻と、福祉国家化による大きな政府の財政負担に耐えきれなくなったことによる。このため、立憲主義は新たな修正が求められている。
[編集] 関連項目
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