王立宇宙軍~オネアミスの翼
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『王立宇宙軍 ~オネアミスの翼~』(おうりつうちゅうぐん オネアミスのつばさ)は、1987年に劇場公開されたアニメーション作品である。
配給会社(東宝東和)によって公開前にリリースされていた仮タイトルはリイクニの翼。劇場公開時のタイトルは『オネアミスの翼 ~王立宇宙軍~』。
また、朝日ソノラマ文庫より「オネアミスの翼-王立宇宙軍 I・II」が1986年~1987年に発売されており、内容は大筋は同じながら映画版で描ききれなかった多くのエピソードが加筆されていて非常に読み応えのある作品に仕上がっている。筆者は飯野文彦。
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[編集] 概要
バンダイの映像事業進出の先駆けとして企画され、制作費は8億円(フィルム制作で約三億六千万円)。この映画を制作するため1984年にGAINAXが設立された。
監督は山賀博之。後に『新世紀エヴァンゲリオン』などで有名となった貞本義行や庵野秀明も参加、音楽監督として坂本龍一を起用している(坂本の関与はメインテーマの作曲と基本設定へのアドバイスのみで、実質的な音楽監督は上野耕路)。興行的には不振であったが、ビデオ、LDは長く好調な販売を記録した。1997年に「サウンドリニューアル版」が制作・公開された。イメージソングとして、統乃さゆみ『オネアミスの翼 ~Remember Me Again~』(CBSソニー。作詞・森生紗都子、作曲・長戸大幸)がビーイングの手によって制作されたが、作品内容との乖離ゆえ、安田成美の『風の谷のナウシカ』同様アニメ本編で使用されることはなかった。
異世界を舞台に人類初の宇宙旅行計画を描いたこの作品は、アメリカ映画『ライトスタッフ』にも通じる青年達の成長物語であると同時に、「人類の進歩」を真摯に見つめたテーマ性を有し、現在でも評価が高い。また、制作者・企画者の多くが、商業作品の制作経験を殆ど持たない20代の若者であったことが知られる。設定も細かく描かれており、主要スタッフはNASAにロケハンに行っている。また、ハリウッドでプレミア上映もされた。
このアニメに対し宮崎駿は、若者の手で作りあげたという理由からある程度評価したが、打ち上げのシーンで将軍が簡単に打ち上げを諦めたことにかなり立腹したようで、昭和62年3月のキネマ旬報で山賀博之監督とほとんど口論に近い形の対談を行っている。
企画当初、タイトルは『王立宇宙軍』であったが、スポンサーの意向で『オネアミスの翼』がメインタイトルとして付け足された。制作サイドからは不評であった。のちにLD「メモリアルボックス」でタイトルから『オネアミスの翼』が取り除かれ、それ以降は『王立宇宙軍』がメインタイトルという扱いになっている。
また、公開当時上映時間の都合からカットされた場面(約1分)があり、「メモリアルボックス」において、登場キャラクターの声優(森本レオ・曽我部和恭)による追加アフレコを行った上で本編に組み込まれた。その後1997年リリースの「サウンドリニューアル版」ではこの場面は特典映像という扱いになっており、本編は公開当時に戻されている。
ライブドア前社長堀江貴文は本作のファンで、雑誌インタビューで「パート2を作る!」と表明したこともあった。またそれ以前の92年頃にも続編『蒼きウル』が山賀監督自身によって構想されたが、企画は諸事情から凍結となり、実現していない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 物語
地球に似ているが全く異なる発展を遂げた文明(地球で言う1950年代)を持つ星の「王国オネアミス(正式国名・『オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦』)」が舞台。
士官も10人に満たず「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間に落第軍隊として見下されているオネアミス王立宇宙軍の士官、シロツグ=ラーダットは、欲望の場所でしかない歓楽街での、献身的に布教活動を行う少女・リイクニ=ノンデライコとの出会いをきっかけに、それまでのその日暮らしの自堕落な生活を捨て、人類初の宇宙戦艦という名目の有人人工衛星打ち上げの計画に参加し宇宙飛行士を目指す。
厳しい訓練や多額の税金を使う宇宙飛行の意味、主任ロケット設計技師であるグノォム博士との死別、リイクニとの気持ちのすれ違い、敵国「共和国」からの刺客・打ち上げ地点への越境攻撃等の妨害を懸命に乗り越え精神的に成長していくシロツグの姿を描く。
[編集] 主要な登場人物(声優)
- シロツグ:森本レオ
- リイクニ:弥生みつき
- マナ:村田彩
- マティ:曽我部和恭
- カロック:平野正人
- ドムロット:鈴置洋孝
- ダリガン:伊沢弘
- チャリチャンミ:戸谷公次
- ネッカラウト:安原義人
- ヤナラン:島田敏
- マジャホ:安西正弘
- グノォム博士:大塚周夫
声優陣には他のアニメでも有名な声優を多く採用し、主人公シロツグ・ラーダット役は俳優の森本レオが担当。当時現役アナウンサーであった徳光和夫や、オスマン・サンコン、アントン・ウィッキーもTVアナウンサーやコメディアンの役として出演している。
[編集] スタッフ
- 製作:山科誠
- 企画:岡田斗司夫、渡辺繁
- 監督・原案・脚本:山賀博之
- 脚本協力:大野木寛
- 助監督:赤井孝美、樋口真嗣、増尾昭一
- キャラクターデザイン・作画監督:貞本義行
- 作画監督:庵野秀明、飯田史雄、森山雄治
- スペシャルエフェクトアーティスト:庵野秀明
- 美術監督:小倉宏昌
- 原画:高坂希太郎、江川達也
- 設定スーパーバイザー:野田昌宏、江藤巌
- 音響監督:田代敦巳
- 音楽監督:坂本龍一
- 音楽:坂本龍一、上野耕路、野見祐二、窪田晴男
- 制作:GAINAX
- 製作:バンダイ
[編集] 外部リンク
- ガイナックス公式サイト(WORKS→「王立宇宙軍」)