点と線
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『点と線』(てんとせん)は、松本清張の長編小説。筆者初の長編推理小説である。「旅」1957年2月号から1958年1月号に連載し、同年に光文社から刊行された。
博多で発見された情死体に疑問を持った二人の刑事を活写する。
時刻表を使ったアリバイ作りの、元祖というべき作品である。また、動機を重視したこの作品は「社会派推理小説」と呼ばれ、「清張ブーム」を巻き起こした。高峰三枝子主演で映画化。
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
料亭「小雪」の女中二人に、東京駅の13番線で見送られていた機械工具商会を経営する安田辰郎。三人は、向かいの15番線に同じく「小雪」で働くお時が男と夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところを見つける。だが数日後、お時とその男・佐山は、香椎で死体となって発見された。
一見ありふれた情死に見えたが、博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、佐山が持っていた車内食堂の伝票から事件の裏の真相を探るため、一人捜査をすることにする。
一方、佐山は現在社会をにぎわしている××省の汚職事件の関係者であった。この事件を追っていた刑事・三原紀一は、心中事件を追って九州へ向かい、鳥飼と出会う。
捜査の結果二人は、東京駅で13番線から15番線が見えるのは、1日の中でわずか4分しかないことを突き止め、安田を容疑者として追及しようとする。だが、安田には完璧なアリバイがあった。
[編集] 作品鑑賞
当時は新幹線がまだなく、飛行機も一般的ではない時代であり、急行もかなり時間がかかる。当時の社会状況を念頭に置いて読む必要がある。現在では使い古されたトリックであるといえる。
作品の進行とともに読者は事件を追及する刑事と同じ視線・体感でその展開に心酔できるのに対し、末尾では突如その刑事が友人である刑事へ宛てた手紙の形をとって、解決された事件の回顧として過去完了形になるという時間の軸の変化に、その結末には多少の物足りなさが残る(ただしそれによって作品の質が損なわれている訳ではない)。
特に作品の後半部分では、「先入観」や「思い込み」から生じる錯誤が事件の鍵となるが、真の主犯が安田ではないと臭わせるあたりにこの作品の秀逸性、この作者の非凡な才能を感じ取ることができよう。
また、本作品の功績としては、「社会派推理小説」という一分野の確立にあると言える。
[編集] 関連作品
- 時間の習俗