海運
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
海運(かいうん : marine transport)とは、海上を利用した旅客輸送・貨物輸送である。
目次 |
[編集] 概要
古来より、大量・長距離物流の要であり、地中海や北海、インド洋などで活発な活動が見られた。
造船技術・航行技術の発達により、大陸間航行などが行われるようになると、その存在は一段と重みを増した。
かつては旅客も船を利用しており、第二次世界大戦前までは豪華な客船が数多く建造され、大陸間交通の主役であったが、航空機の発達と共に旅客航路は衰退。現在は近海・海峡の連絡船やフェリー、クルーズ客船などに限られている。しかし現代でも、世界的に活況を呈する貿易において物流の主軸であり、大洋の定期航路をはじめ世界中の海を交易路として行われている。
1970年代から、空荷船の積むバラスト水による環境汚染が問題視されるようになった。
[編集] 特色
海水の浮力を利用した物流であるということから、大量・長距離輸送に最適である。また、輸送キロトンに対する燃費が他の運輸手段に比べて格段に安く、低コストであることもメリットである。一方で、空輸などにくらべて時間面で圧倒的なデメリットがあるが、消費財貿易でもコンテナ輸送の拡大により積み下ろしの時間が短縮され効率性が向上している。
また、いくつかの海峡などの重要な戦略ポイントを通過することが多いため、シーレーンが安全保障や地政学上、ボトルネックとなっている。
いずれにしても、鉱物資源などの重量物を大量に輸送する手段は他にないため、優位性は揺るがない。特に島国で、食糧や鉱物資源のほとんどを輸入に頼っている日本においては、必要不可欠な存在である。
[編集] 世界の主な海運会社
- A.P. モラー・マースク(デンマーク) 世界最大手
- P&O(イギリス)
- なおP&Oグループでオランダのネドロイドと統合したP&Oネドロイド(コンテナ船運航)はA・P・モラー・マースクに買収された。
[編集] 日本の海運会社
日本の海運会社は、戦後国策上の観点から政府から統合を促進され、大手海運会社は次々に合併。現在は日本郵船(世界2番手)、商船三井(世界3番手)、川崎汽船の大手三社体制となっている。
また、プラザ合意による円高でそれまでドル建で資産を決済していた海運各社は大打撃を受け、バブル景気を尻目にリストラが続く状態であったが、近年は中国の好景気によって世界的に荷動きが活性化。それを反映して船賃が高騰したことから業績が回復してきている。
中国の資源調達政策などの影響で、重量資源を長距離運ぶ航路が増大し、キロトンが飛躍的に高まった。このため世界的に船舶不足が発生し、海運各社は新造船発注を増大させた。これを受けて造船各社は増産し、資材を生産する鉄鋼業が活況となった。鉄鋼業は鉄鉱石・石炭を大量に発注したため海運需要が増大し鉄鋼・造船・海運の三業種で需給がタイトになった。(船バブル)
[編集] 船の種類
[編集] 運航形態
[編集] 外航海運と内航海運
[編集] 定期船と不定期船
[編集] 事業の形態
欧州において、大航海時代には海運に関連するビジネスが発達した。その頃の海運は商業者当人が船舶を所有し、遠方の商品を売買するという形態であった。このため、商業者が持つリスクは著しく高まるため、リスク分散の方策として株式会社が発達した。また、沈没等のリスクを分散するため保険も発達した。現在でも日本の損害保険会社に「海上」の名を冠しているものがあるのは、ここから損害保険が発達したからである。
現代における海運会社とは、物流会社であり運搬する商品の売買は本質的目的ではない。また、リスク分散を進めるため、船舶を借り受けている場合が多く船舶資産の運用会社としての側面が強い。船舶は、各地にいる船主と呼ばれる個人事業者が所有しており、海運会社に貸している。船主は世界中に存在するが、日本の愛媛・今治市の船主達は「エヒメセンシュ」として世界的に有名である。
また、大手海運会社は陸上・航空を含め、荷物の出発地から到着地までの一貫輸送を手がける(一般に総合物流と呼ばれる)ようになっている。日本郵船が日本貨物航空を傘下に入れ、さらにはヤマトホールディングスと提携したり、商船三井が近鉄エクスプレスと提携したことは、この流れに沿ったものであると言えるだろう。
[編集] リベリア船籍とパナマ船籍
便宜置籍船の項目を参照せよ。