油彩
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油彩(ゆさい)とは、顔料を油を展色剤(ビヒクル)として練り合わせ、調合された油絵の具等を用いて制作する絵画の手法のひとつである。補助材料としてアマニ油(リンシードオイル)などの乾性油やそれらを加工した油、テレビン油などの揮発性油、乾性油の酸化重合を促す乾燥剤なども使用される。 油絵の具は顔料と油との屈折率の差や顔料自体の粒子径により、色によって異なる透明度を示す絵の具であるが、もともと極めて不透明で乾燥の早すぎるフレスコに対しその透明度の高さがゆったりとした乾燥性とともに画家たちに支持され発展してきた絵画材料である。透明な重ね塗りができ、油を展色剤とするため顔料が展色剤の中で浮いた状態となり、顔料と顔料の隙間にも光が通る効果をもたらす。(これを重層彩色法構という) このように本来透明感のある画面が特徴の絵画技法である。
油彩の手法を使用した絵画のことを油彩画(ゆさいが)、油絵(あぶらえ)、洋画(ようが)などと呼ぶ。また、油画(ゆが・あぶらえ)と表記することもある。
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[編集] 構造
油彩の基本的な構造は以下の通りである。
- 支持体…絵の断面構造で最下層に位置し、下地や絵の具層を物理的に保持する部分。なお、下地層を含め支持体と呼ぶこともある。油彩の場合は多くの場合キャンバスがこれに当たるが、木製や集成材のパネル・板に麻布や綿布を張ったものなどが用いられることもある。
- 下地拵え(したじ拵え)…前膠などとも呼ぶ。油絵の具は乾性油の酸化重合によって固化する絵の具であるため、布地などに直接描画すると布を酸化し侵してしまう。それを防ぐために支持体と絵の具層の間に油を絶縁する層が必要となる。油彩の場合、一般的には支持体上に膠水を塗布することで絶縁される。
- 地塗り(下地)…支持体自体が持つ色(木の色や生布の色)は、油絵の具が透ける性質を持っているため完成後も影響する。そのためその色が気に入らない場合、作者は下地拵えと絵の具層との間に中間の層を作り、支持体の色を消すこととなる。材料には石膏や白亜、鉛白、チタン白などだが、それらを保持するために膠水や加工した乾性油などが用いられる。膠水のみで調合した地塗り(水性地)は上の絵の具層から多くの油分を吸収して絵肌が艶消しとなりやすく、乾性油のみで調合した地塗り(油性地)は上層の油をあまり吸収せず絵肌に艶が生まれやすい反面、絵の具の固着性に劣る場合がある。膠水と乾性油を混合し乳濁液化した地塗り(エマルション地)はこの中間程度となり一般的にバランスが良い。地塗り層は、上の絵の具層からある程度の油分を吸収することで絵の具の固着性を高める役割も果たすことから、地塗り作業は油彩技法の中でも大変重要な行程である。
- 絵具層…油絵の具によって彩色される層。
- 保護膜層…絵具層の上に施す保存用のニス。油絵の具に含まれる顔料の中には、大気中に含まれる様々な化学物質・汚染物質などによって化学反応を起こし変色、退色するものがある。そういったリスクを低減するため、完成後ニスが塗布される。このニスはダンマル樹脂をテレビン油で溶解したものなど、後に再度溶解して除去・塗り直しができる材料を使用する。
[編集] 道具
- 支持体
- 軟質
- 硬質
基本的に油絵は布に描かれていると言う概念があるが、必ずしもそうではない。布は木枠に釘で太鼓のように張り、処置をした上で描写する。硬質でも処置の仕方は殆ど変わらない。紙などはパネルに膠で貼付けて処置する場合もある。
- 描写道具
- 絵筆(鉛筆=pencil ペン=pen 絵筆=penisillius)
- ラウンド(丸)、フラット(平)、ファン(扇)、フィルバート(平突)面相、カラーシェーパー、刷毛など
- 毛質…人毛、豚毛、馬の尻尾、ナイロン繊維
- ナイフ類
- ペインティングナイフ、パレットナイフ
- ローラー
- パレット
筆は、同じ形状でも毛質によって描き味が全く異なる。また、描画は筆に限らず様々な方法で試される。ナイフ、指、水や薬品を用いる場合もある。ナイフは包丁のようなものではなく、コテのような形のもので、油絵の具を練ったり、画面についた不要な絵の具を削ったりして用いる。
- 着彩道具
- 油絵の具
- 顔料
- 体質顔料
- 粉末顔料
- 描画油
- turpentine テレピン油 下描き
- rectified turpentine 調合テレピン油 下描き
- peindre パンドル 中描き
- retouching vanish 加筆バニス 上描き
- boiled linseed oil 種子油 中描き
- purified linseed oil 高純度種子油 中描き
- sunsicked linseed oil サンシックドリンシードオイル 中描き
- poppy oil ポッピーオイル 中描き
- lesolvant 全行程対応調合油 調合油
- white spirit ホワイトスピリッツ
- petroleum ぺトロール 中描き
- 乾燥剤
- sikkative 速乾油 調合油
- white sikkative 透明速乾油 調合油
- painiting oil 調剤済油 練習用調合油
- 膠
- 粒膠
- 三千本膠
- 油壺
- メディウム
現在一般的なチューブ入り油絵具は、19世紀になってから開発された。それ以前は、絵を描く人自身が顔料と油などを練ってその場で絵の具を作っていた。現在市販されているチューブ入りの油絵の具には、既に描画油や乾燥剤が練り混ぜられており、容易に作画できるよう工夫されている。一般の人でチューブ入りの絵の具を作る人は少ないが、作る時は、アルミ質の円筒形状態の絵の具チューブ(尻を折ってない状態)に、展色剤、体質顔料、粉末顔料を練り合わせ、自身の一番望む形になった状態のときにチューブに詰め、チューブの尻を折る。チューブに入っているか否かは、保存状態と絵の具の詰め方が上手かどうかというだけの問題になるが、油彩の絵の具の塗布以前の工程として「薬学上の知識と混色判断」=「調剤」が必要で、油彩において必要な技術とする見方もある。
[編集] 技術
技術には、様々な扱われ様があり、それは単なる技術上のものと思想が絡んだものとがある。着色反復が重要なのか、はたまたあるいは積層が重要なのか、それとも着色一筆に対する意味性が強いかは、それぞれになる。
- 平塗り…塗り斑無く、平たい状態に塗り上げる事。
- ハッチング…引っかいたり、面相筆を使ったりして、細い線で描いていく事。
- インタリオ…陰刻法。凹を刻む方法。削るハッチング。
- クロスハッチング…その細線を交差させた重層や、色んな色線を重ねる事
- マスキング…テープで支持面を保護し、保護されていない所だけに塗布する事。
- ステンシル…その保護の計算織面仕様によって、模様を創る事。
- デカルコマニー…張り合わせた絵の具の引きや型を使う、型押しモデリング。
- フロッタージュ…物の型を起こす技術。
- コラージュ…紙を張り合わせ、絵画にする、また絵画と一体化させる事。
- アッサンブラージュ…立体物を張り合わせ、絵画にする、また絵画と一体化させる事。
- ヒディング…下地の跡を少し隠し、その痕跡を魅力に変える技術。
- モデリング…媒質塑形。状態は様々で、色々な状態が望める技術。「応物象形」
- ポワリング…絵の具を垂らす技術。特殊なクセがいる。描写と中々噛みにくい。
- アクションペインティング…絵の具を叩きつけたり、振り回したりする技術。
- ドリッピング…絵の具の玉を振り落とす技術。前述した2つとは同種類になる。
- 透かし
- 暈し
- ブラッシュストローク
- ドライブラッシュ
基礎技術
技術とは、自由にあふれているが、油の調剤の調整とともに相談しつつ、油分に適した技術、調剤に適した油分のもちいかたが必要不可欠である。油分にあった技術を。
- 着色(反復)ティンティング tinting
- 着色(塗布)ペインティング painting
- 下図 エスキース esquisee
- 輪郭特定 プロフィリ profilli
- 面輪郭残し線 ヒディングプロフィリ hiding profili
- 輪郭調整 コントリオーニ contrioni
- 下線主線確定 カルトーネ caltone
- 彩色 カラーレ calorle
- キアロスクーロ(明暗) chiaroscuro
- グラデーション(階調) gradetion
- インパスト(上層厚塗り) impasto
- インプリマトゥーラ(有色下地) imprimatura
- グレージング(単色層) grazing
- クロワゾネグレーズ(仕切り単色層) crowazone graze
- カマイユ(有色下地上単色画) camaieu
- グリザイユ(白~黒階調画) grizaillu
- エボッシュ(彩色下絵) ebouche
- エボッシュグレーズ(描画上薄塗り描画) ebouchegraze
- グラッシ(薄塗り重層画) glasis
- ハッチング(線描) haching
- クロスハッチング(交差線描) cross haching
- スカンブリング(仕上げ平塗り・技術) scumbling
- クロススカンブリング(交差透明面描 crossscumbling
- ベラトゥーラ(仕上げ平塗り・表現) velatura
- ベラメンティ(仕上げ平塗り・細密化) velamenti
- リリエーヴォ(盛り上げ効果) ririevo
- プレパレーション(地塗り) preparetion
- ヒディングパワー(色層力) hiding power
- コンポジジション(色面バランス分割) composition
- クロワゾネ(仕切り色面) crowazone
- ダブルクロワゾネ(仕切り面仕切り色面) crowazone on the crowazone
- アラプリマ(直接描き ・喜踊躍動) alla prima
- 模 イミテーション imitation
- 再現 リプレゼンテーション representation
- 再復 レストレーション restration
- 再現 レフィオリア refiorire
- 復元 レノバティオ renovatio
- 歯模刻 アウフバーン aufburn
- アリッチョ arittio
- シノピア sinopia
- イントーナコ intonaco
- ジョルナータ jolnata
[編集] 意識
技術を行使する際、併行して意識を持つ事も肝心である。それは決して言葉にならないものでもなく、特に「層」を行程の主格の一つに置く絵画としては、その意識を保つ事が絵画作業と併行している事が重要になる。意識と同時進行で技術を用いる、そしてその技術と意識は、もっともかみ合う二つである事が条件になる。この各内在を知るにおいて人間生活の調和が肝心になり、その具体的尊重として、描写対象一つ一つの後景、実在性を意識する。その意識の順番を5つに分けたものを、絵画5層と言う。まず重層色彩法構において層と調剤の意識を確実にしながら、対象物に対する意識をきちんと確立する観察を「見る」でなく「こうなっている」という現象の数々を手がかりとして、具体化させる。その内在や外在の詳細をきちんと描く順序としても、その意識している点を描くに最も円滑な調剤、また、全段階を想定した場合、その層でどの現象を意識したら、次の層にきちんと自然につなげれるか、という。さまざまですが、大概は、空間と明暗とクロワゾネ(仕切り画)(際攻めは、その仕切り画の観点から言っても、とても描き手を良い調子にもっていける(homeostasisを活性化させるtransとしても)ので、予備校でも良用されています。)から始まって、ムーブマン、マッセ、ボリューム、フォームを取りつつ、実在の明暗においてだけでなく、その現象の説明としてのフォームユング、(対象物の理解を助長させる説明としての描写)そして、詳しい描き込みに入っていきます。そして、おのおのを描きこんでいきます。その状態変化、物が自分の手によって再現されていく様を、喜びと楽しさとともに進めて行くことが、デッサンと意識点のより良い喚起点です。「ああ、こんな着眼、こんな現象」という。それによって、社会的な自身をもポジティブに形成されるという、方向性です。 それは、全体とのコミュニケーションです。これは、総ての教科、一般教養を内在させるにも容易です。そして、調剤力に応じて、重層できる塗布量が増えます祖から密という単純な問題でなく、意識の「概」から「細密」までをもうひとつの階調として描くのが意識点です。 これは、全体との楽しいコミュニケーションの円環で身に着けましょう。 視力や、人間生活のコミュニケーションの拍車にも繋がるのです。 それだけの観察力を、私生活に向けたら、きっとより理解の繋がるコミュニケート でしょうし。
- 動勢
- 量塊
- 量感
- 形
- 影
- 陰影
- 光
- 反射光線
- 内部構造
- 材質
- 性質
- 保有内在
- 最初の状態からの月日、動きによる変化、発達、磨耗、
- 心理
- 解剖学
- 応力線
- 葉脈線
- 材質成分と描画媒材の化学現象、同一性の比較
- ungskraftユングスクラフト(絵画作業を行うときの、心理的な補助輪)
- einbuildungskraft 形象構成能力
- buildresthureibung形象記述能力
- vostellung
- formung 軌跡把握,心理的意義ある形状
- helldunkelzeithnung明暗素描
[編集] 画調
絵画の画風は、何派、とか何風とかに分かれている。一つは「技術体系」としての種類、一つは「最終的な絵画表現」に分岐する。
- スキアグラフィア(陰影画)
- ポリクローム(多色画)
- ジャクスタポーズ(並列画)
- コラージュ(紙片体接合画)
- アッサンブラージュ(立体物構成画)
- インスタレーション(設置画)
- カリカチュア(風刺画)
- ナトゥーラモルタ(静物画・静観)
- スティルライフ(静物画・生命感
- デックファーベンモレリ(不透明画)
- ポートリアル(肖像画・写実)
- ポートレイト(肖像画・感慨)
- イコン(聖画)
- グリザイユ(単色画)
- ディプティック(2部作)
- トリプティック(3部作)
- ポリプティクス(連作)
- コンポジション(律・比・幾何学構成色面画)
- トロンプルイユ(錯視画)
- クセニア(静物+動物画)
- クセノス(客への贈り物)
- ボデゴン(厨房画)
- 情景画
- 壁画