李厳

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李厳（りげん、？－234年）は、蜀漢の政治家･武将。字は正方。子は李豊。後に“平”と改名する。

[編集] 略要

南陽郡の人。若い頃は劉表に仕えその才能を認められ、柹帰県令など地方官吏を歴任した。208年に劉表が死去し、荊州が混乱に巻き込まれると、劉璋の下へ逃れ、その有能を買われて成都県令などの官職に就いた。彼は呉の陸遜と並ぶと評される人物という。劉備が蜀に侵攻すると、成都付近の要衝･緜竹関を守るも、すぐに投降し蜀地方支配に貢献した（『演義』では劉備と対峙するが諸葛亮の策により捕まり劉備が説得し家臣となる）。その後、裨将軍･興業将軍に任じられた。そして諸葛亮・法正・許靖らと共に蜀科の制定に尽力し、蜀漢の方向性を決定させた。彼は軍人としても政治家としても高い能力を発揮し、三府よりも尚書に権力が集中していた蜀漢にあって尚書令・犍為郡太守を歴任した。223年、劉備の臨終の際に枕元に呼ばれ、諸葛亮と共に後事を託されるほど信頼された。

劉禅が即位すると、都郷侯･光禄勲･仮節使に昇進した。そして彼は白帝城で対呉方面を担当していた。その後、諸葛亮が何度か北伐に失敗し、北伐に対する批判が高まると、驃騎将軍も兼ねて、一度のみ北伐を全担当した。この時に、「李平」と改名した。それから兵糧輸送を任せられたが、手間取った上にその事実の隠蔽を図った事が諸葛亮の怒りを買って庶民に落とされ、梓潼郡に流罪された。そして234年、諸葛亮の死を聞き「もう二度と復職できない」と嘆き、諸葛亮の後を追うように死去した。かつて諸葛亮に対して蜀の王となり、九錫を賜るよう勧めたことがあったが、断られたという（これは諸葛亮に、将来の簒奪を勧めたものであるとされる）。

近年の蜀漢の研究は、狩野直禎を初めとして、渡邉義浩などによって研究が進み、併せて李厳の再評価の気運が高まっている。特に李厳を弾劾する際の名簿は非常に貴重な史料であり、李厳の失脚理由が兵糧輸送などが原因ではなく、諸葛亮と李厳の、蜀の政治的方向性に関する対立であったことを物語っており、さらなる蜀漢の解明及び李厳の再評価が高まるものと思われる。

[編集] 正史における出来事 （年代順）

• 若くして郡の官吏となる。
• 劉表の下で、幾多かの郡県の長を歴任する。
• 208年 （建安十三年）柹帰県令の時に、曹操が荊州に侵入。このため西方の蜀へ赴く。（劉璋により）成都の県令に任じられる。
• 213年 （建安十八年）、劉備軍を防ぐため、護軍に任命され、緜竹に派遣されるが、軍勢を率いて降伏。（劉備により）稗将軍とされた。
• 劉備による成都平定後、犍為郡太守・裨将軍・興業将軍となる。
• 218年 （建安二十三年）、馬秦、高勝らが、柹で反乱を起し、資中県に到達。郡管轄の兵五千人を率い、これを討伐。馬秦、高勝らを処刑し晒し首にする。
• 222年 （章武二年）、永安宮に呼び寄せられ、尚書令に任命される。
• 223年 （章武三年）、諸葛亮と共に、後主（劉禅）を補佐するよう遺詔を受ける。また、中都護となり、内外の軍事を統括。永安に留まり鎮撫に当たる。
• 223年 （建興元年）、都郷侯に封じられ、仮節使となる。光禄勲の位を付加される。
• 224年 （建興二年）越嶲郡のタイ族系酋長高定の軍が新道県を包囲。救援に向かい勝利する。この功により、輔漢将軍の官位を付加される。
• 226年 （建興四年）、前将軍となる。
• 230年 （建興八年）、驃騎将軍に昇進。
• 同年　秋8月に曹真が三方の街道から漢川に向おうとしたため、（諸葛亮の命により）兵二万人を率い漢中に赴く。漢中での政務を取り仕切る。
• 同年　李平と改名。
• 231年 （建興九年）、全ての軍需輸送を総監督し管理する。
• 同年　長雨による兵糧輸送の滞りを理由に、遠征中の諸葛亮を呼び戻す。この際の出来事が罪に問われ免官となる。庶民に降格され、梓潼郡に流される。
• 234年 （建興十二年）、病没。嗣子の李豊が家督を継ぐ。

[編集] 参考文献

「正史 三国志 5 蜀書」 (陳寿 著、裴松之 注、井波律子 訳) ちくま学芸文庫 ISBN 4-480-08045-7