名阪国道
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名阪国道(めいはんこくどう)は、一般国道25号の三重県亀山市~奈良県天理市間の自動車専用区間である。西名阪自動車道と東名阪自動車道とを結び、名神高速道路と並んで関西と中京とを結ぶ幹線道路となっている。全長約73km。
全区間4車線だが、福住ICと天理東ICの間にΩカーブと呼ばれる急カーブ(最小曲率半径150m)があり、最高速度は全区間60km/hに制限されている。また、通常の高速道路よりもインターチェンジの数が多い。
通行料金は無料。自動車専用道路なので、125cc以下の二輪車は通行禁止となっている。
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[編集] 歴史
計画当初から、名阪国道は無料の一般道路として整備される予定であった。しかし、1963年4月の工事着手後の1963年9月に出された第2次道路整備5か年計画の基本構想により、名阪国道が主要幹線の1つとして選定された。そのため、自動車専用道路としての機能を果たすために高速自動車国道の規格をとるよう構造の修正が行われた。それまでの経緯から、高速道路に準じる「準高速道路」という扱いとし、建築限界の取り方などについて特例が適用された。有料道路にすることも検討されたが、「準高速道路」扱いであることや、「一般道路として整備する」と住民に説明していたことなどから、開業時から無料で供用することとなった。自動車専用道路であるので案内標識は高速道路と同じで緑色のものとなっている。
1963年4月の工事着手から1000日間で完成させるという目標が立てられていたことから「千日道路」と呼ばれた。実際、ルートの決定から、用地買収、トンネルや橋の建設なども含めて1000日以内に完成し、1966年12月16日に暫定2車線で開通した。
1969年に西名阪道路(現在の西名阪自動車道)が、1970年に東名阪道路(現在の東名阪自動車道)が開通し、現在の形となった。
[編集] 有料道路とすることの問題点
1964年には工事費の負担の問題から、有料道路に変更して建設することも検討されたが、有料とすると次のような問題点があったため、当初の予定通り、無料の一般道路として建設された。
- 準高速道路扱いで特例を適用した構造規格であったが、有料とすると、登坂車線、インターチェンジの加速車線長など、構造規格の再検討が必要となること。
- 料金徴収や出入制限のため、三重県内のインターチェンジの数を17ヶ所から3ヶ所程度に制限する必要があり、沿線地区の直接利用も不可能になる。さらに料金所を設置するために1ヶ所当たりの建設費用(A級インターチェンジで5千万円)が10倍~20倍(同時期に開通した名神高速道路の例で5億円~11億円)かかること。
- トンネル区間を除いた大部分の区間で側道を計画しているが、当初はこれを施工せずに、第2期施工の際に側道を考慮する予定であった。しかし、有料となると側道を同時施工する必要があり、そうなると、第1期施工の切土を第2期施工の盛土として使用することができなくなり、工費及び工期に大きな影響を与えること。
- 一般道路として整備すると住民に説明して地元協議を行っていたが、有料となると用地買収が困難になるだけでなく、公共道路として低く設定された用地単価も引き上げる必要があること。実際、有料化問題が公になった以降、用地交渉は停止した。
- 建設省の施工から日本道路公団の施工に変わると、事務引継や工事事務所職員の扱いなどに問題点が生じること。
- 以上の問題点を解決するには工期を延長する必要があり、1000日間で完成させるという目標が達成できなくなること。
- 当初の計画では、三重県内42kmの暫定2車線供用までの事業費が110億円であったが、有料道路にすると暫定2車線でも160億円程度になると考えられ、これは全巾完成の事業費175億円に匹敵して、事業費を大幅に増額する必要があること。
- 当時、国道25号線(現道)の道路改良率はわずか10%であり、名阪国道が有料となれば、当然1級国道として存続する現道を改良しなければならず、相当程度の事業費が必要となること。
[編集] インターチェンジなど
- 1 亀山IC(東名阪自動車道・国道1号・国道25号)
- (34) 伊勢関IC(伊勢自動車道)
- 2 関IC(三重県道10号津関線)
- 3 久我IC
- 4 向井IC
- 5 板屋IC(国道25号)
- 6 南在家IC(三重県道668号関大山田線)
- 7 伊賀IC(国道25号・三重県道50号伊賀信楽線)
- SA 伊賀SA(下り線は「道の駅いが」)
- 8 上柘植IC(三重県道4号草津伊賀線)
- 9 下柘植IC
- 10 御代IC(三重県道2号伊賀青山線)
- 11 壬生野IC(三重県道49号甲南阿山伊賀線)
- 12 伊賀一之宮IC
- 13 中瀬IC(国道163号)
- 14 友生IC(三重県道56号上野大山田線)
- 15 上野東IC(国道422号)
- 16 上野IC(国道368号)
- 17 大内IC/BS
- BS 七本木BS
- 18 白樫IC/BS
- 19 治田IC/BS(三重県道687号治田山出線)
- SA 五月橋SA(亀山方面のみ)
- 20 五月橋IC(国道25号)
- BS 五月橋BS
- 21 山添IC/BS(奈良県道80号奈良名張線)
- 22 神野口IC/BS(国道25号)
- BS 切幡BS
- 23 小倉IC(国道25号・奈良県道127号北野吐山線)
- BS 小倉BS
- 24 針IC/針ICBS/道の駅針T・R・S(国道369号)
- BS 国道針BS
- 25 一本松IC/国道一本松BS(国道25号)
- 26 福住IC(国道25号)
- BS 国道福住BS
- SA 高峰SA
- 27 五ヶ谷IC/BS
- BS 国道岩屋BS
- 28 天理東IC
- 29 天理IC(西名阪自動車道・国道169号)
[編集] 通過市町村
[編集] 走行時の注意
この道路は、過渡期の自動車専用道路であるため、構造上の規格を満たしていない部分が幾つかある。インターチェンジの加減速レーンはかなり短く、自動車専用道路の規格を満たしていない箇所が多い。SA/PAも存在するもののほとんどが一旦国道から降り、再流入するという形式をとっている。
そのSA/PAも含めて流入の際加減速余裕が全くないという、2006年現在の高速道路どころかいわゆる国道バイパスでもあり得ないほどの、ドライバーに緊迫した判断を迫る入口が、大阪・名古屋方面共に複数存在する。ことに 高峰SA(名古屋方面)は加減速車線が全く無いうえに坂道かつカーブの途中にあるため、特に合流時には相当の注意を必要とするなど、本線への流入、流出時に危険が伴うことがある。
最高速度が60km/hに制限されているが、両端に接続する高速道路が80km/h制限なので、走行車両全般に制限速度超過で運転しているのが実情である。しかし、制限速度を忠実に守って走行している車もあり(いわゆる覆面パトカーも多い)、勾配が急な区間が多いため、大型車やトラックが低速で走行していることもあるので、追突事故が多発している。
また、大阪-名古屋間を走行する場合、名神高速道路を利用するより、西名阪自動車道や東名阪自動車道の料金だけで済み、安価なために、トラック、自家用車ともに交通量が夜中でも大変多い。(名神高速経由だと4,450円かかるが、名阪国道経由の場合は2,350円となる)。しかも天理東IC~福住IC間についてはこちらも急坂・急カーブ区間であるため、事故防止のため速度規制に忠実に走行せざるをえない状況である(カーブ外側のガードコンクリートブロックには、速度超過が原因と思われる接触し削り取られた跡が複数存在する)。このため夜中でも混雑していることが多い。
オービスが多く設置されており、速度違反車両が設置地点直前で急減速することがあることにも注意しておきたい。
インターチェンジにゲートが無いため、まれに、原動機付自転車や自転車、歩行者が誤って進入する場合がある。 これは、「この道路は高速道路ではありません。」とか、「この道路は一般道路です。」等という本来自動車の安全運転を喚起する内容ながら自動車以外にとっては紛らわしく非常に曖昧な表現の表示があり、利用者にあたかも一般道路であるかのような錯誤を与えていることが一因である。道路構造令で規定される「第一種」及び「第二種」規格の道路は高速道路であるという認識が必要である。
その一方で、小型特殊自動車は規定により最高速度15km/h以下(農耕作業用は35km/h未満)だが、通行可能である。
また天理駅~上野産業会館で名阪国道を走行する奈良交通の路線バスが存在する。このバスは名阪国道でも比較的低速で運転する。(過去に三重交通のバスも運転されていたが、2005年に旧道にシフトしている)