司法解剖
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司法解剖(しほうかいぼう)とは、日本では刑事訴訟法168条1項「鑑定人による死体の解剖」、及び229条「検視」の規定に基づいて、刑事事件の処理のために行う解剖。犯罪死体もしくはその疑いのある死体の死因などを究明するため、検察などの司法当局によって捜査活動の一環として行われることから、こう呼ばれる。
司法解剖を行う者の資格について詳細な規定はなく、法的には、医師の資格を保有し、かつ捜査当局の嘱託を受けた者なら誰でも行えると解釈できるので、かつては警察協力医などの臨床医によって行われるケースも存在した。 しかし、法医学の分野における科学技術が格段に進歩した結果、解剖結果が刑事事件の真相解明や犯人特定などに重大な影響を与えることから、現在は事件発生現場や死体発見現場に最寄の大学医学部、防衛医科大学校に所属する専門の法医学者が、捜査を担当する検察官や警察署長などの嘱託を受けて執行するのが原則である。
多くのケースでは被解剖者の遺族への心情的配慮から、その了承を得た上で解剖が行われているが、法律上では裁判所から「鑑定処分許可状」の発行を受ければ、遺族の同意が得られなくても職権で強制的に行うことが出来る。
犯罪被害死体の全てが司法解剖されるわけではなく、交通事故など受傷状況が明確で外表検査で死因も明らかにしうる場合は解剖せず、検視のみで終わる場合が多い。しかし一旦解剖必要との結論に至れば死因や状況の如何に関わらず解剖される運用となっており、遺族も事実上拒否できない。事件・事故の場合などはやりきれないという遺族感情が出たとしても無理からぬことである。大規模事件・事故の際、この運用を指摘する新聞記事が掲載されることがある。