労働災害
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労働災害(ろうどうさいがい、労災)とは、業務上の事由又は通勤途上で、負傷、疾病、障害、死亡する災害のことを言う。
労働災害をカバーする労働者災害補償保険は、労働者の資格如何に関わらず、全ての労働者(アルバイト、パートを含む)に適用される。ただし、例外として公務員、船員には適用されない。
労災の形態によっては、管理者に業務上過失致傷罪および致死罪が発生する。
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[編集] 業務災害の定義
業務災害に対して補償されるのは、使用者の支配下において労働の提供を行う労働者の災害についてである。過労死や自殺もその要因が、使用者の支配下によるものと認められた場合、業務災害として認定されるようになった。
なお、強制されない(使用者の支配下にない)社外での懇親会(忘年会、花見など)等は労働災害に含まれない。(実際は、新人や派遣会社社員は強制に近い。)また、第三者の犯罪行為は除かれる。戦争、内乱も同様。
[編集] 問題点
- 例えば中東の某国へ出張してテロリストに射殺された場合などは、労働災害といえるか意見の分かれるところと思われる。(テロリストの行為自体は「第三者の犯罪行為」で労働災害の対象外だが、某国がテロなどが多い国であれば当然その危険は予見されるため「使用者が危険性を承知した上で行為を命令した」=労働行為に伴う危険により被災した、とも見れる)
[編集] 通勤災害の定義
昭和48年の労働者災害補償法の改正により、業務災害に加えて労働者災害補償保険の適用が認められたものである。通勤とは、労働者が就業に関し住居と職場との間を合理的な経路及び方法により、往復することをいい、業務の性質を有する物を除く。
なお、通勤経路の途中で逸脱もしくは中断していた場合や、通勤経路・通勤方法が合理的とみなされない場合は、日常生活上必要な行為で厚生労働省令に定められている場合を除いて、通勤災害として認められない。
[編集] 問題点
- 身近なところでは、マイカー通勤で被害者になった場合は労災だが、加害者になった場合は個人の責任になっている。
- 通勤災害については、使用者の支配下にないことがほとんどであることから、労働災害の認定については業務災害以上に難しいことが多い。
[編集] その他
- 船員の労働災害については、船員保険(運営主体:政府)において処理する。
- 公務員の労働災害(公務災害)については、国家公務員は国家公務員災害補償法により、地方公務員は地方公務員災害補償法第3条の規定により設けられた各都道府県の地方公務員災害補償基金により各種給付が行われる。
- 命令により労働に従事したことにより発生した労災に関して、管理者に業務上過失致傷罪あるいは致死罪を適用すべきか議論がある。この適用がこれまでほとんどなされていないことが、労災が一向に減少しない重要な根拠となっている。
- 労災を判定するのは、労働基準監督署(都道府県労働局)の労災課に所属する労働事務官が担うのであるが、労災判定基準に当てはめられるか否か判断しにくいグレーゾーンにかかるケースでは、細かい判断を事務官の裁量に委ねることになるので、個々の監督署によって法律を狭く判断したり広く判断したりして対応がまちまちになる場合がある。極端に言えば、申請者にとっては当たり外れの運次第になってしまう。また、不服を申し立てても、行政内部の問題についての不服が認められるケースは少なく、結局、救済を受けるために訴訟の提起を余儀なくされることも少なくない(行政不服審査法、行政事件訴訟法も参照)。
- 労災が起きた際、それによるイメージ低下や入札の指名停止などの実害を嫌悪し、使用者が労災が起きたこと自体を隠匿する、いわゆる「労災隠し」が行われる場合がある。給付が行われない分は使用者が補償したり、より悪質な場合はそのまま自費で治療させたりする。これには被災した労働者の「これ以上迷惑を掛けたくない」という意識もあろうと推察される。しかしこれは使用者の優越的な立場を悪用した強制のみならず、同業や他業への展開を妨げ、対策の確立や再発防止・予防を妨げる行為であり、発覚時には使用者がより厳しく罰されるのだが、なかなか絶えないのが現実である。