仮装巡洋艦
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仮装巡洋艦（かそうじゅんようかん）とは、ドイツ語の Hilfskreuzer の訳語である。第一次世界大戦時、また第二次世界大戦において中立国の商船に偽装して無警戒の敵国の商船を襲撃したドイツの軍艦を指す。 第二次世界大戦ではその目的から通商破壊船 (Handelstörkreuzer) とも名付けた。略号は HSK である。
イギリス海軍はこの種のドイツ艦船を襲撃艦 (Merchant raider) と呼び、海上兵力の多くを投入して追跡した。例えば、仮装巡洋艦アトランティス号を Raider-C 、トーア号を Raider-E とすべてのドイツ仮装巡洋艦をマークした。尚、武装した商船一般については武装商船を参照。
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[編集] 概要
仮装巡洋艦は油槽船や貨物船など既存の商船の改造したため、装甲等の防御力は申し訳程度しかなく、爆撃や砲撃で簡単に沈められた。正規の巡洋艦を建造するよりも、時間的に、また費用的に節約することが目的であった。
軍艦然とした船舶が商船に近づけば当然に警戒されて逃げられる。そこで甲板員は軍服を着用せずに、中立国の国旗を靡かせ、中立国の商船に偽装し、敵国の商船を無警戒にした。
拿捕した艦船に対して弾薬を節約するために爆薬を仕掛けて爆沈する手段もよくとられた。また、追跡のために商船より優速であったが、国際法に則って接近を行ってから自国の国旗を掲げて攻撃を開始することで標的の逃走を極力、防止することができた。ただし、弾薬節約のために砲の使用は威嚇射撃のみに留め、離脱や通報の危険があった場合のみ砲撃するという手順が通常である。積み荷や船自体の価値・船の速力などによって拿捕した船舶を海没させるか、積荷を有効活用するために味方の港湾に回航するかを決めた。拿捕部隊（de）は、処分がどちらになってもいいように天測用具など航海に必要な器具・材料も爆薬もともに拿捕する船に持ち込んだ。
[編集] 第一次世界大戦
蒸気機関が主力である当時の艦船は石炭を補給することなしには長期間航海することはできなかった。日の沈むところのない大英帝国イギリスを敵とするドイツには石炭を供給する国は多くなかった。石炭の補給なしに長期間に渉り通商破壊戦を継続できる帆船を利用したフェリクス・フォン・ルックナー座乗のゼーアドラー号の活躍は有名である。
[編集] 第二次世界大戦
第二次世界大戦でもドイツ海軍は仮装巡洋艦を多数準備した。第二次世界大戦開戦後間もない1940年3月から、大西洋、インド洋、太平洋に順次、出撃している。アトランティス号の活躍は有名である。1942年11月に横浜港に寄港したトーア号もその一隻である。同艦は同盟国からの訪問として歓迎されたが、偶々隣接して停泊していたドイツの油槽船ウッカーマルクの爆発事故に巻き込まれて沈没した（横浜港ドイツ軍艦爆発事件）。
- 主なドイツ仮装巡洋艦
なお、第二次世界大戦初期は活発に行われたドイツ海軍の通商破壊戦であったが、1943年頃から連合軍の哨戒網の強化に伴い、多くが撃沈され、活動は終焉した。
イギリス海軍が補助巡洋艦 (Auxiliary cruiser) と呼び、日本海軍が特設巡洋艦と呼んだ武装商船は友軍の航空優勢の下で活動し、燃料補給にもそれほどの問題のなかったので、1万トン前後かそれ以上の客船を使い、偽装は全く行わないか、またはごく簡単に行う場合が多かった。一方ドイツ海軍のようにほぼ敵の制海権・制空権下に活動する場合には、入念な偽装が施され、目立たない数千トンの高速貨物船を利用した。
[編集] 文献
- Heinz schäffer （著）、横川文雄（訳）、『U-ボート977；訳者の体験記 南海のドイツ海軍』、朝日ソノラマ、1984年、ISBN 4-257-17038-7
- Wolfgang Frank / Bernhard Rogge （著）、杉野茂（訳）、『海の狩人 アトランティス』、朝日ソノラマ、1988年
- 石川 美邦（著）、『横浜港ドイツ軍艦燃ゆ；惨劇から友情へ；50年目の真実』、木馬書館、1995年、ISBN 4-943931-40-5
- Erwin Wickert （著）、『戦時下ドイツ大使館：ある駐日外交官の証言』、中央公論社、1998年
- 荒井 訓・上田 浩二 （著）、『戦時下日本のドイツ人たち』、集英社、2003年
