特設艦船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
特設艦船(とくせつかんせん)とは、民間船を徴用し、海軍所属の艦艇としたものである。近代以降の海軍において使われる用語である。
目次 |
[編集] 概要
特に近代以降において艦船を建造するにあたっては、相当の時間と資金を要するものである。しかし、戦時においては一刻でも早く、多くの戦闘艦が必要となるため、既存の民間船(商船・貨物船・漁船)を徴用し、それに改造や武装を施すことによって、戦闘艦艇に仕立て上げた。これを特設艦船と呼ぶ。
基になる民間船が多種多様であることから、様々な大きさ・性能の特設艦艇があるが、一般に新規に戦闘艦を建造するより大幅にコストが低く、工事期間も短くて済むという利点がある。ただし、武装は戦闘艦よりも少なく、速度も遅く装甲もないため、防御力も弱いという欠点がある。通常は、補助艦艇として用いる。
[編集] 日本海軍の特設艦船
特設艦艇の建造に最も熱心であったのは、昭和前期の日本海軍である。軍縮条約および予算の制限により、補助艦艇の不足を感じていた日本海軍は、昭和12年(1937年)の「優秀船舶建造助成施設」に基づき、民間の優秀船舶が建造される際に補助金を出していた。これは、戦時には徴用され、特設艦艇に改装されることが条件であった。そのため、ハッチの大きさや位置の海軍規格化、大砲設置のための構造強化、飛行甲板設置のための甲板構造設計などが行われていた。
[編集] 種類
特設艦船は、船の特徴、大きさなどにより32種類に分けられ艤装された。戦艦、駆逐艦と潜水艦を除き、ほぼすべての艦種に特設艦船がある。
- 特設巡洋艦
- 大型貨客船、1万トン内外でなるべく高速
- 特設航空母艦
- 15ノット以上の高速、大型貨客船で1万5千トン以上
- 特設水上機母艦
- 高速大型貨物船で、6~8千トン
- 特設航空機輸送艦(甲)
- 特設航空母艦に準ずる
- 特設運送艦(乙)
- 特設水上機母艦に準ずる
- 特設敷設艦
- 前記船舶を除く次等の貨物船
- 特設水雷母艦
- 同 上
- 特設潜水母艦
- 同 上
- 特設砲艦(大)
- 2~3千トンの貨客船または貨物船
- 特設砲艦(小)
- 2千トン未満の貨客船または貨物船
- 特設砲艦兼敷設艦
- 特設砲艦(大)と同等
- 特設急設網艦
- 3千トン内外の高速貨物船
- 特設捕獲網艇
- 特設砲艦(小)と同等
- 特設防潜網艇
- 3千トン内外と1千トン内外の貨客船または貨物船
- 特設掃海艇
- 3百トン内外のトローラー
- 特設掃海母艦
- 2~3千トンの貨客船
- 特設駆潜艇
- 1百トン内外の発動機漁船
- 特設監視艇(甲)(乙)
- 同 上
- 特設工作艦
- 6千トン内外の貨客船または貨物船
- 特設港務艦
- 6~8千トンの貨客船
- 特設測量艦
- 同 上
- 特設救難船
- 3千トン内外の貨物船
- 特設病院船
- 1千6百~1万2千トンの貨客船
- 特設電纜敷設船
- 2~3千トンの貨客船
- 特設給兵船
- 5~8千トンの貨物船
- 特設給水船
- 同 上
- 特設給油船
- 油槽船
- 特設給炭船、特設給炭油船
- 5千トン以上の貨物船
- 特設給糧船(大)
- 5千トン内外の貨物船
- 特設給糧船(小)
- 7百~2千トンの例造船
- 特設通信船
- 5千トン以上の高速貨物船
- 特設雑用船
- 2千トン以上の貨物船
[編集] 特設監視艇
太平洋戦争中、洋上哨戒をする監視船が大量に必要になった海軍は、外洋航海が可能な漁船を「特設監視艇」に指定して徴用。海軍第22戦隊や各地の根拠地隊に所属させた海軍艦艇の一種として軍艦旗を掲げさせ、強力な無線機を装備させて北緯30度・東経140度線付近の海域や東経150~160度線を南北に沿う海域を中心に哨戒任務にあたらせた。
武装は、大戦初期は小銃のみ、中期は7.7mm機銃、後期は25mm機銃や13mm単装機銃と若干の爆雷などを装備したが、この程度の武装では、敵に遭遇してもまともに戦うことができるはずがなく、多くの特設監視艇が敵発見の無電を発しながら撃沈されていった。
これら特設監視艇が命を捨てて発信した敵発見の無電だが、日本海軍がキャッチできたとしても、日米の戦力差が広がり続けている状況では効果的な迎撃が難しいため、せっかく特設監視艇の無電を受けても迎撃に行けなかったこともあった。
特設監視艇にされた漁船は少なくとも411隻あり、そのうちの209隻が乗っていた軍人や軍属の漁師たちの命とともに失われた。
[編集] 徴用された船舶数と罹災数
個々の徴用船に関する資料は多数あるが、まとまったものは少ない。したがって正確な数が把握されていないのが実情であるが、海軍が発表した資料によれば、
- 海軍が徴用した船舶は、1,373隻、約242万総トン
- 失われた船舶は、836隻、約186万総トン
- 残存した船舶は僅か374隻、約14万総トン
- 残りの163隻、約42万総トンは戦時中に解除されたという
この他に、1949年の経済安定本部調査によれば、合計15,518隻の民間船が罹災したという記録が残されている。その内訳は、
私有一般汽船 | 3,207隻 |
官有一般汽船 | 368隻 |
機帆船 | 2,070隻 |
漁船 | 1,595隻 |
艀船(はしけ) | 6,731隻 |
各種工事用船 | 307隻 |
その他 | 1,240隻 |
随って、海軍発表の数よりも、実際にはもっと多数の船舶が徴用され罹災したものと思われる。
[編集] 関連リンク
[編集] 関連項目
この「特設艦船」は、軍艦に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。 |