人工透析
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透析(とうせき)、人工透析(じんこうとうせき)とは、医療行為のひとつで腎臓の機能を人工的に代替することである。
腎不全に陥った患者が尿毒症になるのを防止するには、外的な手段で血液の「老廃物除去」「電解質維持」「水分量維持」を行わなければならない。 この治療を透析と呼び、人工腎、血液浄化と呼ばれることもある(この場合の血液浄化は疑似科学で用いられる用語とは違う)。
しかし、日本国内で人工透析と言われている療法(治療ではなくあくまで対症療法)は、該当する用語としては血液透析、または人工腎臓が正しいのだが(人工透析に当たると思われるartificial dialysis では英語圏内版Wikipediaでは検索不可能)、国内的には人工透析が一般的な呼称となっている。現日本透析医学会の前身が人工透析研究会であったことからも、臨床場面での混乱もあった事と考えられ、それが一般的呼称になったと思われる。
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[編集] 分類
- 血液透析 (Hemodialysis:HD)
- 患者に2本のカニューレを挿入し、血液を体外へ導出して限外濾過と溶質除去を行う。腎機能が廃絶している場合は週に3回程度必要。大きな血流量を得るため、動脈と静脈を体表近くで交通させた内シャントを作成し、ここにカニューレを穿刺する。一般的には毎回最低4時間透析をする必要がある。また、生体腎では週168時間かけておこなわれる体内浄化を、血液浄化療法では極短時間に行うため、急激な電解質変化と蓄積した尿毒症性物質の急激な減少により不均衡症候群を生ずることもある。なお、血液透析を受けながらの就業は地域によっては可能である。特に都市部では午後6時ごろから透析を開始する施設が数多く存在するため、業務終了後に通院することができる。また、近年では透析患者専用の旅行ツアーを用意している旅行代理店も存在し、日本各地並びに海外への旅行が可能となっている。
- 腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)
- 自身の腹膜を透析膜として利用する手法。腹腔にカニューレを留置し、一日に数回腹腔内に透析液を注入・交換することで時間をかけて老廃物を濾過する。頻繁な通院から解放されるため、血液透析と比較すると拘束される時間が少ないという利点がある。腹腔に異物を留置することから腹膜炎の原因になることがあり、また長期にわたっては腹膜の肥厚や被嚢性腹膜硬化症を起こすことがあるという欠点がある。このため、若年者に対して長期に腹膜透析を用いることは奨励されていない。
- 血液濾過 (Hemofiltration:HF)
- 血液透析濾過 (Hemodialysis Filtration:HDF)
[編集] 諸注意
透析時には、燐酸排泄が低下していることと、ビタミンD産生障害との、2つの理由から低カルシウム血症になりやすい。燐酸排泄が低下すると、血清燐酸濃度が上昇し、燐酸にカルシウムが消費されてしまう。またビタミンDは血清カルシウム濃度を上昇させる働きがあるので、これが低下する。