京阪80形電車

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80形電車（80がたでんしゃ）は、京阪電気鉄道の京津線で使用されていた電車。

現役当時（東山三条付近）

錦織車庫の保存車両。

[編集] 概要

1961年（昭和36年）に、不足していた京津線のローカル用として登場。主に三条～浜大津間の普通列車として使用されていたが、準急列車や急行列車（現在は両種別共に廃止）として使用されることもあった。1970年までに近畿車輛で16両が製造された。

エクステリアデザインは近畿車輛の若手デザイナーが担当したとされ、前面に曲面ガラスを使用し、独特の丸味のある車体をしていた。ユーロピアンスタイルのモダンチンチン電車の元祖と紹介されていた。

釣掛駆動を採用し、「旧性能車」に分類されるが、空気バネを備える近畿車輛KD-204台車、定格出力45kWの直流複巻電動機4基による3.2km/h/sという高加速性能や、京阪線の2000系「スーパーカー」の系譜に連なる回生ブレーキの常用など、コンパクトな車体の路面電車ながら当時の高速電車で一般的な「新性能車」を凌駕する内容を備え、蹴上付近の碓氷峠や東急玉川線の「道玄坂越え」（いずれも当時）並みの66.7‰や逢坂山61‰の急勾配を走行可能、かつ京津線の準急・急行運用にも充当可能な高速性能も兼ね備える高性能車両であった。単純に「釣掛駆動=旧性能車」とは言えない例である。

併用軌道区間の停留所の乗り降りのため、ドアと連動して開くホールディングステップを車体に組み込んでいる。またその関係で、床は高さ910mmの低床車である。塗装は窓周りと車体の裾を緑色、それ以外を淡緑色に塗り分けた本形式独特のものであった。

81~93はスライダー式ポールを装備した両運転台車として登場し、単行で運用された。1970年にパンタグラフに集電装置が変更される。車体高が低いため、パンタグラフは屋根上にやぐらを組みその上に設置された。これに伴い、ポールを操作するため開閉可能だった正面中央の窓がHゴムで固定された。同時に電動式ワイパーを窓下に設置したため、窓の下辺が左右の窓より高くなってしまった。

また、パンタグラフ化にあわせて片運転台の94~96が製造される。こちらは当初からパンタグラフを装備していた。

次いで1971年にかけて両運転台車は片方の運転台を撤去の上、撤去跡に貫通路を設置して2両編成化された。その改造が完了するまでの間、パンタグラフ装備の両運転台車が存在した。

1989年より冷房化工事が施工された。当初冷房化の予定はなかったが、京都市営地下鉄東西線の開業がずれ込んだため延命措置が図られることになったものである。このときは冷房装置を設置するために屋根のかさ上げが行われ、パンタグラフのやぐらは不要になった。また正面右側窓の上に京阪のエンブレム（6000系以降採用されたもの）を取り付けている。

京都市営地下鉄東西線・三条京阪-御陵間の開通前日、1997年（平成9年）10月11日の京津線区間廃止時に同時に廃車。番号が同じ8から始まる800系に取って代わられた。2006年現在、唯一解体を免れた82号車（錦織車庫に保管）の保存運動がなされている。

なお、廃車に際しては福井鉄道が併用軌道区間への導入を目指して譲受を検討していたが、同型の特殊な電装機器の保守が煩雑なこと、それに廃車時期と補助金申請のタイミングが合わなかったことなどの諸事情から断念され、実現に至ることはなかった。