不退寺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
不退寺 (ふたいじ)は、奈良市法蓮町にある真言律宗の寺院。本尊は聖観世音菩薩。
仁明天皇の勅願を受け、在原業平が開基したとの由緒から「業平寺」とも呼ばれる。山号は金龍山。
目次 |
[編集] 概要
奈良市街北部に位置し、南方を関西本線が斜めによぎる。境内には四季折々、レンギョウ、椿、カキツバタ、菊などが咲き乱れ、晩秋には紅葉、ナンテンなどが見られる。
拝観は午前9時~午後5時、拝観料は大人・中・高生500円、小学生300円。
[編集] 歴史
寺伝によれば、大同4年(809年)、平城天皇が譲位してのち隠棲し「萱の御所」と称したのが始まりとされ、その後平城天皇の皇子である阿保親王、更に阿保親王の5男である在原業平が暮らしたという。伊勢神宮参詣時に受けた神勅を機に、業平が自ら聖観音像を刻み、「不退転法輪寺」と号して阿保親王の菩提を弔ったのが、寺院としての始まりと伝えられている。
寺の近辺からは平安時代前期の古瓦が出土しており、創建がその頃までさかのぼることは認められるが、中世以前の沿革はあまり明らかでない。
[編集] 境内
- 南門(重要文化財)-鎌倉時代末期、正和6年(1317年)の建立で、切妻造・本瓦葺。冠木上には笈形調の装飾が見られる。1934年(昭和9年)の修理時、多くの墨書銘が確認された。
- 本堂(重要文化財)-室町時代前期の建立。寄棟造・本瓦葺。鎌倉時代に入ってから一般化した、正面中央に虹梁を配する様式の初見例とされる。
- 多宝塔(重要文化財)-鎌倉時代のもの。「大和名所図絵」によれば、寛政年間には檜皮葺きの上層部があったが、明治に入ってからの廃仏毀釈の中で取り払われ、現在は第一層のみが残っている。
[編集] 文化財
建造物については先述。
- 木造聖観世音菩薩立像 重要文化財。寺伝に在原業平の作というが、様式的には平安時代中期、11世紀頃の作と思われる。一木彫で、胡粉地に極彩装飾を施す。本堂安置。
- 木造五大明王像 重要文化財。平安時代中期作。本堂安置。
- 舎利厨子 重要文化財。奈良国立博物館に寄託。厨子内に安置されていた五輪塔形舎利容器は1952年に盗難に遭って行方不明である。
- 阿保親王坐像 奈良県指定文化財。鎌倉時代作。
- 石棺 5世紀のもの。ウワナベ古墳付近にて発掘されたもの。庫裏北側に置かれている。