三菱・GTO
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GTO(ジーティーオー)は、三菱自動車工業が生産していた自動車。スタリオンの後継車として1990年に登場したフラッグシップスポーツクーペである。
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[編集] 概要
1989年に第28回東京モーターショーで三菱HSXという名でディアマンテとともに参考出品された。 全グレード駆動方式は4WDのみ。
基本コンポーネンツは初代ディアマンテだが、内容はフラッグシップスポーツに恥じないもので、下記に示す装備が日本車としては初採用されたものである。
尚、下記装備も採用されていた。
- 4WS(ツインターボ)
- スイッチで排気音を変えられる「アクティブエグゾーストシステム」(ツインターボ)
- 可変リアスポイラー及びフロントスカート「アクティブエアロシステム」(ツインターボ)
2002年の生産終了まで、大きなもので4度ものマイナーチェンジが施された。詳細内容は下記の通り。
2型 1992/01~
- グラストップ(メーカーオプション)追加
- ホイールの17インチ化。それに伴いスペアタイヤも17インチ/アルミホイール化
- 国内初の50扁平タイヤ(225/50/R17)採用
- 電動格納式ドアミラー採用
- 運転席シートに電動スライド機能追加
- エアコン冷媒を代替フロン(R134a)に変更
3型 1992/10~
- ブレーキディスクを17インチ化
- リアブレーキに対向2ポッドキャリパ採用
- キーレスエントリー採用(NA車はメーカーオプション)
4型 1993/08
- ヘッドライトを4灯固定式プロジェクタータイプへ変更
- トランスミッションの6速化(ツインターボ)
- シリンダーヘッドガスケットのメタル化によりターボチャージャーの加給圧変更
これによりエンジン出力向上(280ps/42.5kg-mから280ps/43.5kg-mへ)
- 助手席エアバッグ追加
以下時期未確認
- ブレーキ冷却導風板の装着
- BBSのホイールを標準で装備した軽量モデル「MR」の追加
- APロッキード社製6ポッドブレーキのオプション採用
- ターボモデルの18インチクロムメッキホイールの採用(この変更に伴い、MRの標準装備も18インチクロムメッキホイールとなる)
小さな変更(シートの柄、オーディオ、ガラス、内装色等)を入れると毎年の様に改良されており、特にターボモデルの方がマイナーチェンジでの進化の度合いが大きかった。尚、最初期型と最終型では17インチアルミホイールのスペアタイヤは採用されていない。
[編集] 海外でのGTO
海外へは「3000GT」という名称で輸出され、こちらにはSL,RTという自然吸気エンジンの前輪駆動モデルもあり、トップグレードであるVR-4は320psの出力を発生させていた。北米では電動格納式ハードトップのオープンモデルである「3000GTスパイダー・リトラクタブルハードトップ」と呼ばれるモデルも設定され1995年より販売された。これは1959年フォードスカイライナーがカタログから消えて以来の電動ハードトップの復活であり、現在に続くリトラクタブルハードトップ流行の先鞭をつけたものだ。この車はクライスラーの傘下のダッジブランドでは「ダッジ・ステルス」として販売されていた。今でも、GTOをGTOとしてではなく「ダッジ・ステルス」として扱うケースが多い。また、ステルスとして扱われるのは初期のHXタイプのものがほとんどである。
[編集] 生産拠点
- 三菱自動車工業名古屋製作所大江工場
[編集] 評価
スタイリングは三菱らしい灰汁の強いもので、多くの人の支持は受けられなかった。特に国産車では異端とも言うべきコーラボトルスタイルについて言及されることが多い。全幅1700mmを越えるため、一見スーパーカーのようでもあり、熱狂的なファンも殊の外多い。どちらかというとリトラクタブルタイプのHXが後期のSRなどの埋め込み式に比べると評価が高いようである。また、あらかじめ改造用に用意されたメーターマウントなども、カスタマイズドライバーにはウケが良かったようである。ただし、横面スカートに見られる黒い穴は実は黒いFRPで埋まっており、アンチGTOの格好の攻撃の的となっている(ただしこれは、マイナーチェンジ後はブレーキ冷却のエアロダクトとなっている)。
走行性能を批判されがちであるが、デビューした当初、筑波サーキットやスポーツランドSUGOといったクローズドサーキットに於いてはよく比較対照されるR32スカイラインGT-Rよりも速いラップタイムも記録している。
走行性能を批判される原因の大半が、その車重によるものである。3000cc車で四輪駆動という国産の他のスポーツ車と比べると重量がかさむ選択をしたため、フルタンク時には実に2トンに迫る重量となる。これがブレーキや加速に悪影響を与えるであろうことは容易に想定でき、さらに当時の日本のスポーツ車が軽量へと向かっていたため、実際に乗っての適正な評価がされることがなかった。また、当時のこういったユーザーの意識がマーケティング結果へとつながり、国内スポーツ車としては重要なアフターパーツ市場が育つことがなく、そのため後期はレースシーンからも消えていった。(メーカーもそれを察知し、NAでATという高速道路での快適さをより重視したSRモデルをリリースしている。)
しかしこの車は基本的に海外をメインとして開発された車であり、サーキットランではなくロングランを主眼に置いている。北米、欧州、中東等をメインに輸出されていた事実からもこの車の性格が伺える。車名に謳っている様にグランドツアラーとして、長距離を快適に移動するのに必要にして十分な動力、制動、旋回性能を与えられている。
またアメリカでは、大排気量4WDかつ頑丈なボディを持つという特徴から、ドラッグレース用の車(ドラッグカー)に改造するためのベースカーとしても人気がある。