ヨブ・トリューニヒト
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ヨブ・トリューニヒトは、銀河英雄伝説に登場する架空の人物である。男性。
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[編集] 概要
物語本編開始時点では国防委員長/同盟の最高評議会を構成する評議員の一人。フェザーンのルビンスキーや地球教のド・ヴィリエと同様、卓越した政治的能力を駆使して権力の座に上り詰める事を至上命題とする人生を送った。作中で明確に悪役と設定されている数少ないキャラクターの一人であり多くの読者に嫌われているが、コミック版担当の道原かつみは一番のお気に入りで、コミック版では薔薇を持たせたり、ナルシストめいた発言をさせていた。
[編集] 略歴
宇宙暦755年2月13日生まれ（コミック版のデータより）。時系列上の初登場は、外伝「螺旋迷宮」でアルフレッド・ローザスの葬儀に参加した時。この時は若手で最も有名な代議員/新任の国防委員として登場している。本編開始の宇宙暦796年の時点で国防委員長となっており、同時に憂国騎士団を操る様な裏の権力も有していた。
ヤンがイゼルローンを攻略した後に提案された帝国領への侵攻作戦に反対票を投じ、作戦が失敗した事によって賛成票を投じた議員が全員失脚し暫定政権首班の座に就く。さらに翌年の救国軍事会議のクーデターでは地球教に匿われて地下に潜り、ヤンが救国軍事会議を打倒した直後に登場してヤンの成果に便乗する形で政権を固めた。これによって同盟政府はトリューニヒト閥によって埋められたが、最前線のヤンや実質的な軍のトップであるビュコックには手が出せなかった。
同年8月の銀河帝国正統政府樹立とラインハルトの宣戦布告に対する挙国一致体制の宣言に乗じて、トリューニヒト派のドーソンを統合作戦本部長に据え、さらにイゼルローン要塞の人事に干渉してヤンの勢力を削ごうと画策したが、帝国軍が予想に反して12月にフェザーンを制圧、翌年にはそこから同盟領に侵攻する。
そうなるとトリューニヒトは職務をサボタージュして責任回避を図り、それまでヤン・キャゼルヌなど一部幹部のみしか気づいていなかった保身・権謀術数に長けた悪役ぶりが、この頃から同盟市民にも疑惑として気づかれ始める。最後にはヒルダの提案にのった帝国軍の双璧によるハイネセン制圧作戦で、地球教徒に緊急評議会メンバーを監禁させる逆クーデターまでも成功させ、ヤンに停戦を命じた。もはや見限った同盟を帝国に売り渡す形でバーラトの和約を締結したのである。これによって同盟市民はトリューニヒトに怒りを向け、トリューニヒトはそれを口実に財産を抱えて帝国領に逃げ込み、保護を求めた（双璧・ヒルダともに冷淡さと反感をもって対応し、ラインハルトは生涯トリューニヒトと対面を行わなかった）。
その後同盟はついに滅亡し、ヤンやビュコックなどが世を去る。軍事的に自らを脅かす者も消え、トリューニヒトは自らラインハルトに仕官を請願した。皇帝ラインハルトは新領土総督となったロイエンタールの高等参事官に任ずる不可解な人事を発表した。
この人事は元同盟の人々だけでなくロイエンタールの部下ベルゲングリューンですら即座におぞましさを直感したほどであったが、これは「捨てた祖国の民衆の前に立つ」という屈辱的な任務を提案することで、トリューニヒトが拒否すればそれを口実に公職追放することを意図した人事だったのである。思惑に反してトリューニヒトはこの人事を受諾、同盟に帰還した。ロイエンタールは部下の進言には苦笑するだけであったが、後に対面しその正体と危険性を明確に認識する。
そしてロイエンタールが叛逆した際に拘禁され、さらに第2次ランテマリオ会戦ら帰還したロイエンタールに射殺され、その生涯を終えた。
死後に、帝国に立憲体制をしく事を目的としていた事が判明。（理念は異なるが）同じ構想を持っていたユリアンを戦慄させる。もし成功していれば、トリューニヒトは「全人類（この場合はローエングラム朝・銀河帝国）の首相」になった可能性が存在する。
[編集] 能力
客観的な視点で分析すれば、政治家としての能力は卓越している。本文中の記述から年齢は40代初等～半ばであったと考えられ「少壮の国家元首」等の表現も多用される。憂国騎士団や同盟政府、新旧帝国、フェザーン、そして地球教など、あらゆる組織・体制・国家を利用し、己の立場強化と利益誘導を計り続けられた事や、帝国領侵攻作戦の際は敗戦することを見越して反対票を入れるなど、極めて有能な人物であった事は間違いない。トリューニヒトが生き残って己の立場を強化していく一方、彼以外の人間は死亡・失脚してゆくのである。このような状況に対して、シトレ、ビュコック、グリーンヒル、ヤン、キャゼルヌなど、強い違和感を抱く人々も作中には存在していた。特に、グリーンヒルをはじめとする救国軍事会議のメンバーたちは、非合法な手段とはいえ、クーデターという強烈な方法でトリューニヒトに異を唱えた人々であった。だがトリューニヒトは「クーデターを起こされた」という、本来なら政治家の汚点になるであろう事件でも立場を失わなかった。これらによって、物語の序盤では無能な扇動政治家と見なされていたトリューニヒトは、次第に妖怪じみた存在へと”成長”していく事になる。
[編集] 人柄
銀河英雄伝説のメイン・テーマのひとつとして「腐敗した民主主義と清廉な専制君主制の対決」があり、腐敗した民主主義の象徴とも言えるトリューニヒトは、ある意味において銀河英雄伝説の最重要キャラクターの一人と考えられる。
また、保身の天才である事やポピュリズム的な政治手法から、それが得意とされる現実の政治家と比較される場合がしばしばある。読者の側の価値観や支持政党によってその個人名は様々だが、保身や上昇志向や民衆を見下す態度は全ての政治家に内在する要素であり、トリューニヒトはその点を拡大/明確化したキャラクターだと思われる。
