ホンダ・ジョルカブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

ホンダ・ジョルカブは本田技研工業が生産していた原動機付自転車である。1999年に生産が開始され、2003年に生産終了となっている。

数ある原付の中でも、このジョルカブはベスパの様に、スクーターの形をしているが、ギアミッションを搭載しているのが特徴である。

[編集] 概要

ジョルカブは1999年にレトロ調で人気を博していたメットインスクーターのホンダ・ジョルノの後継車種として、1999年6月発売のジョルノクレアに2ヶ月遅れて発売された。

新開発の水冷4ストロークエンジンを搭載したジョルノクレアに対して、ジョルノのボディをベースに、スーパーカブの空冷4ストロークSOHC 単気筒エンジンを搭載した。

外見は非常にジョルノに酷似しており、ホイールベースやライディングポジションはジョルノと同じだが、ボディパネルの一部は（レッグシールド・フロアステップ等）ジョルカブ専用となっていて、車体フレームの幅がエンジンの関係上ジョルノより広くなっていたりと、ジョルノと寸法的に違う部分が各所にある。特徴として、フロアステップ部のトンネルが太くなっており、その左側にシーソー式のギアペダルがフロア部から出ている。この為に他の一般的な無段変速のスクーターのように足元に荷物を置くことが出来なくなっている(コンビニフックが装着されているが、引っ掛ける荷物の形・大きさによってはシフト操作の邪魔になったり、足の置き場が無くなってしまったりする)。また、材質や取り付け方に問題があるのか、カウルに取り付けられている「giorcub」のエンブレムが非常に欠けやすい。

搭載されるエンジンは先ほど述べたとおり、スーパーカブの空冷4ストロークSOHCエンジンをベースとして、メットインスペース(ハーフタイプのみ収納可能)を確保するためにスターターモーターをエンジン下部に移動させている。またエンジンの細部の部品精度やキャブレターのセッティングを見直す事で、排気ガス規制に合格させている。基本構造はスーパーカブと同じなので、クラッチレスの自動遠心リターン変速を持つ。カブシリーズは3速に対し、このジョルカブは4速となっている。ブレーキは、スクーターと同じくハンドルの左右のレバーで後輪/前輪にブレーキをかける仕組みである。またエンジンが車体中央下に搭載され、駆動方式としてはチェーンドライブ方式を採用している為、他のスクーターとは違い、後輪部分が非常にスッキリしているのも特徴である。ただ、その為に定期的な整備が必要であり、通常のスクーターよりもメンテナンスに配慮しなければならない面もある。またリアのサスペンションが一般的なスクーターのユニットスイング式(一本支持)に対して、普通二輪に多いスイングアーム式(二本支持)となっていて、乗り心地を高めている。

通常の多くのスクーターがオートチョーク式及び、セル・キック併設式のエンジン始動形態であるが、ジョルカブはセル・キックは併設されているものの、チョークは手動式である。多くのカブ式エンジンのオーナーが抱えている問題ではあるが、始動性が悪く、暖気を十分に行わないとエンストする。また、乾燥重量が79Kgと、原付スクーターの中では重い方であり、４ストロークエンジンと相まって停止状態からの加速は遅く、登坂でもパワー不足である。しかし、燃費は他の原付スクーターに比べて格段に上であり、実際の燃費でも45～60Km/Lと高水準である。

販売面としては、人気あるジョルノのスタイルと、カブ式ギアチェンジの合体により、和製ベスパの様なスクーターとして人気が出る事を期待していたようだが、原付スクーターユーザーにとっては積載性が他のスクーターよりも劣っている上、カラーリングがジョルノに比べてあまりにも少なく(販売当初は赤・白の2色のみ。後に黒/グレーの2トーンカラーが追加)、またギアチェンジが必要なためにスクーターユーザーの大半を占める女性ユーザーにとっては抵抗もあり、販売面では成功したとは言い難い。しかし、このようなギアミッションスクーターはベスパ以外にはこのジョルカブだけであり、独特の個性を持っている為、ファンには非常に大切にされているモデルでもある。