ファセル
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ファセル(Facel)はフランスにかつて存在した高級車メーカー。工作機械、家具製造メーカーでもある。
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[編集] 概要
[編集] 歴史
ファセル(Forges et Ateliers de Construction d'Eure et Loireの頭文字を取った)は、第二次世界大戦前の1939年に実業家ジャン・ダニノ(Jean Daninos)によって、工作機械や家具などを製造するメーカーとして設立された。戦後、金属加工技術を活かしてパナールのセダンやドライエ、シムカ、フォード・フランスのクーペなど、自動車メーカーからの請負でボディ生産をおこなうようになった。
戦後のフランスでは、戦前に隆盛を誇ったブガッティやイスパノ・スイザ、ドラージュなどの名門高級車ブランドが、大戦の戦禍と、大排気量高級車への禁止税的税制(産業復興に必要な中・小型車の生産を優先させる施策)とによって軒並み消滅していた。社交界に出入りする粋人でもあったダニノはこの風潮に抗ってフランス製高級車の復権を狙い、1954年から自社ブランドの高級車の生産に乗り出した。
フランス本国での販売よりも対米輸出を念頭に置いたことから、アメリカ市場で好まれるクラスの大型車を生産した。大きな分割型ラジエーターグリルに、中期からは縦型のデュアルヘッドライトを組み合わせたフロントマスクは豪奢なもので、優れたボディ生産技術・インテリア製作技術と合わせ、非常に魅力のあるスタイルを備えていた。そのエンジンは当時アメリカで最強クラスであったクライスラー製大排気量V型8気筒を用い、動力性能はずば抜けていた。だが一方で、フロントエンジン・リアドライブ、後軸リジッドとしたアメリカ車風の保守的シャーシは、乗り心地はともかく、操縦性やブレーキ性能については不十分な傾向があったともいう。
これら大型ファセルは狙い通りアメリカ輸出なども行われてある程度の商業的成功を収めたが、ファセルでは続いてより大きな市場の見込める小型の高級クーペ開発に乗り出す。その結果1960年に完成したのが、大型ファセルのデザインモチーフを巧みに縮小した「ミニ・ファセル」とも言うべき華麗なクーペ「ファセリア」だった。だがこのファセリアが、最終的にはファセルの命脈を絶つ原因にもなった。
ファセリアには、ファセル社としては初めての自社開発エンジンである4気筒1600ccDOHCエンジンが搭載されていた。当時としては異例の110hp以上を叩き出す高性能エンジンだったが、発売後、あまりにも凝りすぎた設計が仇となってエンジン破損トラブルが続発し、ファセルの信用を損なうことになった。社外製の代替エンジンとしてボルボの4気筒やBMC・C型6気筒が搭載されるなどしたが、ファセリアの人気を回復することはできなかった。
大排気量車の販売退潮に加えてこのような問題も重なったことでファセルは経営に行き詰まり1964年に倒産、自動車の生産から撤退した。
[編集] セレブ御用達
クライスラー製のV8、6,2リッターエンジンを搭載したファセル・ヴェガ・ファセルIIは、レーシングドライバーのスターリング・モスや作家のアルベール・カミュ等のセレブリティ御用達モデルとして名高く、大柄ながら優雅なデザインと、家具メーカーとしての技術を流用した室内の木目調パネルなどが特徴であった。カミュはファセルで事故死している。
[編集] 主なモデル
[編集] 関連項目
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