ピッケル
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ピッケルは、積雪期の登山に使うつるはしのような形のT字型の道具。語源はドイツ語のアイスピッケル(Eispickel)。英語ではアイスアックス(ice axe)と呼ばれる。
その用途は幅広く、本来の用途である氷雪の斜面で足がかりを作るのに用いるほか、確保の支点(ビレイピン)に使ったり、滑落したときの滑落停止に使ったり、グリセードの際に制動及び姿勢の維持に使ったり、杖代わりに使ったり、アイスクライミングの時には2つ持って(ダブルアックス)手掛かりにしたり、時には雪上でテントのペグのかわりに使ったりする。
山岳地帯での縦走用には、柄が真っ直ぐで比較的長いもの(60-70cm程度)が用いられるが、氷壁などの突破用には短め(30-40cm程度)のものが用いられる。氷壁用のものは、オーバーハングしている局面を考えて柄がカーブしているものもある。 かつては(近世-戦前程度)杖としての使用局面が多かったらしく100cm程度あった。現在は杖(折りたたみ式のスキー用ストックに近い)を別に用意することも多く、シビアな局面だけで利用されることが増えたため短めのデザインとなっている。
[編集] 各部名称
ピッケルの各部分には区別のための名前が付いており。柄の部分をシャフト、柄の先端に付いた角を石突(いしづき)、頭部のつるはしのように細く尖った刃の方をピック、頭部の鍬(くわ)のように広がった刃の方をブレードという。 ブレードの素材は各種鋼鉄、アルミニウム合金、チタン合金などである。(素材についての相違はアイゼンの項を参照のこと) 各先端部分は用途上、非常に鋭く作られている。そのため、輸送時は革や合成樹脂製のカバーを取り付けなければ危険である。(なお、リュックサックの外側に取り付けて歩くと危険であるため、使用しない間は中に収納して運ぶことが勧められる)
[編集] バイル
ピッケルからアイスクライミング用に特化したバイル(アイスハンマー)などの派生物もある。これらアイスクライミングで使うピッケル類はアックスと称される。総じてシャフトが短くなってピック側に曲がり、ピックの部分もシャフト側に曲がり、軽量化され、ピックの刃が鋭く研磨されるという傾向を持つ。
バイルはブレードの代わりにハンマー(金槌)が付けられている。これは、氷壁や岩場に足場やビレイ(安全確保)点となるピンやハーケンを打ち込むためのものである。