ヒモムシ
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紐形動物門 Nemertina |
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ヒモムシは、紐形動物門に属する動物の総称である。体節がなく、滑らかで平たいひも状の体をしている。前頭部に長い吻(ふん)を持つことが特徴である。この吻は裏返しにして体内に格納することができる。体長の3倍の長さまで吻を伸ばす種もいる。通常捕食性で、この吻を獲物に巻きつけて捕らえる。また、吻の先端に毒針がついており、これを用いて他の動物を捕食する種もいる。体長は数ミリ~十数m。Lineus longissimus というヒモムシは体長30mに達し、無脊椎動物のなかでも最大の体長をもつ種の一つに挙げられる。多くの種が海産である。浅瀬の岩の間や泥の中から4000mの深海まで、広い範囲に生息している。湿った土壌や淡水中に生息する種もいる。
[編集] 特徴
- 外見は扁形動物に似ているが、扁形動物が持たない肛門や閉鎖血管系を持っている。
- 脳をはじめとした神経系をもつ。呼吸器はもたない。
- 多くの種が雌雄同体で、有性生殖を行う。また、断片から再生する無性生殖を行うこともできる。
形態の比較から、かつては扁形動物の近縁にあたる無体腔動物であると考えられていたが、近年の分子生物学的な研究では、環形動物や軟体動物(いずれも中胚葉由来の体腔がある真体腔類)と近縁であると指摘されている。また、紐形動物門は無体腔ではなく、吻を格納する吻腔が体腔に相当することが明らかになっている。
[編集] 分類
紐形動物門に属する動物は1,000種以上知られている。
- 無針綱 Anopla : 口が脳より後方にあり、吻に針を持たない。
- ホソヒモムシ目(原始紐虫類)Archinemertea
- クリゲヒモムシ目(古紐虫類)Palaeonemertea
- ヒモムシ目(異紐虫類)Heteronemertea
- 有針綱 Enopla : 口が脳より前方にあり、多くの種が吻に針を持つ。
- ハリヒモムシ目 Hoplonemertea
- ヒモビル目(蛭紐虫類)Bdellonemertea
[編集] 参考文献
- 『無脊椎動物の多様性と系統』 裳華房
- 『図説・生物界ガイド 五つの王国』 L.マルグリス,K.V.シュヴァルツ 著 日経サイエンス社