ハンドルネーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハンドルネームとは無線通信やインターネットをはじめとしたネットワーク上で活動するときに用いられる別名のことである。HNと略されることもある。
[編集] 由来
ハンドルという単語自体に『名前(ネーム)』の意味が含まれているので、ハンドルネームではなく、ハンドルが正しい。ハンドルネームという表現は和製英語で、「ハンドル」が自動車の操舵装置(正式には"steering wheel")若しくは“手渡し”(handle)の意になってしまうため、混同を避ける意味でハンドルネームと使われてきたと言われる。
しかし、ハンドルの語源も、上述の意から来ている。
ハンドルネームの由来としては複数の説がある。そのひとつは上記でもいう長距離トラックの運転者による無線通信で使われていたニックネームよりもたらされたという説であり、もうひとつはプログラミングにおけるポインタへのポインタを「**ハンドル」と呼んでいたことから転用されたという説である。
前者については、米国で1960年代に登場した無線システムである市民ラジオが長距離トラックの運転者を中心にブームとなり、やがて交信の際に使用すべき自らの呼称を、各々が勝手に「(トラックの)ハンドルを握っている何某」として独自のニックネームを用い始めた。これは運転中の退屈しのぎに無線で交信する際、くだけた雰囲気の中で親近感を抱かせる為のものであると共に、無線で道路上の取締り情報を交換する際に身元を明かさない必要があったからである。やがて、モールス通信を行なう際に用いる電鍵のグリップ部分に引っかけて、アマチュア無線家の間でもコールサインと併せてニックネームとして用いられるようになった(無用にモールス符号でフルネームを打電すると時間がかかって仕方がないため)。 また、アマチュア無線以前に、テレックス文化というのがあった。 これが転用されて、英語圏ではネットワーク上での名前を意味するようになったというものである。
後者については、インターネットが盛んになる以前のパソコン通信と呼ばれたネットワークの創世記において、プログラマー達も多数参加していたことから、プログラミングで日常的に用いていた言葉がパソコン通信の世界で転化され使われていた。例えば読み書きする人をRAMと呼んだり、読むだけで書き込みしない人をROMと呼ぶといったようにである。そのため、パソコン通信におけるニックネームについても、プログラミングにおけるポインタへのポインタが「**ハンドル」として呼び習わされていたことから、特定の人を示すニックネームをハンドルと呼ぶのが一般化したというものである。
ハンドルではなく、ハンドルネームとして用いられるようになった経緯については、マスコミが世間に広める際にハンドルネームなる造語をおこなったとか、自動車の操舵装置(正式には"steering wheel")若しくは“手渡し”(handle)の意になってしまうため、混同を避ける意味でハンドルネームが使われるようになったとも言われる。ちなみにアメリカでは、ハンドルが一般化する以前には、スクリーンネームとの呼び名が一般的だったという。
[編集] ハンドルネームの使用について
日本語では、「ペンネーム」「ラジオネーム」「Webネーム」などからの類推で、名前を意味する「ネーム」を付けて用いられることが定着した。本来、ネットワーク上で実名で発言することは禁じられていないし、実際に実名だけで活動している人も少なくはない。しかし、遊び心にあふれたネットワーカー文化として、なんらかのハンドルネームを持つことがほぼ伝統のようになっているのである。それだけでなく、利害や思想に絡んだ発言をしたときに、身元を特定されて現実の攻撃を受ける事態を未然に防ぐ効果も指摘できるだろう。
ネットワーカーにとっては、ネットワーク上ではハンドルネームが実名と同等のアイデンティティとなる。そのため、ネットワーク伝いに知り合った者同士は電子メールでやりとりするときもハンドルネームで呼び合うことが多く、また、実際に会うとき(オフラインミーティング、オフ会)でさえハンドルネームで呼び合う。珍妙なあだ名で呼び合っている親密な集団は、ネットワーカーのオフ会の特徴とも言える。 日本でのハンドルは、それぞれのコミュニティによりその性格は大分異なる。
通常、一人の人間が色々な場面に応じて複数のハンドルネームを使いわけることは珍しくない。ただし、同じ場で複数のハンドルネームを使い分け、あたかも複数の人間が活動しているかのように見せかける行為は自作自演として激しく非難される(悪意のない自作自演であれば許容される場合もある)。
また、2ちゃんねるなどのように匿名で活動することが一般的な場で、敢えて固有のハンドルネームを使い続けるとき、これを明示的に「固定ハンドルネーム」(略して「コテハン」「コテ」「固定」)ともいう。
これに対して、問題になりかねない発言をするためだけに、一時的に名乗って使い捨てにするハンドルネームは「捨てハンドルネーム」(略して「捨てハン」)という。捨てハンは上記の自作自演行為のために用いられることが多く、同様に非難されている。また、匿名掲示板では名無しで書き込んだあとに同一人物であることを示す必要が出ると、自分の発言番号を捨てハンとして使用することもある。
他人が使っているハンドルネームと同じ、または数文字しか違わないものを使う行為は「真似ハンドルネーム」(略して「真似ハン」)という。真似ハンで暴言をし、相手に濡れ衣を着せるという悪質な行為を行う輩もいる。
尚、実名を表示するサイトにてもハンドルネームを使用する事がある。これは日本人の名前が同じ日本人でも読み間違えてしまう事があるため、あえてハンドルネームを使用する事によりサイト内での会話を円滑にしようとする為でもある。
[編集] 関連項目
カテゴリ: インターネットの文化 | パソコン通信 | 人名