チップチューン
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チップチューン(chiptune) は、おもに1980年代に発売されたパーソナルコンピュータまたは家庭用ゲーム機に搭載されていた内蔵音源チップにより合成された音声のみで、構成された音楽ジャンルのことである。チップミュージック(chip music)とも呼ばれる。
チップチューンの「黄金期」は1980年代後半から1990年代前半であった。その当時、パーソナルコンピュータを使って作曲するには、内蔵音源チップを使うことが一般的であった。 その方法は、作曲者にとって、すぐれた柔軟性を持つ独自のインストゥルメントデータを作成できた。しかしながら、初期の内蔵音源チップは、単純な波形やノイズしか生成できないため、複雑な音声の生成は不可能であった。
しばしば、チップチューンを聴き慣れない人にとっては、黒板に爪を立てて引っかくような不快な音のように感じる。
また、チップチューンはゲームミュージックに深く関連する。
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[編集] 技術的観点
過去にチップチューンにおいて、使用された主要な内蔵音源チップは、以下のとおりである。
- アタリ400/800 - analog-digital hybrid Atari POKY
- コモドール64 - MOS Technology製SID
- MSX、アタリST、ZX Spectrum - ヤマハ製YM2149
- NEC PC-9801 - ヤマハ製YM2203
- IBM PC/AT互換機 - ヤマハ製YM3812
- 任天堂ファミリーコンピュータ - リコー製2A03
なお、MSXにおいては、以下のようなそれぞれ独特の音色をもった拡張音源がリリースされた。
- コナミ製SCC
- ヤマハ製YM2413 (MSX-MUSIC)
- OPL3の前身であるヤマハ製Y8950 (MSX-AUDIO)
- OPL4ベースのMoonsound
音声をリアルタイムに合成するチップチューンのテクニックは、録音された音声を音階をつけて再生するサンプルプレーバック方式のシンセサイザーでも、一般的な手法であった。その理由は、インストゥルメントデータが、生サンプルを使用するよりもコンパクトになるため、定義ファイルのサイズが小容量になる事、そして、合成のパラメーターをリアルタイムに変更可能なため、サンプルベースの音楽フォーマットよりも変化にとんだ音楽表現が出来る事が挙げられる。また、MOD フォーマットなどのサンプルベースの音楽フォーマットでも、細切れの内蔵音源風の音声のループを使用することにより、ファイルサイズを節約させる手法があった。
また、不正にプロテクトを外したゲームソフトを起動したときに、プロテクトをはずしたクラッカーのクレジットとメッセージ等を表示させるクラックトロでも、プログラムの読み込み領域の余っているわずかな領域を有効利用するために、サンプルベースのチップチューンがしばしば使われた。
現在、内蔵音源チップを搭載したパーソナルコンピュータは、販売されていない。そして、サンプルベースのシンセサイザーが使われ始め、より本物に近い音色の再現が可能になった。そしてそれは、(MODファイルのように)ファイルサイズが肥大化し、内蔵音源の個性的な音色を忘れ去ることを意味した。
標準MIDIファイルフォーマットは、General MIDI音色マップとともに、どの楽器の音色が、どの音階で演奏するかだけを記述する。よって、内蔵音源風のインストゥルメント生成情報の記述が全く無い、そして同時発音数を制限しない限り、標準MIDIファイルフォーマットによって作られた音楽は、チップチューンではないと考えられる。
チップチューンを作成・再生する音楽フォーマットは、海外では、SID、MOD、そしていくつかのAdlibのベースのファイルフォーマットが一般的であり、日本では、MOD、NSF、FMP、PMDなどが一般的である。
[編集] スタイル
一般的に、チップチューンは、単純な波形(例えば、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波)、および単純なパーカッション(ADSR エンベローブ コントロールシンセサイザーを通したホワイトノイズが良く使用される)で構成される。
クラックトロとデモシーンのイントロの特徴として、独特な音楽スタイルのチップチューンが使われることが挙げられる。このような背景から同様な音楽スタイルが主流であるが、例えばチップチューンジャズバンドであるYMCKのように、様々な音楽ジャンルを試みている作曲者も存在する。
サンプルベースのMODフォーマットでも、懐古趣味なデモシーンスタイルである"Oldschool"において、イントロで使用されるような音楽スタイルを守り続けている。このような音楽スタイルのデータはMOD Archive Top 10などのWEBサイトにて、入手可能である。
[編集] チップチューンの現在
最近のコンピュータにおいては、メディアプレーヤー用プラグインや内蔵音源エミュレーターによって様々なチップチューン系音楽フォーマットを再生できる。
現在、チップチューンのコンテストが、しばしば開催され、様々なチップチューン製作グループが、ミュージックディスクをリリースされ続けているように、いまだチップチューンシーンは、死んでいないといえる。最近のチップチューン製作ツールは、内蔵音源の音をそれほど毛嫌いしていないミュージシャンに使われるようになった。例えば、任天堂ゲームボーイ用ソフトである Little Sound DJ やNanoloop は、ライブで使いたいユーザーのために、MIDI機器と同期させるためのインターフェースが用意されているという特徴をもつ。
また、チップチューンは、クラシックコンピューターの話題を中心とした多数のウェブサイト、音楽グループ、及び音楽アーティストに強い関心を持たれている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- VORC - チップチューン関連ニュースサイト
- FAMICOMPO MINI - NSF専門コンペティションサイト
- chiptune.com - チップチューンのアーカイブサイト