ダーウィニズム
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ダーウィニズムは生物の多様性についてダーウィンの提唱した理論である。現在でも進化論の主流をなす重要な概念である。
ダーウィニズムの根幹となるのは自然淘汰(自然選択)という作用である。生物が住む環境には生物を養う資源(食物、営巣地など)が有限にしかないので、その環境で子孫を残すのに有利な性質を持った種族とそうでない種族とでは、必然的に有利なものが残って繁栄することになる。有利な性質を持っていることを適応していると表現し、適応していることが繁栄につながることを適者生存と表現する。この作用が自然淘汰である。
もっとも、個体変異に選択をかけても、特定の形質のものが残るだけで新たな形質の個体が生まれるわけではない。そこで、ここに突然変異を組み込み、そうして出来た新たな遺伝子を含む個体群に選択がかかることで進化が進んでゆくという考えをネオダーウィニズムという。進化に関してはそれ以後も隔離説など様々な説が提唱されたが、それらの多くは必ずしも自然選択説とは相容れないものではなかったため、自然選択説にそれらを取り入れた形の考えが現在の主流であり、これを総合学説というが、ほぼネオダーウィニズムと同義に扱われる。
一方で、繁殖の有利さには関係しないような変化も偶然浮動によって蓄積し、種の多様性を生んでいるのではないかという観点からの研究も進められている。これは中立進化説と呼ばれ、ダーウィニズムと対立する概念ではない。ダーウィニズムは、繁殖の有利さに差がついた場合を対象としているものなのである。その意味でこの説はダーウィニズムからはずれた立場にあると見る面もあるが、逆にそれを埋める位置にあって相容れないものではないと受け取る見方もある。
なお、現在の総合学説ではたとえば生殖的隔離や倍数化、雑種形成なども視野に入れており、そのような過程での種分化も考えられるので、ある面から見れば自然選択の地位は相対的に低くなっている。さらに極端に自然選択は補佐的なものにすぎないという見方もある。これに対して、あくまでも自然選択が本筋であり、それ以外の機構は枝葉であるという判断を持つ学者のことを、特にダーウィニストと呼ぶ場合もある。いわば伝統的保守派である。
米国ではダーウィニズムは否定されたと主張する理論(キリスト教原理主義の創造論)の勢力が未だに根強いが、多くの者は此れを科学ではなく疑似科学に分類している。