セルビア王国 (中世)

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この項目では中世のセルビア王国について説明しています。近代のセルビア王国（現在のセルビア共和国に相当）についてはセルビア王国 (近代)をご覧ください。

セルビア王国（せるびあおうこく）は、現在のセルビアを中心とした中世の王国（1171年 - 1371年／公国として1371年-1459年）。

[編集] ネマニッチ朝の成立

南スラヴ（ユーゴスラヴ）の一派であるセルビア人は7世紀初め頃にバルカン西部に南下し、9世紀後半には東ローマ帝国の影響下で東方正教会を受入れた。セルビア人は長くジューバと呼ばれる部族共同体に分立していたが、12世紀後半に東ローマ帝国の衰退に乗じてステファン・ネマニャが1168年に諸部族を統一してセルビア侯となる。その後、拡大した勢力を背景として1171年には国王として即位し、ネマニッチ朝を開いた。なお、始祖の名前は「ネマニャ」であるが、第二世代以降は指小語ićを付けて「ネマニッチ」(Nemanjić)とするので王朝の名前も「ネマニッチ朝」となる。第二代のステファン初冠王は1217年にローマ教皇から王冠を授与されて「王国」としての地位を国際的に認めさせ、実質的なセルビア王国の建国者となった。

[編集] 再興

ステファン初冠王の死後、セルビアは内紛が続き発展の機会を逸したが、ステファン・ウロシュ2世ミルティンの時代(1282年-1321年)には安定を取り戻すと、東ローマ帝国やブルガリアと対立、抗争を繰り広げつつ次第に領土を南に拡大していく。14世紀前半に登場した王ステファン・ウロシュ3世デチャンスキは1330年、ベルブジュドの戦いに於いてブルガリアの大軍を寡兵で撃破し、ブルガリアに代わってバルカン半島の盟主の座に就いた。続いて登場した英主ステファン・ウロシュ4世ドゥシャンは東ローマ帝国の内乱に乗じてマケドニア、テッサリア、イピロス及びアルバニアを征服してセルビア王国の最大領土を築き、1346年にはマケドニアのスコピエに於いて「セルビア人とローマ人の皇帝」と称して東ローマ帝国の征服を企図した。1349年にはドゥシャン法典を発布して国家の基本法を完成させ、セルビア王国の最盛期を築き上げたのである。しかし1355年、ドゥシャンは東ローマ帝国征服の遠征に乗り出した直後の陣中で、病のために急死してしまった。

[編集] ネマニッチ朝の断絶

ドゥシャンの死後、セルビア王国は急速に衰退する。拡大した広大な王国の各地で諸侯が自立していく中、ドゥシャンの息子ウロシュ5世は単独で王位を維持しきれず、ムルニャヴチェヴィチ家のヴカシンとの共同支配を余儀なくされる。ヴカシンはバルカン半島に上陸してきたオスマン帝国を迎え撃ったが1371年のマリッツァ河畔の会戦で敗死、同じ年にウロシュ5世も死去しネマニッチ朝はここに断絶した。その後、諸侯の群雄割拠の状況の中でラザル侯が最有力の君主として主導的立場を固めていく。

[編集] コソヴォの戦い

この頃、セルビアはオスマン帝国のスルタン・ムラト1世の侵攻に悩まされていた。ラザルはセルビアの独立を守るため、1389年にムラト1世率いるオスマン軍とコソヴォで戦ったが大敗して捕虜となってしまう。その直後、ムラト1世がセルビアの一貴族によって暗殺されたため、その報復としてラザルも処刑されてしまった。

[編集] オスマン帝国への臣従

ラザルの死後、その息子ステファン・ラザレヴィチ(1389年 - 1427年)は父の後を継ぎ、「公」（東ローマの専制公称号を採用したが独立国家の主としては公となる）としてオスマン帝国に臣従し、実質的にその帝国の属国としての歴史を歩む事になった。ラザレヴィチ及びその甥に当たるジュラジ・ブランコヴィチ(1427年 - 1456年)はドナウ河畔のスメデレヴォを拠点とし、南のオスマン帝国、北のハンガリー王国との間で巧みな外交政策によって命脈を保った。ジュラジの死後は政変が相次ぎ、オスマン帝国はそれに乗ずる形でセルビアを徐々に併合していった。1459年6月、スメデレヴォはオスマン軍によって占領され、ここに中世のセルビア国家は滅びたのである。

[編集] 歴代中世セルビア王・君主

セルビア王国・ネマニッチ王朝

ステファン・ネマニャ(Stefan Nemanja) （ラシュカ侯）1168年-1196年
ステファン初冠王(Stefan Prvovenčani)　（ラシュカ侯）1196年-1217年／（セルビア王）1217年-1228年
ステファン・ラドスラヴ(Stefan Radoslav)　1228年-1233年
ステファン・ヴラディスラヴ(Stefan Vladislav)　1233年-1242年
ステファン・ウロシュ1世(Stefan Uroš I)　1242年-1276年
ステファン・ドラグティン(Stefan Dragutin)　1276年-1282年
ステファン・ウロシュ2世ミルティン(Stefan Uroš II Milutin)　1282年-1321年
ステファン・ウロシュ3世デチャンスキ(Stefan Uroš III Dečanski)　1321年-1331年
ステファン・ウロシュ4世ドゥシャン(Stefan Uroš IV Dušan)　（王）1331年-1346年／（皇帝）1346年-1355年
ステファン・ウロシュ5世(Stefan Uroš V)　1355年-1371年
ムルニャヴチェヴィチ・ヴカシン(Mrnjavčević Vukašin)　（王・共同統治）1365年-1371年

（1371年、ウロシュ5世及びシメオン・ウロシュ・パレオロゴス死去に伴いネマニッチ王家断絶）

セルビア公国

ラザル・フレベリャノヴィチ(Lazar Hrebeljanović)　（セルビア侯）1371年-1389年
ステファン・ラザレヴィチ(Stefan Lazarević)　（セルビア公）1389年-1427年
ジュラジ・ブランコヴィチ(Djuradj Branković)　1427年-1456年
ラザル・ブランコヴィチ(Lazar Branković)　1456年-1458年
スティエパン・トマシェヴィチ(Stjepan Tomašević)　（セルビア公・ボスニア王子）1458年-1459年（ボスニア王として1461年-1463年）