スタジオ (映像撮影)
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スタジオ (映像撮影)は、スタジオの一種。本項目では、スタジオのうち、もっぱら映像の撮影用に使われるもの、つまり映画・テレビ番組・ビデオの撮影用スタジオについて説明する(以下「映像撮影スタジオ」と記す)。その他の目的のスタジオについては、「スタジオ (写真撮影)」「スタジオ (映像編集)」「録音スタジオ」を参照せよ。
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[編集] 歴史的な経緯をふまえた分類
映像撮影スタジオは、歴史的には、「同時録音ができないスタジオ」と「同時録音用スタジオ」、さらに同録可能スタジオの進化形としての「ビデオスタジオ」に大別される。また、多少別の分類のものとして、特殊な撮影に特化した「特殊撮影用スタジオ」もある。
[編集] 同時録音ができないスタジオ
「同時録音ができないスタジオ」は古くから映画撮影に用いられてきたスタジオである。フィルムによる映画撮影の場合、初期には映像と音は別々に記録するのが普通であり、映像の撮影の際には録音はしないものであった(フィルムを使ったムービーカメラは、撮影時に大きな音をたてるものであり、撮影現場では作品に使える音を録音することができなかったため)。
音を気にする必要がないため、古い映像撮影スタジオは、映像撮影ができれば良いと考えられており、音については全く配慮がなされていなかった。古い映像撮影スタジオの建物は、形態としては倉庫のようなものであり、夏は灼熱冬は極寒の過酷なしろものであった。しかし徐々に空調などは整えられてきており、同時録音用スタジオと同等の設備を持つものが増えてきている。
後述の「同時録音用スタジオ」や「ビデオスタジオ」と比べて設備投資額が少なくレンタル料金が安いため、現在(2005年時点)でも、音を必要としない商品撮影などをメインとした根強いニーズがあり、映像撮影スタジオのヴァリエーションのひとつとして存在している。
このようなスタジオでも、たいていは写真撮影スタジオと同じ程度には、ホリゾント(背景用の紙や布)や映像撮影用の照明機材(ライト類)は保有しており、オプションで借り出すことができる。ブルーバック合成(ビデオの世界ではクロマキー合成と呼ばれる)用のブルーホリゾントなども用意されていることが多い。ホリゾントや照明機材がたいていのスタジオに用意されていることについては、以下の同時録音用スタジオやビデオスタジオでも同じ。
レンタル料金は、一般に時間ないし期間による(この時間・期間には、セットなどの立て込み・解体に含まれる時間も含む。以下同じ)。レンタル内容は「撮影場所」のみであり、それ以外の資材類についてはオプションとなることが多い。
[編集] 同時録音用スタジオ
その後、撮影時の音が小さなムービーカメラが開発され(ムービーカメラの改善とともに、現場の音を生かすためにカメラを防音箱に入れるなどの対策がとられた)、映像と音を同時に記録することが主流となった。この時代の映像撮影スタジオは、「映像の撮影」と「録音」の2面的な機能を求められるようになり、外部の音を防音することについてもある程度の対策が取られるようになった。
建物は、外部音からの防音が必須であるため、遮音壁を備えた専用のものを新築するか、あるいは廃業したボウリング場などの既存建築物を大改造するなどして、条件を満たしている。また、防音対策もあって締め切って使うのが前提であるため、空調設備は完備していて当然であり、前世代スタジオとは労働環境が一変している。
レンタル料金は、一般に時間ないし期間による。レンタル内容は「撮影場所」のみであり、それ以外の資材類についてはオプションとなることが多い。
[編集] ビデオスタジオ
さらにその後、ビデオによる撮影が主流となるに従い、ビデオ機材を組み込んだ総合的なシステムとしてのスタジオが主流となった。ビデオの撮影機材は高価なものが多く、またビデオ撮影機材の制御には大規模な映像管理システムが必要になってきたことから、それらの設備を組み込んだ一括してレンタルができるシステムのニーズが高まってきたためである。
また、テレビ放送の黎明期には「ビデオ編集」という作業が存在せず編集はフィルム撮影をしての映画的編集が前提であったことから、リアルタイムな情報提供のためには生放送という手段しかなかった。そのため、ビデオスタジオの用途の中には、撮影した映像をリアルタイムで番組として放送できるような能力も要求される場合があった。この系列のものは、ビデオ機材を組み込み、カメラからの映像の切換えなどを行って番組として仕上げる機能を持つものもある。
そのような事情から、ビデオスタジオは、撮影を行う部分とビデオ機材の制御を行う部分とに分かれる。撮影を行う部分は「フロア」などと呼ばれる。ビデオ機材の制御を行う部分は「副調整室」「サブ」などと呼ばれる。さらに別に、録画のためのビデオデッキなどを収める「機械室」を持つ場合もある。
建物は、専用の新築の建物であるか、大改造によって条件を満たしたものである。また、副調整室内にスポンサーやクライアントの立会いなどに対応した接待スペースを用意しているものもある。
レンタル料金は、一般に時間ないし期間により、レンタル内容は「撮影場所+システムの使用料金」である。大半はオペレータ(機材の運用技術者)の人件費も含まれている。システムの利用を伴わないレンタルは、原則としてできない。
[編集] 特殊撮影用スタジオ
ある程度の継続的なニーズのある撮影に特化したスタジオもある。代表的な例として「特撮スタジオ」と「野外スタジオ」があげられる。
[編集] 特撮スタジオ
「モーション・コントロール・カメラ」「ヴァーチャルスタジオ(場所ではなく撮影機材の名称)」など、大規模で特殊な撮影機材を装備したスタジオである。
モーション・コントロール・カメラなどの特殊な撮影機材の中には、移動することが困難なほど大規模で定置型のものもある。そういった撮影機材が必要となるような特殊な撮影のために、あらかじめその機材を設置しておき、その機材のための専用の映像撮影スタジオとして使われるものがある。当初はもっぱら「SF映画」などの特撮の撮影に用いられたが、ディジタル合成技術の進化に伴い、一般映画や大作テレビドラマなどでの使用も増加してきている。
レンタル料金は、一般に時間ないし期間によるが、レンタル内容は「撮影場所+そのスタジオが備えている特殊機材の使用料金+特殊機材のオペレータ人件費」のセットとなる。システムの利用を伴わないレンタルはできない。
[編集] 野外スタジオ
巨大なセットを必要とする野外シーンの撮影などに使われる野原なども「スタジオ」と呼ばれる場合がある。たいていの場合、野外スタジオには撮影に使われる照明機材などが用意されており、レンタルでそれらの機材を使うことができる。
レンタル料金は、一般に時間ないし期間による。それ以外はすべてオプションとなることが多い。
[編集] 映画スタジオの詳細
- 映画スタジオを参照。
[編集] ビデオスタジオの詳細
以下、現在(2005年時点)ではもっとも一般的なビデオスタジオについての詳細について述べる。
[編集] 構成
ビデオスタジオは、前述の通り、「撮影を行うフロア」と「撮影システムを制御する副調整室」に分けられ、見える範囲で2室構成となっているのが一般的である。実際には他にビデオデッキや制御機器類などをおさめた「機械室」を別に持ち、3室構成となっていることが多い。
副調整室の機能は、その目的に応じて決められる。
[編集] 規模
ビデオスタジオの規模や用途はさまざまである。
小規模なものには、企業が自社内の広報用ビデオ映像を制作するために用いるものや、全国規模の塾が名物講師の授業を全国配信するために用いるものなどがある。
大規模なものには、テレビ局が自社番組の制作に用いるものがある。
[編集] 機能
ビデオスタジオに求められる機能にも、さまざまなものがある。
特に性格の差があらわれるのは、テレビ局が保有するものである。ビデオスタジオとひとくちに言っても、生放送用のシステムに重点を置いたものや、ドラマやバラエティショー番組など編集を前提とした作品の撮影などを主目的としてフロアを広く取ったもの、放送そのもののイベント化を目指したスケルトンスタジオなどがある。
それらのスタジオの性格は、必ずしもはっきりと分けられるものではなく、クロスオーバーする部分がある。しかしある程度の傾向はみられるため、以下その特徴に着目して詳述する。
[編集] 生放送用のビデオスタジオ
生放送用のビデオスタジオは、報道番組やワイドショーなどを主目的としたものである。生放送用のビデオスタジオの副調整室は、ビデオ信号を送ることが可能な容量を持つ専用回線によって、送出局の主調整室と直結されている。
これらのスタジオは、生放送が主目的であるため、撮影そのものはあまり凝ることができないし、また合成などにも限界がある。そのため、撮影を行うフロアよりは、撮影されたものの切換えなどを行う副調整室に重点が置かれて設計されている。
撮影機材としては、そのスタジオ専用のスタジオカメラが数台設置されている。必要に応じてカメラを増やしたりクレーンなどの撮影用の特機を入れることも可能である。
副調整室には、リアルタイムでビデオ素材を送出したり音響効果をつけたりするという作業が必要になることが多いため、生放送中に挿入する取材ビデオの映像を再生するビデオデッキや、効果音などの音素材を再生するオープンリールテープレコーダー・CDプレイヤー・MDプレイヤーなど、充実したものが用意されている。
また、報道番組などに使われることを想定して、ビデオスタジオそのものが、放送局の報道セクションなどの近隣に設置されていたり、報道セクションとの間がガラス張りにされているなどの演出的工夫が凝らされている場合もある。
生放送を行う場合には、副調整室で仕上げられた映像信号は、放送局の主調整室に送られ、そこからリアルタイムで放送される(副調整室での仕上げ作業に失敗した場合には、そのまま放送事故になる)。
また、この設備を持つスタジオは、次に述べる「編集前提の撮影用スタジオ」としても、限定的にではあるが、使用が可能である。
[編集] 編集前提の撮影用スタジオ
編集前提の撮影用スタジオは、編集したのちに作品として仕上げることを目的とした映像を撮影するスタジオである。生放送・スタジオ撮影がないドキュメンタリー以外の大半の番組が対象となるため、かなり受け持ち範囲が広い。また、このタイプのスタジオでも副調整室はある程度の機能を持っているため、生放送用スタジオには劣るにせよ、主調整室と回線を直結すれば、生放送を行うことも可能である。
このタイプのスタジオの典型的なものは、テレビドラマなどの撮影に使われるスタジオである。このようなケースでは、大規模なセットを組む必要が出てくることが多いため、副調整室よりもフロアの方に重点が置かれる。フロアの面積を広く取り、高さなども余裕を持たせる必要がある。また、生放送と比べると撮影が長時間に及ぶことが多いために、出演者やスタッフの休憩用スペースなども必要となる。セットの組み立てや解体なども日常的に行われるため、大道具担当チームなどとも連携を取る必要があり、大道具倉庫などとも組みあわせて設計される。大は小を兼ねるで、広いスタジオに複数のセットを組み、時分割して複数の番組が共用するといったことも行われる。
機材は、そのスタジオ専用のスタジオカメラのほか、収録用のビデオデッキに重点が置かれて整備されている。バラエティ番組の収録の際には、出演者に取材ビデオを見せる必要があることから、ビデオ再生機材やひととおりの音素材再生機材も用意されているが、それらは生放送用のスタジオほどには重視されない。
[編集] スケルトンスタジオ
収録そのものをイベント化するために、街頭ないし建物内部の一般市民が容易に見ることができるところに、ガラス張りのスタジオを設置することがある。それらのスタジオは、中の様子が透けて見えることから「スケルトン(=骸骨、骨格)スタジオ」と呼ばれる。基本的には、あまり凝った構成ではない生放送用のスタジオであり、報道番組の一部あるいは全部をスケルトンスタジオから放送する場合もある。
[編集] テレビ局のスタジオ
[編集] 各局のスタジオの特徴
テレビ局のスタジオには、いろいろな特徴があり、特に報道関係のスタジオに多く、TBSやフジテレビ・テレビ朝日は、バックに報道局が映るガラスがある。また、日本テレビの場合は、麹町(現在は無し)と汐留の両社屋に“マイスタジオ”と呼ばれるスケルトンなスタジオがある。それと同様に同じ汐留の日本テレビに“ゼロスタジオ”という所もスケルトンの小さいスタジオがある。他には、TBSにてAスタジオとBスタジオの元々、別のスタジオが、合体して、大きな1つのスタジオとして使える所があったり、同局の緑山スタジオでは屋外のスタジオがあり、「SASUKE」や「風雲!たけし城」などで使われていたりしたり、大阪の毎日放送では、テーマパーク(この場合はユニバーサルスタジオジャパン)にスタジオを建てたりしている。
TBSテレビジョンTBSのAスタジオとBスタジオの「連結使用が可能」という仕様は、美術搬入口が大きく(トラックがセットを乗せたまま入構出来る)、そしてそのAスタとBスタの搬入口を同時に開放したときの真ん中の部分の通路になる部分が"スタジオとしても使用出来る仕様"であるという事。スタジオの空間自体は分離しており鉄骨で遮られているため全体が一体化することは出来ず、未だかつてAスタとBスタをスタジオとして同時使用した事はない。「オールスター感謝祭」では"(一方のスタジオの空間を)休憩所として同時使用"している。
[編集] 各局のスタジオの面積の比較
日本のテレビ局のスタジオで一番面積が広いスタジオはNHK放送センターのCT-101スタジオで350坪ある。地方局を含めた場合スタジオの平均は80坪程度であり、地方局でも自社制作の多い老舗局は広さよりも同時使用を含めた狭めのスタジオとなっている場合が多い。また、NHKと民放では坪数の定義が違い民放と同じ坪数でもNHKのスタジオは若干広いことになる。また、東京・渋谷のNHK放送センターには35以上のテレビスタジオ(と専用サブ)が有る。かつてのごく一時期ではあるがTBSや日テレビなど民放や制作プロに貸し出された事があり、一部の民放の低俗番組がNHK放送センター内で収録されたことはかつて問題になったためか、(理由は定かではないが)現在は貸し出すような事はしていない。もっともNHKだけで非常に多くのチャンネル(テレビ放送では国内向けで地上波が2チャンネル、BSが3チャンネル、さらに海外向け国際放送2チャンネル〈番組配信NHKワールド・プレミアムを含む〉)を有しておりその番組制作数などもかつてよりも増大しているため40のスタジオがあるとしてもスタジオ数に余裕があるとは言えない状況ではある。
[編集] それぞれのテレビ局のスタジオで一番面積の広いスタジオ
地方局では最大でも150坪クラスのスタジオが最大で200坪クラスのスタジオは地方局には存在していない
[編集] スタジオの呼び方
テレビ局のスタジオには、いろいろな呼び方があり、昔は第1スタジオ・第2スタジオなどの第○スタジオとつけた所(内幸町時代のNHK〈ただし、1964年の渋谷区にある放送センターの一部完成・第1期運用開始まで 地域拠点局、地方放送局では現在でも第○スタジオとついているところがある〉の河田町時代のフジテレビなどはこの様に呼んでいた)があったり、NHKの様に101スタジオ・102スタジオなどと3ケタの数字(1964年の渋谷区にある放送センターの一部完成・第1期運用開始から呼ぶようになった 内幸町の旧放送会館にある既存のスタジオも渋谷区にある放送センターの一部完成・1973年の完全移転まで3ケタの数字で呼んでいた)で呼んでいた所があったが、今、現在は麹町にある日本テレビやTBSの様にAスタジオ・Gスタジオ・Kスタジオとアルファベットで呼んでいる所があったり、汐留にある日本テレビのS1スタジオ・S2スタジオやお台場にあるフジテレビのV1スタジオ・V2スタジオの様にアルファベットの後に数字をつけて呼んでいる所があったりする。