シンダール語
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シンダール語(Sindarin)はJ・R・R・トールキンが開発した人工言語である。トールキンの神話では、かつて最も使われたエルフの言語だった。また、エルフの長途の旅の後に残されたテレリであるシンダールの言語だった。共通テレリ語と呼ばれる初期の言語から派生した。ノルドールが中つ国に戻った時、生来のクウェンヤの方が美しいと考えたが、シンダール語を採用した。没落の前、ヌーメノールのほとんどの人間もまたこの言葉を使った。それについての知識はヌーメノールの亡国の民の王国ゴンドールの特に学識者の間で維持された。
もとは、ノルドール(エルフの第二の氏族)の言葉にしようと考えていたが(そのため、語源学的に名前もノルドール語(Noldorin)だった)、トールキンはその後シンダールの言語であると決定した。このために、古い資料ではノルドール語(Noldorin)と呼ばれている。ノルドール語をシンダール語にした時、さらに、それはもとは無関係なイルコール語(Ilkorin)のいくつかの特徴を採用した。トールキンは、いくらかウェールズ語に基づいてノルドール語/シンダール語の文法および音を作り、確かに、シンダール語にはケルトの言語を特徴づける音変異が多く見られる。
シンダール語の複数形はトールキンが呼ぶところの「i-affection」によって特徴づけられる。これはシンダール語ではprestanneth(妨害、影響)と呼び、英語では、ほとんど同じことを示すドイツ語の「ウムラウト(umlaut)」と呼ぶ。つまり、シンダール語の単語ほとんどすべてでは、英語のman/menやgoose/geeseのように母音の変化によって、複数形を形成する。もともとの複数形語尾「-î」が単語の母音に影響しこの音に近くなるように変化させたのがその理由である。汚い仕事を行って、それは消えた(すべての最終母音が失われた)。したがって、シンダール語複数はもはや語尾の「-î」がないが、まだその「名残」を残しているのである。
シンダール語には複雑な一連の音変異がある。変異した単語の前に(冠詞あるいは前置詞のような)緊密に関連する言葉があると、変異した単語の最初の子音を変更する。しばしば、前置詞も変わる。さらに、変異が他の多くの場所(わずかな例をしめすと、合成語(mellyn「友達」からelvellyn)や、あるいは直接目的語の中で現れる)で生じる。
さらに、シンダール語動詞は全く複雑である。それぞれi-語幹およびa-語幹と呼ばれる強動詞と弱動詞がある。ちょうど英語の(またドイツ語)強動詞と弱動詞のように、強動詞は弱動詞より「不規則」である。シンダール語にはまったく多くの不規則動詞がある。
シンダール語は、トールキンが十分に開発して本当に大きな文章を書ける二つの言語のうちの一つである(もう一つはクウェンヤ)。
第一紀に、シンダール語にはいくつかの方言があった。
- ドリアス語(Doriathrin)多くの古い形式を保存した言語。
- ファラス語(Falathrin)後にナルゴスロンドでも使った。
- 北シンダール語(North Sindarin)、もとはドルソニオンとヒスルムでシンダールが話した方言、これらの方言には多くの独特な言葉があり、本来のベレリアンドのシンダール語とは完全には分かりあえなかった。
ドルソニオンを例外として、方言はノルドール語の影響の下で変化し、クウェンヤの特徴と同様に、(言語を変更することを愛していた)ノルドールが考案した独特な音変化も多くを採リ入れた。ノルドールやシンダールがベレリアンドの戦役で散り散りになった後、はっきりした方言は消えた。パラール島やシリオンの河口の避難所では、新しい方言が、難民の間で発生し、それはファラス語に似ていた。第二紀および第三紀には、(シンダール語によって極度に影響を受けたアドゥーナイクAdûnaicの子孫である西方語の共通語に置き換えられるまで、シンダール語はすべてのエルフおよびそれらの友達のための混成国際語であった。
(2004年4月1日英語版より翻訳)