シク教
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シク教(Sikhism ਸਿੱਖੀ)(スィク教、シーク教とも表記)はヒンドゥー教を基盤にしながらイスラームの要素を取り入れた、インドで生まれた宗教である 「スィク」とはサンスクリットの「シシュヤ」に由来する語で、弟子を意味する。
総本山はパンジャーブ州・アムリトサルにある、黄金寺院(ゴールデンテンプル、Golden Temple、インド名:ハリマンディル)である。 グル・ナーナクを開祖とし、教典はグル・グラント・サーヒブ(GURU GRANTH SAHIB)と呼ばれる1000ページを超える書物である。シク教寺院はグルドワーラー(gurdwara) と呼ばれる。
[編集] 歴代グル
- 第1代 ナーナク(1469年-1539年)
- 第2代 アンガド(1539年-1552年)
- 第3代 アマル・ダース(1552年-1574年)
- 第4代 ラーム・ダース(1574年-1581年)
- 第5代 アルジュン(1581年-1606年)
- 第6代 ハルゴービンド(1606年-1644年)
- 第7代 ハル・ラーイ(1644年-1661年)
- 第8代 ハル・クリシャン(1661年-1664年)
- 第9代 テーグ・バハードゥル(1664年-1675年)
- 第10代ゴーヴィンド・シング(1675年-1708年)
[編集] 教徒
シク教徒の男性は、髪の毛と鬚を切らず、頭にターバンを着用するのが一般的なので、鬚のあるターバンをつけたインド人男性は、シク教徒である場合が多い。ターバンの着用はヒンドゥー教徒などでは一般的でないにもかかわらず、世界的にはインド人男性の一般的イメージとなっている。女性も髪を切らないので、長い髪をみつあみにしている場合が多い。現在ではそのようなことをするカールサー派は減り半数を割ったとも言われ、それに代わってそのようなことをしないサヒジダリーが増えているという。
シング(Singh)を個人名の後に付けるが、これは、出自を消し、宗派への帰属を示すための一種の標号にすぎず、姓とは見なしがたい。よく知られているとおり現インド首相マンモハン・シンもターバンを着用しSinghを名乗るシク教徒のバンジャブ人である。
インド全域に分布しているが、特に総本山黄金寺院の所在地であるパンジャーブ地方に多い。信徒数はインド国内で約1600万人、日本には約1000人ほどが居住していると考えられている。
シク教徒は成立当初から富裕な者が多く、平均的な教育水準が高い。このため官吏や軍人として登用されるなど社会的に活躍する人材を多く輩出し、職務等で海外に渡航したインド人にターバンを巻いたシク教徒を多く見かけ、それが「ターバンの着用≒インド人の習俗」の世界的な一般的イメージにつながった。インドでは少数派でありながら社会的に影響力のある宗教集団である。
[編集] 教義
ヒンドゥー教と同様に輪廻転生を肯定しているが、イスラームの影響でカーストを否定している。ターバンの由来は諸説あってはっきりわからない。
神は一つ、真理こそ神の名前、万物の創造主にして、恐れなく、憎しみなく、時なく形なく、生死をこえて現れる、グルの恵みによって神は知られる。
神は唯一であり、諸宗教の本質は一つである。神は色々な呼び名があるが、真理・創造者・全能者・不死なる者である。人間はこの神の名前を唱え瞑想をし、信愛をささげることによって自己を清め、ついには神との合一にいたる。
儀式、偶像崇拝、苦行、カースト、出家を否定、まじめに世俗の職業につくことを重んじる。
戒律は開祖のときはなかったが、第10代ゴーヴィンド・シングによってタバコ、酒、麻薬が禁止された。肉食に関しては自由で、食べる人も食べない人もいる。