コイルガン
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コイルガン(英:Coilgun)とは、電磁石のコイルを使って弾丸を加速・発射する装置である。
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[編集] 概要
コイルガンは電磁石の力で弾丸を打ち出すための装置(電磁投射砲)の一種だが、同じく電磁的な力で弾丸を発射する装置のレールガンとは異なり、入力された電流は弾体には流れない。呼び名としては他にガウスガンないしガウス砲(ガウスキャノン)という呼び名も、SF作品を中心に見られる。このガウスは磁力関係でガウス単位系に由来し、これの発達とカール・フリードリヒ・ガウスは関係ない。
弾丸を発射するために大量の電流を入力する必要のあるレールガンとは違い、必要最小限の動作に於いては、それほど多くの電流は必要としない。場合によってはソレノイドアクチュエーターを使い、コイル内のストライカーを移動させて弾体をはじき出すものも見られる。動作にはガスの圧力を用いない事から、動作音の小さなものになると考えられていた。
しかし理論上は光速が上限で実質的には入力する電力を賄える電源の開発が最重要課題となるレールガンとは違い、コイルガンは比較にならないほど電気的な抵抗の大きいコイル状の電気回路に電流を流す必要性から、所定以上の電流を入力し難い=弾丸の最大初速に決定的な制限が付くという問題を持つ。
なお「火薬を使わない銃」という位置付けで、SF作品中や、これを基底としているコンピュータゲームなどには稀に登場している。共に電磁投射砲として呼ばれる事から、中にはレールガンとコイルガンの区別が曖昧な作品も見られ、レールガンの説明にコイルガンのことが書いてある作品や、またはその逆も(かなり台無しだが)見られる。ただし「ガウスガン」等とした場合は、レールガンとコイルガン双方を意味しているとも取れるため、混同していてもあながち間違いでは無いといえよう。
[編集] 原理・構造
- 注意!:金属製の弾丸を発射する装置の場合、銃刀法に抵触する恐れがあります。
この装置は、単純に言えば「電磁石の磁力で銃身内の弾丸を引き込んで加速する」というものである。このため弾丸は磁性体でなければならない(特に磁化してある必要は無い)。このため、弾丸が電磁石の位置にきたら電磁石を停止させなければならない。これを行わないと、弾丸を加速したのと同じ力で、弾丸は引き戻されるため、発射されない。
このため弾丸通過に併せて電磁石のスイッチを切断する機構を必要とする。また、コイルガンは複数のコイルを直列にする事で、弾丸を段階的に加速させることもできる(リニアモーターである)が、これも弾丸通過に併せて電磁石のON/OFFを制御する必要がある。
ストライカー型の場合はもう少し単純で、ストライカーが一定以上移動しない機構を備えていて、通電時にストライカーが目一杯弾丸を押し出す格好になるよう設計するだけでよい。またストライカーを利用する場合は、弾丸自身は非磁性体(プラスチックなど)でも構わない。
- なお現行の銃刀法では「 金属製弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃 (圧縮ガスを含む)」となっており、電磁投射方式に関しては特に規制が無いという法解釈もある。しかしいずれにせよ十分な威力を持つ物を制作した場合、殺傷力があると判断された時点で相応の扱いも予想されるため、威力を追及し過ぎるのは考え物であるといえよう。
[編集] 用途・可能性
電源が必須な上に構造的に銃器としては十分な初速が得がたいことから、殺傷力を持つ銃の機構には採用されておらず、遊戯銃の中にストライカーを使うタイプのものが無い訳では無いのだろうが、ほとんどみられない。マニア筋が実験的にその可能性を探ってはいるが、「少々物騒なおもちゃ」の域を出ないのが現状である。
ただし物体を一定速度に加速する事ができるため、これを大型化して真空チューブ列車の加速・減速用には利用できるかもしれないと考えられる。しかし真空チューブ列車自体が頓挫している現在となっては、これといって使い道が見られない。その一方でマスドライバーの動力としての利用も考えられる。
また超伝導物質でコイルが作れる場合は、クエンチ現象を起こすまではだが、電気抵抗を考慮しないで済む事から、より大きな磁力を得られると考えられるため、より大きな初速を得られるものと考えられている。
[編集] 歴史
このアイデアの原点には、1900年のクリスチャン・ビルケランドが取得した特許が上げられる。この特許は当時電気が時代の最先端技術であったために注目されたが、実際の兵器としては火薬を使用する銃に比べて実用に供しがたく、軍事方面の開発では、すぐに忘れ去られてしまったようだ。
アメリカ合衆国でもテキサス大学オースティン校で米国防総省の依頼により何年か研究していたようだ(→外部リンク)が、結局は最大初速でレールガンに及ばず、研究の継続は見送られた模様だ。
その後多くのマニア筋が実験を繰り返していたが、近年では使い捨てカメラの内部部品を流用(感電の恐れがあるので、とても勧められないが)して金属製の弾丸を発射したりしている。ただ実質的な威力では、よほど大掛かりな物を除けばパチンコにも及ばない模様だ。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ハンドレールガンの作りかた - スラッシュドット2003年12月09日の記事
- レールガンとは銘打っているが、実質的にコイルガンの作り方である。