ゲージ原理
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ゲージ原理(ゲージげんり)とは、物理法則はゲージ変換に対し不変である、という原理である。このことをゲージ不変である、と呼ぶ。また、それを満たす場の理論をゲージ場の理論と呼ぶ。
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[編集] ゲージ変換
「ゲージ(gauge)」とは、「物差し」のことである。「ゲージ原理」の「ゲージ」という考え方は、もともと座標を測る物差しの長さの尺度が変わっても、運動法則及び運動方程式が変わらないような理論を考え出すために生まれた。しかし、ゲージの意味も少しづつ変遷し、今では少し違う意味で使われている。
今のゲージ変換の基本は、座標変換を行うことによって非対称となる重力場等を取り扱うために、素粒子等の内部自由度の変換として定義されている。対称性によれば、重力も僅かながら斥力を持つ。これは、インフレーション理論における宇宙膨張の原動力になっている。
つまり、ゲージ変換とは、つねに素粒子等がゲージ場において対称性が満たされるように配慮された変換則であるといえる。
[編集] ゲージ場
1915年に発表された、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論の考え方が大成功を収めると。電磁場をも、それと同様の考え方で、時空(宇宙)の幾何学的属性を用いて表現しようという試みが、理論物理学者や数学者の間でブームになった。その第一号が1918年に発表されたH.ワイルのゲージ理論である。
H.ワイルのゲージ理論は、一般相対性理論と電磁場の統一理論を目指したものであった。しかし、量子力学が始まったことによって、自説を撤回した。しかし、その先駆的な業績は記憶されても良いであろう。
ゲージ場とは、前節でも触れたが相対論までをも加味したときには、移動の長さに伴う伸縮率を表すベクトルポテンシャルであると定義できる。つまり、宇宙の真空が持つエネルギーをベクトルポテンシャルで表現したものに他ならないわけである。このように考えれば、素粒子間における相互作用の説明もつくし、現在も研究が進められている格子ゲージ理論等を理解することが容易になる。
「ゲージ場から何が分かるのか?」についてであるが、ゲージ場を記述する方程式にはテンソルが含まれる。このテンソルは、物理量を表すものと考えることが出来るためである。なぜならば、ある物理量を無理やり特定の座標系(基底ベクトル)を用いて表したときの成分は、その選びかたに対応した変換を行うことで他の任意の座標系における成分として表すことが出来るためである。
注)宇宙の真空が持つベクトルポテンシャルに関しては、「物質が先か?エネルギーが先か?」の問題に行き着くことになる。ここでは、敢えてエネルギーが先であるという仮説を下にして記載した。
[編集] ゲージ不変性
ゲージ不変性には、大局的ゲージ不変性と局所的ゲージ不変性とがある。最初の節で説明したゲージ変換は、大局的ゲージ変換に相当する。大局的ゲージ不変性は、当たり前のことを示しているに過ぎない。なぜならば、本来物理法則の記述には座標系が不要だからである。このことは、一般相対性理論が示しているように、一般座標変換からも分かるからである。
局所的ゲージ不変性は、相互作用を示すものと考えられる。自然界における相互作用とは無関係に、単に数学的な対称性を勝手に要請することによって得られた結果、自然界の4つの力と呼ばれる相互作用から生じるベクトルポテンシャルを導きだすことが出来るためである。
[編集] 関連項目
- 物理学に関する記事の一覧
- 一般相対性理論
- 量子電磁力学
- 場の量子論
- ヤン・ミルズ理論(弱い相互作用の理論)
- ワインバーグ・サラム理論(電弱統一理論)
[編集] 参考文献
- 一般ゲージ場論序説, 内山龍雄, 岩波書店 1987
- 一般相対性理論入門, 須藤靖, 日本評論社 2005
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