カーチャ・エプシュタイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

カーチャ・エプシュタイン（Katja Ebstein, 1945年 3月9日 - ）は、ドイツの女性歌手。
本名、Karin Witkiewicz（カーリン・ヴィトゥキェヴィッチ）。

[編集] 出生からデビューまで

カーチャ・エプシュタインの母親は、1945年、出産間近でありながら、進軍する赤軍から逃れるためオーバーシュレージエンのケーニヒスヒュッテ（現在のポーランド・シレジア地域）から脱出しなければならなかった。逃走劇の真只中、現在のドルヌィ・シロンスク県ヴロツワフ近郊の小さな村ギルラックスドルフでカーチャ・エプシュタインは生まれた。

彼女は1960年代末から活動を始め、まずインステルブルク・ウント・コー、次いでジェームズ・ラストの伴奏歌手を務めた。また当時、レコード会社の勧めで、本名よりも解りやすい名前を芸名とした。この名は、彼女の家族が住んでいたベルリン＝ライニケンドルフの「エプシュタイン通り」に因んだものである。

[編集] ユーロビジョン・ソング・コンテスト

1970年代には、彼女のマネージャーでプロデューサー、現在のドイツ音楽著作権協会監事会長で名誉教授のクリスティアン・ブルーンと結婚。彼は彼女のために、ユーロビジョン・ソング・コンテストドイツ予選に向けて3つの曲を作曲した。

1970年の“ Wunder Gibt Es Immer Wieder ”〔奇跡は繰り返し起こる〕（彼女の最も有名な歌唱作品のひとつ）、1971年の“ Alle Menschen auf der Erde ”〔地上のすべての人〕、1975年の“ Ich liebe dich ”〔私はあなたを愛している〕がそれである。

1971年のユーロビジョン・ソング・コンテストのための作品“ Diese Welt ”〔この世界〕は、作曲がディーター・ツィンマーマン、作詞がフレッド・ジェイであった。1970年と1971年に彼女はこのコンテストで各々3位に入賞した。1980年のユーロビジョン・ソング・コンテスト（“ Theater ”〔劇場〕、ラルフ・ジーゲルとベルント・マイヌンガーの作）では2位に選ばれている。1986年には「ARDテレビ宝くじ」で、“ Mensch sag doch einfach "Na und" ”〔「だからどうした？」と言えばいい〕を歌唱した。

[編集] “ Wunder Gibt Es Immer Wieder ”

1970年 3月21日、オランダ・アムステルダムにて開催された1970年ユーロビジョン・ソング・コンテストにドイツ代表として出場。このとき歌唱した“ Wunder Gibt Es Immer Wieder ”（邦題：『愛のおとずれ』）が第3位に入賞し脚光を浴びる。

本作は日本でのデビュー曲とも成り、1970年 4月25日に東芝音楽工業株式会社（現：東芝EMI）、LIBERTY-レーベルよりEP盤（品番：LR-2504）が発売、B面には“Ich Will Ihn”〔あなたを慕って〕が収録された。同年10月5日には岡崎友紀がオリジナル・アルバム「花びらの涙」中で日本語詞によるカバーを発表している。（日本語詞：片桐和子／編曲：川口　真）

[編集] 歌手として

よく知られた作品や成功を収めた作品は、幾らでも列挙することができる。“ Stern von Mykonos ”〔ミコノスの星〕、“ Der Indiojunge aus Peru ”〔ペルーから来たインディオの少年〕、“ Abschied ist ein bisschen wie sterben ”〔ちょっとだけ死のような別れ〕、“ Dann heirat' doch dein Büro ”〔それじゃああなたは、あなたの会社と結婚すればいい〕、等々。“ Ich bin ein Berliner Kind ”〔私はベルリンの子〕は、彼女が現在住んでいる町の讃歌である。

世界的ヒット曲の独自のドイツ語バージョンも彼女は数多く歌唱しており、“ Beide Seiten ”〔両方の側〕（Both Sides Now〔今、両方の側〕）、“ Abendwind ”〔夕風〕（One Way Wind〔一方通行の風〕）、“ Wie sich Mühlen dreh'n im Wind ”〔風車が風の中で回るように〕（Windmills of your mind〔あなたの心の風車〕／邦題：『風のささやき』）などがそれに該当する。またカーチャ・エプシュタインは、ドイツ語以外の歌でも成功を収めている。1970年代には英語、フランス語、スペイン語の歌を数多く録音したが、これらの音源はCD化されておらず、現在では入手困難なレア物となっている。　“ Theater ”〔劇場〕は、イタリア語、フランス語、英語でも録音され、シングル・レコードが店頭に並んだ。