アングルド・デッキ
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アングルド・デッキ (Angled deck) は、航空母艦の最上段甲板の船首方向に対して斜めに配置された艦載機の着艦用飛行甲板で、アングルド・フライト・デッキ (Angled flight deck) とも表記する。着艦に際して、航空機の進路が艦の進行方向から斜めにずれる利点を持つことで、飛行甲板の中央部から前部で行われる発艦作業を妨害しなくなり、着艦のやり直しも容易になったため、安全性・運用効率が飛躍的に向上した。
また、本来の目的である発着艦の同時運用目的の他に、航空巡洋艦として巡洋艦の能力をある程度有したまま艦載機の運用能力を併せ持たせる目的で竣工された例(旧ソビエト海軍のキエフ級航空巡洋艦など)もある。
[編集] 開発の経緯
従来の直線式飛行甲板では発着艦機の進行方向が同一軸線上にあったため、発艦機と着艦機を同時に飛行甲板上で運用することは非常に危険が伴い、着艦時は甲板上から全ての機体や装備を格納する必要があったなど運用上でも制限を伴うものであった。 また、艦載機が着艦時に比較的低速であったレシプロ機から高速大型のジェット機に移り変わるにあたってアレスティング・フックを引っかけ損なう確率が増大するなど更に事故の可能性が高くなり、着艦を安全に行う方法が求められていた。 こうした状況の中でイギリス海軍のキャンベル大佐が斜め方向に着艦させることを発案し、試験が開始された。
1952年2月にイギリス海軍は空母トライアンフの飛行甲板に斜めのラインを引いて着艦実験を行い、成功した。これを受けてアメリカ海軍もミッドウェイで同様の試験を行い、タイコンデロガ級航空母艦の8番艦アンティータムを改装し、1952年9月に米海軍初のアングルド・デッキを装備した空母が生まれた。
その後遅れてイギリス海軍もアーク・ロイヤルで装備し、以後の正規空母ではごく当たり前の装備となった。