きけわだつみのこえ
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『きけわだつみのこえ』は第二次世界大戦、この場合十五年戦争で戦没した学徒兵の遺書を集めたもの。1947年に出版された東京大学戦没学徒兵の手記集『はるかなる山河に』に続いて、1949年に出版された。BC級戦犯として死刑に処された学徒兵の遺書も掲載されている。
同タイトルの映画が何本か製作されている。
目次 |
[編集] 評価
『きけわだつみのこえ』は、若い戦没者に人間としての光を当てただけでなく特に学徒兵の多くは己の学業が心ならずも頓挫し、自分が異常な状況に置かれていることを深く見つめた内容を記述しており、本来であれば平和に生きていたはずの若者が、免れようのない死と直に向き合ったとき、どのように感じるのか、ということを伝えてくる。十五年戦争下の軍国主義的潮流下【戦陣訓】世代などと評されていた世代の評価を覆すものとして大きな衝撃を与えた。
[編集] 批判
[編集] 戦前の軍国主義のスタンスを批判する立場からの批判
戦争の被害者としての若い世代ということを強調しようということから、軍国主義的内容に共感を覚えたり、国家への絶対的な忠誠を誓う文章については、初版本において、編集側の方針で削除されていた。こうした文章の改編に対しては、そうした文章を削除すると軍国主義的内容への共感や国家への絶対的な忠誠を誓うようになった背景を知る手がかりがわからなくなり、すべてを客観的事実として掲載するべきであるとの批判があった。
[編集] 上記以外のスタンスからの批判
また、立花隆も『天皇と東大』(文藝春秋)でこれを左側からの「歴史の改竄」であると批判した。富岡幸一郎も『新大東亜戦争肯定論』にて「遺された言葉が、戦後の反戦平和運動のスローガンに利用された」と述べている。
このほか、『きけわだつみのこえ』は、当時ごく少数であった高等教育を受けたインテリの文章を集めたものであり、人間本来の死ではなく、インテリの死だけを美化したのではないかとの意見や、インテリと教育を受けていない一般民衆との間には価値観の違いがあり、一般民衆の戦争観の視点に編集側が欠けているのではないかとの批判がある。
本書の内容への批判のほかにも、遺書が遺族に返還されなかったことなどには大きな批判がある(これについては、改竄が暴露されるのを防ぐためであったとする説がある)。
[編集] 名前の由来
学徒兵の遺稿を出版する際に、全国から書名を公募し、応募のあった約2千通の中から京都府在住の藤谷多喜雄のものが採用された。藤谷氏のそもそもの応募作は「はてしなきわだつみ」であったが、それに添えて応募用紙に「なげけるか いかれるか/はたもだせるか/きけ はてしなきわだつみのこえ」という短歌を添付した。なお、この詩は同書の巻頭に記載されている。
現在「わだつみ」は戦没学生をあらわす普通名詞のように使われる。「わたつみ(わだつみ)」は海神を意味する日本の古語である。
[編集] 出版
- 『新編 きけわだつみのこえ―日本戦没学生の手記』(岩波文庫、日本戦没学生記念会編、ISBN 4003315715)
- 『きけわだつみのこえ―日本戦没学生の手記<第二集>』(岩波文庫、日本戦没学生記念会編、ISBN 4003315723)
[編集] 参考
- 「『きけわだつみのこえ』の戦後史」(文春文庫、保阪正康著)
[編集] 外部リンク
- 日本戦没学生記念会(わだつみ会)
- Listen to the Voices from the Sea: Writings of the Fallen Japanese Students(Kike Wadatsumi no Koe)ブックレビュー(英語)
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