Skype
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Skype(スカイプ)は、ルクセンブルクのSkype Technologies社のインターネット電話の無料ソフトウェアである。
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[編集] 概要
インターネット電話のデファクトスタンダードとみなされているソフト(2006年5月現在)。開発者はP2Pファイル交換ソフトKaZaAの共同開発者であるニコラス・センストロムとヤヌス・フリス。
Windows2000・XP、Linux、Mac OS X、PocketPC(Windows CE)用のソフトが存在する。
P2P(peer-to-peer)技術を利用しており、比較的低速な回線でも高音質で安定した通話を実現できることを特徴としている。一般の電話との相互通話を実現する機能(国によって制限がある)や、Windows版、Mac版ではビデオチャット機能も備えるなど、機能も豊富である。(ビデオチャット機能はVer.2.0以降のみ対応)
日本語版のソフトウェア自体はSkype社の公式サイトからも入手可能だが、日本国内においては、ライブドアとバッファローが提携企業としてソフトウェアを配布するとともに、独自の関連商品を発売している。また、2006年夏からは、日本国内で発売されるNEC社製の全ての個人向けパーソナルコンピュータにSkypeが標準搭載される予定である。
[編集] 特徴
特徴として次の点があげられる。
- Skypeユーザー間で、無制限の無料音声通信が可能。
- 複雑な設定無しに、一般的なファイアーウォール/NAT(Network Address Translation)内からでも通信が可能。
- end to end のセキュアな暗号化通信が可能。アクセス毎に認証キーが変わるために通信解析がほぼ不可能。
- スパイウェアや広告無し。
- 一般電話より高音質な通信も可能。
- APIが公開されており、外部の開発者がSkypeの機能を盛り込んだソフトを開発可能。
相手がオンラインかどうか確かめる機能や、最大5人までの同時通話が出来る電話会議機能も実装されている。また、インスタントメッセンジャーの機能もある。
[編集] 必要環境
- インターネット接続 : 33.6kbps以上のモデムによるダイヤルアップ接続(ADSL・120kbps程度あることが望ましい)
- サウンドカード、スピーカー・マイクロフォン(ヘッドセット推奨)
- Windows 2000・XPの場合、400MHz 以上のCPU・128MB以上のRAM・10MB以上の空き容量のあるハードディスクドライブ
Skypeを利用するためのヘッドセット、USB接続のハンドセットやスピーカーがSkype認定製品として内外のメーカーから発売されている。Bluetooth用やコードレスハンドセットなどの製品も発売されている。
[編集] 対応言語
2006年1月現在の対応言語。もちろん、電話での会話はどんな言語でも相手が理解してくれれば通話可能である。
- イタリア語
- 英語
- エストニア語
- オランダ語
- 韓国語
- ギリシャ語
- スウェーデン語
- スペイン語
- 中国語(簡体字)
- 中国語(繁体字)
- デンマーク語
- ドイツ語
- 日本語
- フィンランド語
- フランス語
- ヘブライ語
- ポーランド語
- ポルトガル語(ブラジル)
- ポルトガル語(ポルトガル)
- ルーマニア語
- ロシア語
[編集] Skypeの有料サービス
Skype Store のWebサイトで料金を前払いすることで利用できる。この収入と、ヘッドセットの販売により、会社が運営されている。
[編集] SkypeOut
世界各地域の固定電話・携帯電話などへの格安通話サービスである。通話履歴の閲覧も可能である。
提携電話会社にゲートウェイを設置することで提供している。提携電話会社の加入者とは特に格安な通話が可能である。
2004年のSkype 0.98βから実装された(正式には初の正式版であるSkype 1.0から)。
[編集] SkypeIn
米・英・独・仏・香港・日・エストニア・スイス・スウェーデン・フィンランド・デンマーク・ブラジルの電話番号が割り当てられる、一般の電話からの着信サービス。Skype所有のサーバでVoicemail機能を含む留守番電話機能を提供している。
2005年のSkype 1.2から実装された。
[編集] Skypeボイスメール
Skype所有のサーバで音声メッセージを預かるサービス。いわゆる留守番電話サービスである。
2005年のSkype 1.2から実装された。
[編集] 技術
音声符号化にGIPS(Global IP Sounds)を使用し、バッファの最適化による高音質化が図られている。
通話の流れは次のようになる。
- Skypeをダウンロードすると、Skypeサーバーに登録され、デジタル証明書が発行される。
- 次にログインしたときには、ログインしているノードのリストのサーバーであるスーパーノードに接続される。
- ノードのIPアドレスをスーパーノードから取得し、ノード同士で直接通信が可能となる。
- ファイアウォールの内側からの通信の場合、常にパケットを送信している。また、両方がファイアウォールの内側にいるときは、グローバル・アドレスを持つ第三者のマシンで中継する。
このことにより、複雑な設定無しの通信を可能にしている。
スーパーノードには、第三者のパーソナルコンピュータを利用している。ログインしているノードのリストを常に更新するために、次のようなものの中から自動で選ばれる。
- グローバル・アドレスを持つ。
- 高速回線で接続されている。
- CPU性能が高く、RAMの容量が多い。
- Skypeの使用時間が長い。
スーパーノードに割り当てられるパーソナルコンピュータは随時変更されていき、スーパーノードの負荷が高まった場合は新たに他のコンピュータに対してもスーパーノードが追加割り当てされる仕組みになっている。
このような仕組みでサーバ機能を分散化し、段階的なネットワークの拡張、障害の局在化が図られている。Skype社にとっては低コスト化の意味もあり、自社で持っているサーバはソフトウェア配布用の数台のみである。
[編集] 利用者の姿
2005年10月にユーザー有志による調査グループSRコンサルティングによりSkypeユーザーおよそ400万人分のユーザープロファイルの解析調査が行われた。これらの調査結果はMathaba.netとSkype Journalに掲載されており、以下のごとくなっている。
- 平均年齢: 29.7歳
- 全ユーザーの46%はヨーロッパに住んでいる。しかし、最も多くのSkypeユーザーを抱えている国はブラジルと中国(台湾を除く)であり、全Skypeユーザーの内の8.1%をそれぞれ占めている。なお、日本は全体の4.3%を占め、アメリカ合衆国(7.0%)、台湾(5.8%)、フランス(5.3%)、ドイツ(5.0%)、ポーランド(4.5%)に次ぎ、国別のユーザー数で8番目となっている。
- 半数以上のユーザーはプロフィール内で性別を明らかにしていないため、性別の内訳などについては判然としない。
[編集] Skypeに警戒する国々
国によっては、様々な事情により、Skypeの利用に幾つかの制限を設ける動きがある。これらは、主に経済的な事情や国家・企業の防衛的な目的によるものである。
[編集] フランス
2005年9月、フランスの研究省は同国国防省の要請を受け入れ、国内の公共の研究機関及び高等教育機関におけるSkypeの使用を禁止する旨の通達を発した。幾つかの機関はこれを公式な禁止令と受け取っている。詳細な理由については明かされていないが、コンピュータセキュリティの専門家らは以下のような見解を述べている。
- Skypeのソースコードは明らかにされておらず、また法律によりリバースエンジニアリングが禁止されているため、安全性を確認することができない。
- SkypeのP2Pシステムは、より速いシステムにスーパーノードという負荷の高い役目を割り当てる仕組みとなっている。各研究施設は非常に速い回線と高性能なコンピュータ複数台を有しているのが常であり、それらの研究所がSkypeを利用することは、すなわち負荷の高いスーパーノードの役目を割り振られる確率が高く、ひいてはネットワークやコンピュータの処理速度に大きな負荷を背負うリスクが高い。実際、いくつかの研究機関のネットワークシステムはSkypeを利用していたことによってダウン寸前まで追いつめられたことがある。
- Skypeが実装している情報伝達の仕組みには未知の部分が多く、暗号化はされているにしても、トラフィックがどういう経路を通るかは不明であり、無用のリスクを生じさせる恐れが少なくない。
つまるところ、Skypeは研究機関にとってセキュリティホールとなる恐れがある、と、みなされたのではないか、というものである。しかしながら、真相は定かではない。
[編集] アメリカ合衆国
2006年現在まで、規制などは特に行われていない。
しかしながら、Skypeを含めIP電話は通信傍受法(CALEA)で対象とされている「コンピュータ通信」に該当し得ると思われるが、盗聴が困難であるため、犯罪者、特にテロリストなどの通信手段として利用されることに懸念がもたれており、今後、なんらかの対策が施される可能性が示唆されている。
[編集] 中国
2005年9月、中国政府によりSkypeOutが禁止された。理由は明らかにされていないが、これはSkypeOutによって同国の中国電信集団公司(China Telecom)をはじめ、国際電話などの長距離電話事業が打撃を被ることを嫌ったためであるとみられている。基本的に規制理由はそうした経済政策的なものだとみられているが、中国では中国政府に悪意となる海外からの情報を厳しく制限しており、中国政府側がSkypeを盗聴できない為だという理由も考えられなくはない(中国のネット検閲および金盾を参照)。中国本土、とりわけ深圳において、SkypeOutの利用が制限されており、違反者には罰金が課される。また中国国内版Skypeには検閲機能が内蔵されていることが明らかになっている。(参考: Skype、中国でのIM検閲を認める {2006年4月20日})
[編集] その他の国々
メキシコ、パナマで国営の電話事業者への収入を阻害するとして、Skype公式サイトへの接続がブロックされている。ソフトウェアとIDさえあればSkype自体の利用は可能であるため、海外からソフトウェアとIDをメールを通じて「密輸」するビジネスも存在する。このほか、コスタリカでも同様の理由からSkypeを規制する動きがある。
その他の地域では、アラブ首長国連邦がSkype公式サイトへの接続をブロック、ミャンマーではソフトウェアに規制がかかりログインが不可能となり、バーレーン、カタールなど他の国々でもSkypeの使用が制限、もしくは将来的に制限する動きがある。これらの国々の多くは電話会社が国営であり、理由としてはおしなべてその減収が国庫に与える損失を嫌ったものである。多くのケースでは最も普及しているSkypeにさしあたりの規制の網がかけられているが、Skype以外のIP電話に対して同様の規制をかけるケースもある。
[編集] トラフィック増大に対する懸念・批判
- ネットワークインフラただ乗り論争をあわせて参照のこと
Skypeは、GyaOなどの動画配信サービスとあわせ、インフラに対して対価を支払うことなくインターネット上でトラフィック(帯域)を占有し事業を展開していることをNTTをはじめとするインフラ事業者から問題視されており、インフラ事業者に対して対価を支払うべきではないか、と、批判を浴びている。特にSkypeについては、2006年1月にNTTの社長が特に名を挙げて懸念を示している。(参考: ネットワーク・インフラ“ただ乗り論”再燃,NTT和田社長が懸念 {2006年1月18日})
批判がある一方で反論も多く、この「インフラただ乗り論争」全般についての結論は出ていない。
Skypeについては、同様に批判が行われている動画配信などの数十Mbpsから数Mbps単位で帯域を使用するサービスに比べ、少なくとも現状のプログラムでは、ビデオ通話機能を利用した場合の通話時でも一時的に数百Kbps単位で帯域を使用するサービスに過ぎず、利用者数の差を勘案してなお、通信量は微々たるものであり、批判するに値しないのではないか、という声も少なくない。(参考:「インフラただ乗り論」は論理的に間違っている)
また、先に述べたようにSkypeは長距離電話事業を抱える各国の電話事業社から収益面に打撃を与える脅威とみなされており、国内の都道府県間通信や国際電話といった長距離通信事業を収益源とするNTTコミュニケーションズを傘下に抱えるNTTによるSkype批判は、日本における同様の事例とみなす向きもある。
[編集] Wi-Fi Phone for Skype
Skypeを利用するにあたって携帯端末向けのシステムが幾つか発表されている。モトローラは初期からSkype社といわゆる「Skype携帯」の共同開発にあたっており、Wi-Fiを利用したSkype携帯電話CN620 Wi-Fiを発売すると発表されている(時期は未定)。日本においても、ウィルコムが開発した多機能PHS、W-ZERO3のSkype対応などが注目を集めた。
2006年9月には日本でSkype専用携帯端末がロジテックより販売された。
[編集] 歴史
- 各Skypeは特に注意がない限り、Windows版である。特に重要と思われる版についてはボールドとなっている。
- 2003年
- 2004年
- 6月 Skype 0.98β(ver.0.98.0.28)がベータリリースされる。SkypeOutを初めて搭載。
- 7月 Windows版でSkype 1.0がリリースされた。
- 10月 日本国内においてライブドアにより「livedoor-Skype for Windows」ソフトウェアが配布開始された。
- 10月20日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に100万人を超えた。
- 2005年
- 1月 日本国内においてバッファローにより「BUFFALO-Skype for Windows」ソフトウェアが配布開始された。
- 2月 Skype 1.2(1.2.0.37)を正式リリース。SkypeInとボイスメールに対応した(SkypeInは3月よりパブリックβテスト開始)。
- 2月14日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に200万人を超えた。
- 3月18日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に300万人を超えた。
- 8月 Skype 1.4β(1.4.0.35)をリリース。音質や応答品質がさらに改善された。
- 10月20日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に400万人を超えた。
- 9月12日 eBayがSkypeの買収を発表(同年10月にeBayによる買収が完了)。
- 11月 NECが2006年夏以降に日本国内で出荷する全ての個人向けPCにSkypeを標準搭載することを発表した。
- 2006年
- 1月 Skype 2.0(ver.2.0.0.79)を正式リリース。ビデオチャットに対応した。
- 1月20日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に500万人を超えた。
- 2月 フュージョンがSkypeで「050」着信を可能にする「SkypeIn」を日本国内提供を開始。
- 3月27日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に600万人を超えた。
- 5月 Skype 2.5β(ver.2.5.0.72)をリリース。Skypecastに対応した。
- 5月 Skypeパートナーズ・コミュニティー日本を設立。
- 8月29日 「オンラインのユーザ」の数が初めて瞬間的に700万人を超えた。
- 9月 Skype for Mac 2.0β(ver.2.0.0.2)をリリース。Mac版として初めてビデオチャットに対応した。
- 12月 Skype 3.0(ver.3.0.0.190)を正式リリース。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
[編集] 公式サイト
[編集] 利用者によるサイト
- ja Skype News(スカイプ・ニュース)
- ja Skype.STreet - Skypeユーザーのコミュニティーサイト
- ja Skype Wiki from 2ch
- ja Skypeやろうぜ
- ja スカイプナビ「無料通話ソフト:スカイプ情報」
- en SAM - Answering Machine for Skype? users - Skypeに留守電機能を持たせるソフト
- en Pamela? - Voice and Text messaging system for Skype? - SAMにテキスト&ボイス留守録機能を持たせるソフト