界磁添加励磁制御
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界磁添加励磁制御(かいじてんかれいじせいぎょ)とは、直巻整流子電動機を使用しながら、界磁制御用電源を別に設けて界磁電流制御による回生ブレーキを行う鉄道車両の速度制御方式である。
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[編集] 説明
当時の日本国有鉄道が次世代近郊形車両(211系)向けに開発したものである(ただし実際には1985年の205系への採用が先となった)。出現当時では導入コストが比較的安価であったため、国鉄末期からJR初期にかけての新製電車に多用されたが、他私鉄での採用は改造を含めごく少数に留まっている。これは、他私鉄では以前より各種チョッパ制御を相当数用いていたことに加え、国鉄~JRに先んじてVVVFインバータ制御の採用の機運が高かったためと思われる。
[編集] 方式の概要
- 抵抗制御で起動する。
- その後、誘導分流器を接続し、外部三相交流(電動発電機や静止形電源装置)電源の位相制御による添加励磁制御により、電機子の逆起電力の大きさを変え速度制御を行う。
- 加速時は、弱界磁制御を行う。
- 減速時は、界磁を強め電機子の逆起電力を大きくし、回生制動を行う。
三相交流の補助電源が必要であるが、位相制御用の半導体素子は小容量でよく、直巻電動機が使えるため過渡特性が良い。始動抵抗の使用時間の少ない用途に適する。
電機子チョッパ制御は半導体素子の容量が大きくなり制御装置が高価、界磁チョッパ制御は複巻整流子電動機が架線電圧の急変に弱い、部品の消耗が早いという欠点がある。この欠点を克服するべく開発されたのが界磁添加励磁制御である。
[編集] 利点と欠点
- 利点
- 電機子チョッパ制御に比べ、装置が小型で済む。
- 減速時の界磁を強めるとき、本方式は補助電源によって界磁電流を制御しているため、架線電圧に左右されず安定した制動力が得られる。つまり、回生失効が起きにくい。直巻電動機を使用可能な事もそれに寄与している。
- 回生制動が使用できる。
- 主電動機・台車など抵抗制御の車両から流用できる部品が多く、安価で改造が可能である。
- 欠点
- 界磁チョッパ制御と同様、抵抗制御の発展型のため、40km/hの並列最終段まではカム軸制御を行うため、回路切り替えによる衝動が発生する。
- 従来と変わらず直流電動機を使用するため、保守上の弱点となるブラシが依然として残る。
[編集] 使用例
- 205系電車(→JR東日本、JR西日本)
- 211系電車(→JR東日本、JR東海、JR西日本)
- 213系電車(→JR西日本、JR東海)
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- 東海旅客鉄道(JR東海)
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)
- 帝都高速度交通営団→東京地下鉄
- 5000系電車(改造)
- 1000形電車(営団5000系電車改造)
- 100系電車(100系200番台車のみ(200系は除く))
- 1800系・1850系電車(1800系のみ)
- 5300系電車(動力装置転用時に改造)
- 6800系電車
- 2000系電車(改造)
[編集] 関連項目
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