A-6 (攻撃機)
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A6 イントルーダー
A-6(愛称 イントルーダー)は、アメリカ海軍と海兵隊が1963年から1997年までの34年間運用した艦上攻撃機。ベトナム戦争や湾岸戦争等、その間に発生した、アメリカ海軍の空母 艦載機が何らかの形で関わった殆どの戦争や紛争に参加した。
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[編集] 概要
多量の爆弾などを搭載し、全天候運用・精密攻撃ができる攻撃機として、開発された。乗員は2名で、サイドバイサイドの座席配置のため、機体前部が丸く大きくなっている。主翼は中翼であり、エンジンは胴体下部にターボジェットエンジンを2基搭載している。艦上機であるため、主翼の折り畳みが可能。
[編集] 開発経緯
アメリカ海軍が朝鮮戦争における空母艦載機の運用実績から、全天候での低空侵攻能力と精密攻撃能力を持つ機体の必要性を認識し、1957年3月にアメリカ国内の航空機メーカーに開発が可能かの打診を行い、回答が有った中からグラマン社が提案したG-128を採用した。原型機は1960年4月19日に初飛行している。
[編集] 運用
1963年より初期型のA型が部隊配備された。1965年よりベトナム戦争に参加している。本機は、全天候運用・精密攻撃のために複雑な電子機器を搭載しており、実戦環境においては、搭載機器の稼働率が低く、問題となった。しかし1966年の年末に気象条件の問題で、唯一作戦行動可能な艦載機となり海軍の評価を改めさせたことが、改良型のA-6Eの開発へ繋がった。
厚木基地に展開していたVA-115所属のNF500(CAG)は、96年に行われたRIMPACに参加、標的を曳航しながら飛行していたが、不運にも海上自衛隊の護衛艦「ゆうぎり」に実弾で撃墜される事件が起こった。その後、本国へ帰還し、他のA-6を運用していた飛行隊同様、F/A-18Cへ機種転換した。現在ではF/A-18Eを運用している。
[編集] バリエーション
- A-6A(A2F)- 初期生産型
- EA-6A(A2F-1Q) - (EA-6の英語版記事)A-6Aを改修した電子戦機
- A-6B - A-6Aを改修した防空制圧(Iron Hand)型
- A-6C - A-6Aを改修し、赤外線センサーと光学式カメラを搭載した形式、ホーチミン・ルートへの攻撃に投入されたが大きな戦果を挙げる事は出来なかった。1972年に一部の機体が誘導爆弾用のレーザー照射機に改修された。
- KA-6D - A-6Aを改修した空中給油機
- A-6E - A-6Aのアップグレード型。新造機と在来型の改修機が存在する。新造機には、生産の途中から、機首下部にTRAMと呼ばれる目標探知攻撃複合センサーが装備されるようになった。
- A-6E SWIP - A-6Eの近代化改修型、AGM-65及びAGM-84、AGM-88の運用能力を与えられた。
- A-6E SWIP/コンポデジット - 上記改修と平行して主翼をボーイングが製造したグラスファイバー製の物へ交換した機体
- A-6E SWIPブロック1A - 上記改修に加え航法機器を近代化した機体。
- A-6F - A-6Eのアップグレード型として開発されていた形式、電子機器の更新およびエンジンを新型のF-404に更新するものであった。初号機が1987年8月26日初飛行。A-6の更新用に開発されていたA-12アベンジャーIIと同様に、資金面の問題から開発中止。
- A-6G - A-6Eの簡易アップグレード型、エンジンを更新せず、電子機器のみ更新。計画のみ。
- EA-6B プラウラー - EA-6Aのコクピットを大型化し、乗員数を増やした電子戦機。海軍が保有する機体はF/A-18の電子戦型であるEA-18G(ベースになるのは、「スーパーホーネット」の複座型であるFA-18F)、海兵隊が保有する機体はF-35の電子戦型、海軍と海兵隊、空軍との統合運用部隊で運用されている機体はB-52の改修型が後継となる予定(2005年現在)
[編集] 要目(A-6E)
出典: Quest for Performance[1]
諸元
- 乗員: 2名(パイロット・爆撃手/ナビゲーター)
- 全長: 16.6 m (54 ft 7 in)
- 全高: 4.75 m (15 ft 7 in)
- 翼幅: 16.2 m (53 ft)
- 翼面積: 49.1 m2 (529 ft2)
- 翼型: NACA 64A009 mod root, NACA 64A005.9 tip
- 空虚重量: 11,630 kg (25,630 lb)
- 有効搭載量: 15,870 kg (34,996 lb)
- 最大離陸重量: 27,500 kg (60,626 lb, catapult:58,600 lb)
- 動力: プラット&ホイットニー J52-P8B ターボジェットエンジン, 41.4 kN (9,300 lbf) × 2
- 零揚抗力係数(Zero-lift drag coefficient): 0.0144
- 抗力面積: 7.64 ft2 (0.71 m2)
- 翼面アスペクト比: 5.31
性能
- 最大速度: 648 mph, 1,040 km/h (563 kt)
- 航続距離: 3,245 mi, 5,222 km (2,819 海里)
- 実用上昇限度: 12,400 m (40,600 ft)
- 上昇率: 38.7 m/s (7,620 ft/s)
- 揚抗力比(Lift-to-drag ratio): 15.2
武装
- 武装:5箇所のハードポイントへ均一に8,170 kg(18,000 lb)
- ロケット・ポッド
- 爆弾
- Mk-20 ロックアイ
- Mk-77 ナパーム
- Mk-81 113 kg(250 lb), Mark 82 スネークアイ, Mark 83 454 kg(1,000 lb), Mk-84 907 kg(2,000 lb), Mk-117 340 kg(750 lb) 爆弾
- CBU-78 ゲーター 誘導爆弾
- GBU-10E, GBU-12D, GBU-16B ペイヴウェイ II レーザー誘導爆弾
- AGM-62 ウォールアイ誘導爆弾
- B-61 特殊核爆弾
- ミサイル
- AIM-9 サイドワインダー 対空ミサイル
- AIM-120A AMRAAM 対空ミサイル
- AGM-84D, AGM-84E ハープーン 対艦ミサイル
- AGM-123 スキッパー
- AGM-123A スキッパー II
- AGM-45 シェライク 対レーダーミサイル
- AGM-88 HARM 対レーダーミサイル
- AGM-65 マーヴェリック 対地ミサイル
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[編集] 脚注
- ↑ Quest for Performance : The Evolution of Modern Aircraft , United States Government Printing, 1985年, ISBN 9997398939
[編集] A-6が登場する作品
- 「デビル500応答せず」(ベトナム戦争を舞台とした、A-6のパイロットたちの戦闘と友情を描いた小説。著者は、ベトナム戦争時に実際にA-6の搭乗員であったスティーブン・クーンツ)
- 「イントルーダー 怒りの翼」(上記の「デビル500応答せず」の映画化作品。監督:ジョン・ミリアス)
- なお、上記の2作品の原題は、いずれも、”Flight of The Intruder”である。