S-3 (航空機)
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S-3はアメリカ合衆国の航空機メーカー・ロッキード社(現・ロッキード・マーチン社)が開発した空母搭載対潜哨戒機。愛称はヴァイキング(Viking)。S-3Aと改良型のS-3Bがあり、後者は前者よりも優れた計器や兵器システムを搭載している。
S-2トラッカーの後継として開発され、1969年にロッキード社が製造契約を獲得したが、ロッキード社は艦上機の経験が浅かったためF-8クルセーダーやA-7コルセアⅡなどで艦上機の経験が深かったヴォート社(LTV社)を従契約社として開発が行われた。その為、実際の開発/生産はヴォート社が主体となって行なわれ、主契約社のロッキード社は胴体の製造と航空電子システムの統合、最終組立を行ったにすぎない。
航空母艦という限られたスペースに搭載する機体の為、主翼や尾翼は大きく折り畳むことができ、MAD(磁気異常探知)センサーのセンサーブームは胴体内引き込み式になっている。 胴体内の兵装庫に魚雷や爆雷を搭載できる他、翼下のパイロンにも対艦ミサイルや対地、対潜用の各種爆弾を搭載でき、増加燃料タンクの他に”バディシステム”と呼ばれる空中給油装置を搭載しての空中給油能力を持つ。派生型としてSIGINT(無線情報収集)機型のES-3A、艦上輸送機型のUS-3Aがある(両型とも現在は退役済)。
掃除機の吸出し音のようなエンジン音から、フーバーのあだ名がついている。
S-3Aは1974年から部隊配備が開始され、1975年以降S-2トラッカーの後継として配備が行われた。1978年8月に配備を完了している。また、16機のS-3Aが電子戦に対応するためにES-3に改装された。2009年までに全機退役予定。
2003年5月1日、カリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に浮かぶ空母エイブラハム・リンカーンをジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領が訪問する際に、乗機として第35対潜飛行隊(VS-35)のS-3が使用され、この機はアメリカ海軍史上初めて大統領座乗機に付与される”ネイビーワン”のコールサインで呼ばれたアメリカ海軍航空隊機となった。
[編集] 主要諸元
- 乗員:4名
- 全長:16m
- 全幅:20.6m
- 全高:6.9m
- 最大離陸重量:23,831kg
- 最高速度:830km/h
- 航続距離:4260km以上
- 最大高度:12,200m
- 原形機初飛行:1972年1月21日
- 武装:AGM-84 ハープーン、Mk. 46対潜魚雷、Mk.54/60対潜爆雷、機雷、各種爆弾、ロケット弾