谷間世代
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谷間世代(たにませだい)あるいは谷間の世代とは、人間のある世代に関する統計値が前後の世代に対して低下傾向を示す(グラフを描くと谷のように見える)ような場合に、当該の世代を指して用いられる用語である。
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[編集] 人口における谷間
出生率の変動に伴って、ある世代の人口が前後に比べて減少することがある。
例として、日本の人口を世代別に集計しグラフ化すると、1940年代後半生まれのいわゆる団塊の世代の後、1950年代生まれに人口の落ち込みが見られる。人口はその後いわゆる第二次ベビーブーム(団塊ジュニア)世代に向けて漸増していくため、この年代が谷間を形成している。このことから、しばしばこの年代が谷間世代と称されることがある。
1966年生まれのいわゆる丙午も谷を描くが、これは特定の1年に限定したものであり、世代と呼ばれることはほとんどない。
[編集] 制度上の谷間
制度変更などが原因で、ある世代に行政サービスの欠落が生じることがあり、こうした状況に置かれた世代を谷間世代と呼ぶことがある。
例として、日本の予防接種法が1994年に改正されたことが挙げられる。これ以前は女子のみが中学校期において風疹の集団予防接種を受けることになっていたが、改正後は男女とも1歳~7歳半の間までに定期接種する方法に変更された。このため、1979年~1987年生まれの世代は風疹の予防接種を受けていない可能性が高い。医療関係者の間ではこの世代が谷間世代(あるいは空白世代)と呼ばれ、特にこの年代の女性が結婚・出産時期に入る2000年以降、妊娠時の風疹感染による胎児への影響などが懸念されるようになった。
また、介護保険制度においても、要介護に相当する状況でありながら制度上65歳になるまで介護認定を受けられない谷間世代が発生し、問題とされた。
[編集] スポーツにおける谷間
スポーツに関するメディアで広く用いられる谷間世代という言葉は、主にその前後の世代に属する選手に対して目だった実績を挙げていない世代の選手層を指して用いることが多い。
例として、サッカー日本代表における1981年~1982年生まれの世代が挙げられる。この年代はFIFA U-17世界選手権への出場権を獲得できなかったため(その前後に比べて)若年期の国際経験に乏しく、当初は選手育成・強化における谷間という意味で「谷間の世代」と呼ばれた。しかし、彼らの上である1979年~1980年生まれのいわゆる黄金世代が華々しい実績を挙げたのに対して、彼らの世代が主軸となったワールドユース、アテネオリンピックではいずれもグループリーグ敗退に終わってしまった。さらに、期待されたドイツワールドカップ日本代表への選出も、黄金世代の壁を崩すことができず、駒野友一ただ1人の選出に留まった(その後茂庭照幸が追加選出)。こうしたことから、実績の面でも谷間世代という評価を払拭するには至っていない。ただし、実際にはこの年代でも松井大輔や阿部勇樹、田中達也、今野泰幸など、実力を評価される選手は多い。このため、結果的に実績が谷間を示すのは日本サッカー協会の強化方針や代表選出法などに問題があったためだとする意見が少なくない。このように世間からもレベルが低いと称されてきた世代ではあるが、そんな中でも1987年以降に生まれた代表選手たちは、2006年のAFCユース選手権準優勝・AFC U-17選手権優勝を成し遂げたことで、谷間から這い上がる兆しも見え始めている。