谷
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谷(たに、渓、谿とも表記)とは、山や丘、尾根、山脈に挟まれた、周囲より標高の低い箇所が細長く溝状に伸びた地形のことである。
また、この地形から転訛した「谷」「谷戸」「谷津」「谷地」と表し「や、やと、やつ、やち」などと読む地形および地名については後段で詳説する。
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[編集] 地形
成因により、河川や氷河の浸食によってできた浸食谷と、断層や褶曲によってできた構造谷とに分けられる。よく見られる谷は、河川の浸食による浸食谷である。
山脈に沿って流れる谷を縦谷(じゅうこく)、山脈を横切る谷を横谷(おうこく)という。横谷のうち、元々川が流れていた平地の一部が隆起して川を横切るように山脈が形成されるときに、隆起の速度よりも谷の下刻が速い場合に形成されたものを先行谷(せんこうこく)という。吉野川が四国山地を横切る箇所にある大歩危・小歩危が代表的である。隆起の速度の方が速いと谷は切断される。
また、谷の断面の形状によりV字谷・U字谷・鋸挽谷・峡谷・階層谷(キャニオン)・谷床・箱状谷などに分類される。
[編集] 日本の主な渓谷
- 北海道
- 定山渓・愛山渓・恵庭渓谷・福山渓谷・五色渓谷・十梨別渓谷・南札内渓谷など
- 東北地方
- 奥入瀬渓流・赤石渓流・城ヶ倉渓谷・目屋渓・薬研渓流・川内川渓流(青森県)
- 厳美渓・猊鼻渓・重湍渓(ちょうたん-)・久慈渓流・安家渓谷・長内渓流・葛根田渓谷・葛丸渓谷・尿前渓谷など(岩手県)
- 碧玉渓・浅生渓谷・牛渕渓谷・竜ノ口渓谷など(宮城県)
- 抱返渓谷・湯瀬渓谷・真瀬渓谷・立又渓谷・萩形渓谷(はぎなり-)・仁別渓谷・真木渓谷・臼内渓谷・三途川渓谷など(秋田県)
- 仙人沢・赤倉渓谷・瀬見渓谷・紅葉川渓谷・大平渓谷・玉川渓谷・野川渓谷・土内渓谷など(山形県)
- 夏井川渓谷、中津川渓谷・真野川渓谷・高瀬川渓谷・楽翁渓・木戸川渓谷・浅見川渓谷・四時川渓谷・三ツ森渓谷・湯川渓谷・勢至堂渓谷・鱒沢渓谷など(福島県)
- 関東地方
- 花貫渓谷(茨城県)
- 日光華厳之渓谷・雲竜渓谷・鬼怒川渓谷・塩原渓谷・松木渓谷・庚申渓谷・大芦渓谷など(栃木県)
- 渡良瀬渓谷・吹割渓・蝉の渓谷・赤倉渓谷など(群馬県)
- 長瀞渓谷・浦山渓谷・名栗渓谷・有間渓谷など(埼玉県)
- 養老渓谷(千葉県)
- 等々力渓谷・秋川渓谷・北秋川渓谷・鳩ノ巣渓谷・日原渓谷・御岳渓谷など(東京都)
- 日向渓谷・ユーシン渓谷など(神奈川県)
- 甲信越地方
- 胎内渓谷・姫川渓谷・海谷渓谷・実川渓谷・早出川渓谷・仙見川渓谷・裏巻機渓谷など(新潟県)
- 西沢渓谷・白鳳渓谷・尾白川渓谷・板敷渓谷・丹波渓谷・川俣川渓谷・石空川渓谷・大柳川渓谷・福士川渓谷・芦川渓谷など(山梨県)
- 角間渓谷・高瀬渓谷・松川渓谷・赤沢渓谷・阿寺渓谷・柿其渓谷・万古渓谷・黒川渓谷・小黒川渓谷・奥裾花渓谷・横川渓谷・雑魚川渓谷・幕岩渓谷・春日渓谷・小戸名渓谷など(長野県)
- 北陸地方
- 鶴仙渓(石川県)
- 黒河渓谷・竹田川渓谷(福井県)
- 東海地方
- 中山七里・霞間ヶ渓・宇津江四十八滝・乙女渓谷・古虎渓・高賀渓谷・双六渓谷・小津渓谷・片知渓谷・川浦渓谷・木地屋渓谷など(岐阜県)
- 新井川渓谷・須津川渓谷・景ヶ島渓谷・滑沢渓谷など(静岡県)
- 香嵐渓・大入渓谷・振草渓谷・神越渓谷・闇刈渓谷(愛知県)
- 宇賀渓・石水渓・朝明渓谷・香落渓・赤目四十八滝・小岐須渓谷・五十鈴川渓谷・魚飛渓・馬野渓・日神渓谷・(三重県)
- 近畿地方
- 朽木渓谷(滋賀県)
- 清滝・嵐山・るり渓(京都府)
- 瀞川渓谷・霧ヶ滝渓谷・阿瀬渓谷・音水渓谷・天滝渓谷・福知渓谷・糸井渓谷・猪名川渓谷・横行渓谷・小代渓谷・熊波渓谷・赤西渓谷など(兵庫県)
- 御手洗渓谷・月ヶ瀬梅渓・不動七重滝・奥香落渓・川迫川渓谷など(奈良県)
- 百間山渓谷・奥瀞渓谷・安川渓谷・動鳴気渓・大塔渓谷・小森谷渓谷(和歌山県)
- 中国地方
- 芦津渓谷・小鹿渓・三滝渓・石霞渓・かまこしき渓谷・諸鹿川渓谷・中津美渓谷(鳥取県)
- 断魚渓・千丈渓・鬼の舌震・大魚渓・椛谷渓谷(島根県)
- 豪渓・奥津渓・磐窟渓・宇甘渓・道祖渓・羽山渓・美甘渓谷・泉源渓谷・白賀渓谷・奥津川渓谷など(岡山県)
- 万古渓(広島県)
- 石柱渓・中山渓・五万堂渓谷(山口県)
- 四国地方
- 祖谷渓・鷲敷ライン・紅葉川渓谷・殿川内渓谷・立川渓谷(徳島県)
- 寒霞渓・銚子渓(香川県)
- 滑床渓谷・面河渓・成川渓谷・鈍川渓谷・富郷渓谷・遠登志渓谷・滑川渓谷・高瀑渓・三滝渓谷・薬師谷渓谷・鞍瀬渓谷・阿歌古渓谷・黒川渓谷・小田深山渓谷・桂川渓谷・三滝渓谷・節安渓谷・横吹渓谷など(愛媛県)
- 中津渓谷・安居渓谷・西川渓谷・岩屋川渓谷・白猪谷渓谷・西熊渓谷・笹渓谷・汗見川渓谷・瀬戸川渓谷・中追渓谷・不入渓谷・出井渓谷など(高知県)
- 九州地方
- 筑紫耶馬渓・野河内渓谷など(福岡県)
- 千綿渓谷・富川渓谷・黒木渓谷・岩背戸渓谷(長崎県)
- 菊池渓谷・岳間渓谷・緑川渓谷など(熊本県)
- 耶馬渓・九酔渓・白馬渓・藤河内渓谷・由布川渓谷・岳切渓谷・奥岳渓谷・鳴川渓谷・薬師渓谷・神原渓谷など(大分県)
- 猪八重渓谷・綾川渓谷・祝子川渓谷・小丸川渓谷・見立渓谷・五ヶ瀬渓谷・鹿川渓谷・日之影渓谷・尾前渓谷・加江田渓谷・赤池渓谷など(宮崎県)
- 奥十曽渓谷・雄川渓谷・猿ヶ城渓谷・高隈渓谷など(鹿児島県)
※一方、○○峡と名乗る峡谷は浸食が激しく切り立った断崖が見られる谷、あるいは嵐山のように差し迫った山に挟まれ、悠然と水をたたえるような景勝地を指すことが多い。国内の主な峡谷も参照
[編集] 関連項目
- 圏谷(カール)
[編集] 地名
谷、谷戸、谷津、谷地などと表し「や」「やと」「やつ」「やち」などと読む地名が、主に日本の関東地方および東北地方の丘陵地で多く見られる。これは、谷あいの地形を表す言葉、または地形から転じた地名であり、地形としては「谷戸地形」「谷戸田」などとして使われる。 一方で、西日本では谷を「たに」と読むことが多い。
地名として使われる場合は、当該土地が山に囲まれた谷あいである(または過去そうであった)ことを表しており、このような地形のうち水はけが良く開けた場所は水田や畑として使われており、森林が多い場所は里山的環境であり、水はけが悪い場所は湿地帯になっていることが多い。
また上記の表記および読みは地域により分布に差が見られ、同様の地形を表す際にも、千葉県などでは「谷津」(やつ)を、神奈川県および東京都多摩地方では「谷戸」(やと)を、東北地方では「谷地」(やち)使っている場合が多い。これらの経緯については史料が少なく詳細は分かっていないが、いずれの場合も意味は同じで、浅い侵食谷の周囲に斜面樹林が接する集水域であり、丘陵地の中で一段低くなった谷あいの土地であることを表している。
[編集] 地名例
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 自然科学のとびら 5巻3号「ライブラリー通信 谷戸・谷津」(神奈川県立生命の星・地球博物館)
- 多摩地域の谷戸の保全に関する調査(東京都環境局)
- 谷戸の景観構造(慶應義塾大学 地球環境概論 厳 網林)
- 関東地名物語、山田秀三著、草風館、1998年、ISBN 4-8832-3058-9。
[編集] 状態を表す呼称
日本語では、地形以外についても、何らかの値が周囲よりも低い状態を表す呼称・名称として「谷」が用いられる。
例:「気圧の谷」、「波の谷」、「景気の谷」など。
[編集] 人名
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