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英語帝国主義

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英語帝国主義(えいごていこくしゅぎ)とは、歴史的経緯により、何千もの言語のうち英語が地球上で最も広範に使用される現代の状況を、やや批判的・問題提起的に表現した他称。

現状を「英語帝国主義」と表現する場合肯定的なニュアンスを持つことは少ない。多くの場合、歴史学帝国主義に関連させて、「好ましからざる現状だが、一地域の言語に過ぎない英語が地球規模で使われている・使われることを強制されている」という文脈で使用される用語である。(詳しくは、帝国主義を参照)


日本では、大石 (1990) と津田 (1990) が「英語帝国主義論」の口火を切った。

海外では、Phillipson (1992) や Pennycook (1994, 1998) らがこの問題を指摘している。

目次

[編集] 概観

[編集] イギリスの英語帝国主義

古くは、ケルト民族の排除に始まる。イギリスは産業革命を経て、世界の制海権を獲得する。七大陸にまたがる「太陽の沈まない国」ことイギリス帝国(大英帝国)を形成するに至り、イギリスは間接統治で植民地経営をするため現地の上層階級に英語でエリート教育を施した。その結果、イギリスの植民地は独立すると、エリート末裔である少数特権階級が自らの権益を守るため英語絶対優位の社会を築くことになる(ESL国家の出現)。

ブリティッシュ・カウンシルによる英語教育推進運動で、世界の英語教育の欧州型(モノリンガル型)教育モデルが確立し、英文教科書・教員育成・指導理論および方法(応用言語学)が非西洋地域にまったく適さないにもかかわらず、近代化・民主化を合言葉に英語は西洋型教育によって推し進められた。

[編集] アメリカの英語帝国主義

「新大陸発見」以来、ヨーロッパ人のアメリカ大陸進出は、(西部劇ではいつも悪役の)先住民に新種の病気をもたらし人口激減に追い込み、言語文化・土地を強制かつ合法的に奪うものでしかなかった。同じヨーロッパ人が先住民を無視して勝手に建国したアメリカでもアングロ・サクソンによるモノリンガル文化は、「英語オンリー」運動(事の発端は日系の上院議員)にも顕著に現れており、多文化・多言語の勢力はあまり芳しくない。

英語教育においては、フォード財団などが積極的に関与し、イギリスへの対抗措置を講じている。世界中に氾濫するアメリカ英語に加担している悪名高いアメリカ型教員育成機関に TESOL がある。また、フルブライト制度なども用いて、優秀な学生をアメリカへ誘致して、学問の中心を堅持し、英語の国際的な地位を維持に精を出している。

戦後、世界が二極化した冷戦ソ連自滅(ペレストロイカ)で勝ち残ったアメリカは、強大な軍事力・経済力で世界を支配し、国際機関を英語で悠々と操り、建国以来のモンロー主義に基づいてほぼ単独で世界を独占している。

[編集] 日本における議論

19世紀後半、「ペリー・ショック」を経て開国した日本は、「国語」問題に直面した。後の初代文部大臣・森有礼は、米国で出版した著書“Education in Japan”の中で、簡易英語を国語として採用する「国語英語化論」を主張した。森の主張は、米国の言語学者W.D.ホイットニー馬場辰猪のような反対論も含めて、様々な反応を巻き起こした。[1]

現代では、国際的な対話には英語が必須といった認識が英語教育に向けられ、EU諸国や韓国台湾などのように、小学校から英語を義務付けようとする動きも見られる。英語教育の現場では、社会経済上の要請もあって、実用的な語学が求められるようになり、英会話を主流とした対話能力の育成が期待されている。小渕内閣2000年、「英語の第二公用語化」を提言し、小泉内閣下の文部科学省2003年に、『「英語が使える日本人」の育成のための行動計画の策定について』を発表した。

また、企業採用の一環で 、TOEICTOEFL が課される傾向が強まり、入学試験でも英検に付加価値がつく一方、英会話学校は流行し、留学先でも英語圏が圧倒的となっている。こういった日本の英語重視の傾向を受けて、GDPが世界第2位(MERベース.PPPベースでは第3位.[2] )の日本が、発展途上国(旧植民地)同然の振る舞いを自発的にしていると、鈴木孝夫など一部の論者は批判している。ただし、こうした現象は日本に限らず、アジア諸国はもちろん、ドイツフランスのような「大国」も含めて、今日では世界的な広がりを見せている。

[編集] 関連書籍

[編集] 和書

  • Graddol, David (1999)、『英語の未来』、研究社出版。ISBN 4327376752 原文
  • 中村 敬 (2004)、『なぜ、「英語」が問題なのか?』、三元社。ISBN 488303142X
  • 大石 俊一 (1990)、『「英語」イデオロギーを問う』、開文社出版。ISBN 4875718527
  • 津田 幸男
    • (1990)、『英語支配の構造』、第三書館。ISBN 4807490222
    • [編集] (1993)、『英語支配への異論』、第三書館。ISBN 4807493043
    • (2000)、『英語下手のすすめ』、ベストセラーズ。ISBN 4584103232
    • (2003)、『英語支配とは何か』、明石書店。ISBN 4750318388
    • [編集] (2005)、『言語・情報・文化の英語支配』、明石書店。ISBN 4750320862

[編集] 洋書

  • Crystal, David (2003), English as a Global Language, 2nd ed., Cambridge University Press. ISBN 0521530326
  • Pennycook, Alastair
    • (1994), The Cultural Politics of English as an International Language, Longman. ISBN 0582234727
    • (1998), English and the Discourses of Colonialism, Routledge. ISBN 0415178487
  • Phillipson, Robert (1992), Linguistic Imperialism, Oxford University Press. ISBN 0194371468

[編集] 関連新聞記事

  • Thornton、不破 直子 (1997)、「日本の「英語病」は杞憂」、「論壇」、『朝日新聞』、1月16日付、朝刊。
  • Thurow, Lester (1996)、朝日新聞インタビュー、10月25日。
  • 中日新聞
    • (2000a)、中日春秋、『中日新聞』、1月27日付、朝刊。
    • (2000b)、「英語の「第2公用語化」提言」、『中日新聞』、1月24日付、夕刊。
  • 中村 敬 (1995)、「外国語教育の多様化」、『朝日新聞』、8月22日付。
  • 加藤 周一 (2000)、「再び英語教育について」、「夕陽妄語」、『朝日新聞』、2月17日付、夕刊。
  • 加藤 晴久 (1996)、「言語と文化の多元主義のために」、『朝日新聞』、10月30日。
  • 南島 (2000)、「豊かさと英語力と」、「記者ノート」、『朝日新聞』、4月15日付、朝刊。
  • 大沼 (1993)、「欧文での日本人の姓名」、『朝日新聞』、5月17日付、夕刊。
  • 姜 尚中 (2000)、「英語公用語論に「共存」の視点を」、『朝日新聞』、4月14日付、朝刊。
  • 小田 利久 (2000)、「日本の言語に今必要なこと」、「論壇」、『朝日新聞』、3月23日付、朝刊。
  • 岡部 (2000)、「たかが英語、されど英語」、「中外時評」、『日本経済新聞』、3月5日付、朝刊。
  • 岩村 立郎 (2000)、「意欲と能力と努力の量」、『朝日新聞』、3月12日付、朝刊。http://www.246.ne.jp/~kyty4160/clip/myscrap-10.html
  • 日本経済新聞
    • (1998)、「小学校での英語教育に何が必要か」、「社説」、『日本経済新聞』、8月31日付、朝刊。
    • (2000a)、「英語を考える」、「社説」、『日本経済新聞』、3月20日付、朝刊。
    • (2000b)、「英語浸透、自国語は?」、『日本経済新聞』、2月28日付、朝刊。
  • 朝日新聞
    • (1987a)、「英語ダメなら昇進もダメ」、『朝日新聞』、2月17日付。
    • (1987b)、「国際化への突破狙い」、「手帳」、『朝日新聞』、4月18日付。
    • (1990a)、「英語は日本人の「精神的首切り」」、『毎日新聞』、8月18日付。
    • (1990b)、文相会見、『朝日新聞』、4月15日付。
    • (1993a)、「天声人語」、『朝日新聞』、5月11日付、朝刊。
    • (1993b)、「天声人語」、『朝日新聞』、5月24日付、朝刊。
    • (2000a)、「どこまで行くか、英語幻想」、『朝日新聞』、2月27日付、朝刊。
    • (2000b)、「ホントにやるの?英語の公用語化」、『朝日新聞』、2月25日付、朝刊。
    • (2000c)、「英語ノーなら昇進ノー」、『朝日新聞』、2月22日付、朝刊。
    • (2000d)、「英語公用語論」、『朝日新聞』、4月19日付、朝刊。
  • (2000)、「英語公用化論に潜む誤解」、「論壇」、『朝日新聞』、3月22日付、朝刊。
  • 橋爪 (2000)、「高まる英語公用語論」、『日本経済新聞』、9月17日付、朝刊。
  • 河合、丸谷、月尾、長島、岡野、礒田 (2000)、「!英語公用論」、『朝日新聞』、4月4-8日付、朝刊。
  • 渡部 昇一 (1975)、「英語の「勝利」と民主主義」、「研究ノート」、『朝日新聞』、1月21日付。
  • 牧村 (2000)、「世界語とどうつきあうか」、『朝日新聞』、10月8日付、朝刊。
  • 田勢 (2000)、「英語で話しかけてみよう」、「風見鶏」、『日本経済新聞』、2月28日付、朝刊。
  • 荒 このみ (1991)、「標準英語話す訓練を」、『読売新聞』、4月7日。
  • 長井 (1999)、「反・英語帝国主義のススメ」、『日本経済新聞』、1月20日付、夕刊。

[編集] 関連雑誌記事

  • 日本放送協会 (1988)、「特集 企業・ビジネスマンの国際化サバイバル」、日本放送協会、『ウィークス』、12月号。
  • 三浦 信孝、「英語帝国主義と他言語主義」、『仏語仏文学研究』、第32号。
  • 中村 敬
    • (1994)、「再び「英語帝国主義」について」、『週刊金曜日』、第24-25号、4月 29日、5月13日。
    • (1997)、「筑紫哲也氏にこたえる」、『週刊金曜日』、第163号、3月21日。
  • 中野 (1948)、「英語を学ぶ人々のために」、The Youth Companion、2月号。
  • 佐々木 (1997)、「子供の世界認識を歪める」、『週刊金曜日』、第157号、2月7日。
  • 八木 (1997)、「国家百年の計をあやまるな!」、『週刊金曜日』第157号、2月7日。
  • 姜 尚中 (1997)、「英語教育以前に語るべきこと」、『週刊金曜日』、第157号、2月7日。
  • 富岡 多惠子、Susan Sontag (1979)、「日本語・日本文化・日本の女」、対談、『朝日ジャーナル』、5月25日号。
  • 川勝 平太 (2000)、「国際化と英語公用語論」、『経済セミナー』、9月号
  • 斎藤 兆史、「英語帝国主義は怖い・怖くない」、『現代英語教育』、vol.31, No.12, 95。
  • 本名 信行
    • (1996a)、English in Singapore、青山学院大学総合研究所。(国際政治経済研究センター研究叢書第6号「国際コミュニケーションによる言語と文化」収録)
    • (1996b)、「ぜひ知っておきたいアジアの英語」、『アジアの時代』、10月号。
    • (1996c)、「インターネット時代の英語事情」、『日本語学』、11月号。
  • 本多 勝一 (1988)、「貧困なる精神」、『朝日ジャーナル』、4月22日号、11月14日号。
  • 村田 聖明 (1994)、「日本人英語に特徴的なこと」、大修館、『英語教育』、3月号。
  • 松本、中村 (1996-1997)、「誌上ディベート 英語帝国主義をめぐって」、『時事英語研究』、10-2月号。
  • 森住 衛 (1994)、「英語帝国主義をめぐって」、『現代英語教育』、8・9月号。
  • 津田 幸男 (1994)、「私はなぜ「英語支配」にこだわるのか?」、『週刊金曜日』、第25号、5月13日。
  • 猪口 孝 (2000)、「国際化と大学のレベル」、『経済セミナー』、10月号
  • 西川 (1975)、「東南アジアに進出する日本語と日本人」、大修館、『言語』、11月号。

[編集] 関連キー・ワード

[編集] 言語的な観点から

[編集] 社会学的な観点から

[編集] 心理学的な観点から

[編集] 政治学的な観点から

[編集] 文学的な観点から

[編集] 歴史的な観点から

[編集] 外部リンク

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