聴牌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
聴牌(テンパイ)とは、麻雀において、和了するために牌があと1枚必要な状態をいう。現在ではそれを転じてパニックを起こすことという意味にも使われている。
通常、麻雀では14枚の牌を用いて特定の面子を完成させ、かつ何らかの役を成立させることで和了となる。プレイヤーの手牌は通常13枚であり、自摸をすると一時的に14枚となり、直後に1枚捨てて13枚に戻ることを繰り返しているため、聴牌時においては最後の1枚を他のプレイヤーが捨てるか、自らが自摸することを待つ状態となる。この状態を聴牌という。なお、最後の1枚となるべき牌が1種類であるとは限らない。後述するように、10種類以上の牌によって和了することが可能なケースもある。聴牌時において和了するために必要な牌を和了牌、もしくは待ち牌といい、牌Aが待ち牌である状態を「A待ち」という。
なお、聴牌するまでに有効な牌があと何枚必要かを向聴(シャンテン)という単位で数える。あと1枚で聴牌になるなら一向聴(イーシャンテン)、あと2枚なら二向聴(リャンシャンテン)といった具合である。聴牌までの早さという観点から手の良し悪しを測るための簡便な単位である。
目次 |
[編集] 聴牌と関連する麻雀のルール
- 局の最後まで誰もアガらずに終わった場合、聴牌していたかどうかによって点数のやりとりが行われる。このとき、聴牌していた人数と、していなかった(ノーテンの)人数によって受け渡しされる点数は変動するが、総額で3000点やりとりされる。これをノーテン罰符という。
[編集] 聴牌の分類
聴牌時における具体的な状況との関連によって、聴牌を分類することができる。
[編集] 空聴
空聴(カラテン)とは、聴牌はしたものの、他家の捨牌や副露、ドラ表示牌などで上がり牌が全て見えており、和了の望みがない状態のことである。 純カラとも呼ばれる。
一般にアガリ牌をすべて自分で持ってしまっている場合は聴牌にならない。
アガリ牌が場に4枚見えていて可能性がない場合は聴牌扱いとなる。
この場合は聴牌となる。
自分のカンによってあがり牌が消滅しているが、カンによって五筒が3枚に扱われ架空の残り1枚が存在するため、聴牌扱いとする。極端な話、この状況でリーチをかけることもできる。
[編集] 振聴
振聴(フリテン)には3つの意味がある。
- 聴牌状態において和了牌の中に自らが捨てたことがある牌が含まれている状態。
- 他家の捨牌をロンせず見逃して、自分の自摸番がまだ来ていない状態。これを同巡内(非山越し)と言う。
- 立直後、他家の捨牌をロンせずに見逃した後の状態。
振聴の制約は、幾つかの例がある。
- 制約なし。放銃一家包がない時代のルール、現在は採用されない
- 現物のみロン和了り不可、ツモ和了りは可能。アルシーアル麻雀、ブー麻雀、東天紅などで採用される。
- 現物及びその筋の待牌はロン和了り不可、ツモ和了りは可能。複合待ちでは、現物を含む牌を含む待ちのロン和了りを禁止することもある。現在は採用されることは少ない。
- 一枚でも振聴であればロン和了りは不可、ツモ和了りは可能。一般に行われているアリアリの麻雀はこのルールが多い。
- 前項で、リーチに限り振聴を禁止することもある。
- 振聴は一切不可とすることもある。通常、この規定であれば振聴は聴牌にもならない。完全先付け、リーチ縛りなどで採用される。
[編集] 闇聴(黙聴)
門前で聴牌したときに立直をかけないことを闇聴(ヤミテン)もしくは黙聴(ダマテン)という。
[編集] 形式聴牌
形式聴牌(けいしきてんぱい)とは、聴牌しているが、役のない状態を指す。 形式聴牌ありとは、流局時に、和了役はないが和了形になっている場合、聴牌とみなすルールである。聴牌とみなさないルールは形式聴牌なしと呼ばれる。
[編集] 片和了り聴牌
片和了り聴牌(かたあがりてんぱい)とは、待ち牌が2種類(またはそれ以上)あるが、その中の1種類以上の牌について、役がつかないなどの理由で和了できないことをいう。
役が付かない待ち牌の見逃しでも、和了り牌の見逃しとして振聴のルールが適用される。
(例)以下の状態で聴牌したとする。中では役牌で和了できるが、二萬では役がなく、海底などの特殊役が付かない限り和了できない。
[編集] 待ちの形式
待ちは、待っている牌が面子のどの部分に当たるかによって分類される。得点計算の際の符にも関わってくる。
[編集] 四面子一雀頭
四面子一雀頭形では、待ちは必ず以下の両面、嵌張、辺張、双ポン、単騎のいずれかになる。
[編集] 両面待ち
両面待ち(リャンメンマチ)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に両面搭子が残された状態をいう。
待ち牌の枚数は最大2種類8枚。簡単に作りやすい複数待ちで、最大8枚の牌を待てることから、5種の中で最も良い待ち方である。両面待ちを和了しても符点はつかない。平和については両面待ちで和了することが役の成立要件である。
[編集] 嵌張待ち
嵌張待ち(カンチャンマチ)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に嵌搭子が残された状態をいう。嵌張待ちで和了すると符点2点が付く。
待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。両面待ちに比べると不利な形であるが、数牌nと数牌n+2との嵌張子ならば、数牌n-1または数牌n+3を自摸することで両面に変化させることが可能である(ただし3<n<5)。
[編集] 辺張待ち
辺張待ち(ペンチャンマチ)とは、聴牌時において3つの面子と雀頭が完成しており、最後に辺搭子が残された状態をいう。辺張待ちで和了すると符点2点が付く。
待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。嵌張と異なり両面への変化ができないため、嵌張よりさらに不利な形である。12の辺搭子なら4、89の辺搭子なら6を自摸すれば嵌張に変化させることが出来る。
[編集] 双ポン待ち
双ポン待ち(シャンポンマチ:双碰待ち、通称シャボ)とは、聴牌時において3つの面子が完成しており、その他に対子が2つある状態を指す。
待ち牌の枚数は最大で2種類4枚(2種類ともすでに対子として2枚使用しているため)。待ちの種類の数は両面と同じく2種類だが、枚数は嵌張、辺張と同じであるため、それほど有利な形ではない。双ポン待ちで和了することによって符点はつかないが、和了すれば必ず刻子が完成するのでその分の符点は入る。
双ポン待ちを和了すると、2つの対子のうち一方は雀頭、もう一方は刻子となる。刻子は自摸和の場合には暗刻子となり、ロンによる和了の場合には明刻子になる。三暗刻および四暗刻はツモかロンかで成否が変わることがあるので注意が必要である。
[編集] 単騎待ち
単騎待ち(タンキマチ)とは、聴牌時において4つの面子が完成しており、雀頭となる対子が1枚欠けている状態を指す。単騎待ちで和了すると符点2点が付く。
待ち牌の枚数は最大で1種類3枚(すでに自分で1枚使っているため)で、5種の中では最も少ない。ただし待ち牌の切り替えが容易であり、かつその際に振聴となる危険性が少ない。また聴牌後に自摸する牌によっては、すでに完成した面子との組み合わせによって二面待ちないし多面張へ変化させることも可能である。
4つの面子がすべて副露によるものであり、手牌が1枚だけの状態(例:四槓子の聴牌)を裸単騎と呼ぶ。裸単騎の状態では安全牌が最大で1枚しか確保できないため、降り打ちをすることが困難となる。
[編集] 地獄単騎
単騎待ちにおいて、その待ち牌が捨牌や他家の副露により2枚見えていて、有効な和了牌が1枚しか残っていない状態を地獄単騎という。地獄単騎は主に字牌で行われる。これは字牌が順子を構成せず、また2枚が捨てられているために、使用するのが難しい状態であることを利用している。
[編集] 特殊形
例外的なあがり方である七対子および国士無双の場合、七対子の方は必ず単騎待ちになるが、国士無双は上記のいずれにも当てはまらない特殊形になる。
[編集] 七対子の単騎待ち
七対子を聴牌した場合は、必然的に単騎待ちとなる。ただし七対子は符が固定(関東25符、関西50符)のため、単騎待ちの2符はカウントされない。
[編集] 国士無双一面待ち
国士無双一面待ちとは、国士無双の聴牌形において、雀頭は確定済みで、ヤオ九牌の1枚が欠けている状態を指す。単騎待ちは1種3枚待ちなのに対して、国士無双一面待ちは1種4枚待ちとなる。この待ち方を国士単騎と呼ぶ事もある。
[編集] 国士無双十三面(単騎)待ち
国士無双十三面待ちとは、国士無双の聴牌形において、13種13枚のヤオ九牌を持ち、雀頭が確定していない状態を指す。雀頭を待つので形式的に単騎待ちと見て十三面単騎と呼ばれることもある。最大で13種類39枚もの牌を待てる、最高の待ちの形である。ただし、ここに至るまでに1枚でもヤオ九牌を捨てていると振聴となってしまうため、完成すればアガリ易いものの、完成させるまでが非常に困難である。そのため、振聴でない、純粋な十三面待ちからの国士無双はルールによってはダブル役満とされることもある。
[編集] 聴牌時における、待ち牌の種類の数
聴牌時において待ち牌がm種類存在することを「m面待ち」、あるいは「m面張」という。四面子一雀頭、すなわち4つの完成面子と1つの対子によって成立する役を聴牌している場合には、聴牌時において手牌に含まれる未完成面子の形によって待ち牌が何種類あるかが決定される。七対子を聴牌した場合には必然的に1面待ち(単騎待ち)となる。
待ち牌が3種類以上ある場合を多面待ち、または多面張という。多面待ちの中には、一見して判別が困難なものも多数あり、そのようなものについてはパターンを記憶するほうが賢明である。
以下、待ち牌の種類の数について詳述する。(は完成面子、は雀頭を意味する。いずれも待ち牌には影響しない牌によって構成されているものとする。)
[編集] 一面待ち
上記の嵌張待ち、辺張待ち、単騎待ち、及び国士無双の一面待ちが代表的であるが、四枚使いによって本来の待ちが潰れて一面だけの待ちになることもある。
[編集] 双ポンの一面待ち
双ポン待ちは二面張とは限らない。以下のように一方の待ち牌を既に自分で4枚使用している場合は双ポンの一面待ちとなる。この場合も双ポン待ちに変わりはないので、待ちによる符は得られない。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類2枚。
[編集] 両面の一面待ち
両面待ちにも一面待ちとなるケースがある。やはり形式は両面なので待ちによる符は得られない。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類4枚。
[編集] ノベタンの変則形
後述するノベタンの端にある数牌のうちいずれがさらに刻子を形成している場合、その数牌を4枚使用しているため、結局ただの単騎待ちと同じ一面待ちになる。この場合、待ち牌の枚数は最大で1種類3枚(すでに自分で1枚使用しているため)。
[編集] 二面待ち
[編集] ノベタン
連続する数牌が1枚ずつ4枚並んだ形。端にある2種類の数牌が待ち牌となる。待ち牌の枚数は最大で2種類6枚(端の数牌を自ら1枚ずつ使用しているため)。
[編集] 数牌の暗刻子が関連する二面待ち
- 数牌nの暗刻子と、数牌n-2もしくはn+2枚との複合
嵌張待ちとも単騎待ちともとれるため、待ち牌は2種類になる。待ち牌の枚数は最大で2種類7枚(数牌n-2もしくはn+2を自ら1枚使用しているため)。
- 数牌nの暗刻子、n+1,n+2,n+3の順子とn+5の複合、もしくは数牌nの暗刻子、n-3,n-2,n-1の順子とn-5の複合
嵌張待ちとも単騎待ちともとれるため、待ち牌は2種類になる。待ち牌の枚数は最大で2種類7枚(数牌n-5もしくはn+5を自ら1枚使用しているため)。
[編集] 多面待ち
[編集] 三面待ち
[編集] 連続する両面搭子と順子との複合(狭義の三面待ち)
両面搭子と順子とがm,m+1,m+2,m+3,m+4という形で複合する場合である。これを三面待ちと呼び、他の三面待ちを変則三面待ちと呼んで区別する場合もある(狭義の三面待ち)。ピアノ待ちとも言う。わずか5枚の牌によって最大で3種類11枚もの待ち牌を持つことが可能であり、もっとも良い待ちのひとつとされる。
[編集] 数牌nの刻子と、数牌n-1またはn+1 1枚との複合
最も少ない枚数の牌によって構成される三面待ちである。nを対子とみることも雀頭とみることもできるため、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類11枚。異なる筋の牌が待ち牌に含まれるため、狭義の三面待ちよりも良い待ちであるという評価もある。
[編集] 7枚の牌によって成立する三面待ち
- ノベタンと順子との複合・その1
ノベタンと順子との複合により、数牌がm,m+1,m+2,m+3,m+4,m+5,m+6という配列をなす場合である。2つの順子の取り出し方によって、3つの単騎待ちが成立する。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。
- ノベタンと順子との複合・その2
この場合は、ノベタンと順子が重なり合っている。ノベタンとみることも両面待ちとみることもできるため、三面待ちとなる。待ち牌の枚数はもう1つのパターンと同じく最大で3種類9枚である。
- 順子と双ポン待ちとの複合
順子の端の牌が計3枚あり、うち2枚がシャンポンの一方を構成する場合である。シャンポン待ちとみることも、両面待ちとみることもできる。待ち牌の枚数は最大で3種類7枚。この待ち方は特別に変則三面張と呼ぶこともある。待ち牌が7枚しかないが変則的な3種類のため振り込まれる例が多い。
- 複合によって単騎待ち(もしくはカンチャン待ち)も成立する両面待ち
7枚の数牌がn,n,n,n±1,n±2,n±2,n±3によって構成される場合、3枚ある数牌nを雀頭とみる場合の両面待ちと刻子とみる場合の単騎待ちあるいはカンチャン待ちとの複合により、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類10枚。
- 数牌nの刻子がn-1の対子と、n+1の対子にはさまれる場合
nを刻子とみる場合のシャンポン待ちと、雀頭とみる場合の単騎あるいはカンチャン待ちとの複合により、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類5枚。
- 両面待ちにもなるペンチャン待ち
門前なら一盃口の聴牌であるペンチャン待ちにおいて、数牌2あるいは8が4枚あることにより、両面待ちも成立するという場合である。この形には2通りのパターンしかない。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。
[編集] 10枚の牌によって成立する三面待ち
- 完成面子1つのほかに対子が5つあり、うち4つが連続する数牌によるものである場合
連続する数牌対子の両端のいずれを雀頭とみるかによって、2通りのシャンポン待ちが成立することから三面待ちとなる。数牌の対子が3つしか連続していない場合は単なるシャンポン待ちに過ぎないことに注意する必要がある。待ち牌の枚数は最大で3種類6枚。
- 10枚の数牌がm,m,m±1,m±2,m±2,m±3,m±4,m±5,m±5,m±5という構成である場合
m±5を刻子とみることも雀頭とみることもできるため、三面待ち(両面待ちとカンチャン待ちの複合)となる。待ち牌の枚数は最大で3種類9枚。
- 1から9までの数牌10枚によって構成される三面待ち
ノベタンによる二面待ちとみることもカンチャン待ちとみることもできるため、三面待ちとなる。待ち牌の枚数は最大で3種類10枚。この形が成立するパターンは2通りしかない。
[編集] 13枚の牌によって成立する三面待ち
13枚の数牌がm,m,m,m±1,m±1,m±1,m±1,m±2,m±2,m±2,m±2,m±3,m±3という構成であり場合、三面待ちとなる。m,m±1,m±2の順子が3つあると考えた場合の両面待ちと、m,m±1を刻子、m+2を雀頭とみた場合の一面待ち(本来両面待ちであるが一方を4枚使用しているため)との複合である。待ち牌の枚数は最大で3種類7枚。
[編集] 四面張
[編集] 両面と単騎
両面待ちと単騎待ちが重なったもの。
[編集] 両面2つと双ポン
両面待ち2つと双ポン待ちが重なったもの。
[編集] 五面張
[編集] 九連形
九連宝燈を順子2個分縮めた形。
[編集] 六面張
[編集] 七面張
[編集] 七連宝燈
純正九連宝燈の形は他の同じ色の全ての牌であがれるという特徴を持つが、この特徴を持つ形は他にもう8通りある。四枚使いの牌があるため九面待ちにはなっていないが、同色の牌の全てが当たり牌となっている。これらのうち七面待ち、八面待ちのものをそれぞれ七連宝燈、八連宝燈と呼ぶことがある。
七連宝燈は2種類ある。
[編集] 九連形
九連宝燈を順子1個分縮めた形。
[編集] 八面張
[編集] 八連宝燈
八連宝燈は6種類あるが、本質的には下の3つだけで、もう3つはこれらを1から9まで逆にしたものである。
[編集] 九連形
九連宝燈を順子1個分縮めた形。
[編集] 九面張
[編集] 純正九連宝燈
純正九連宝燈の形は四面子一雀頭の形では唯一の九面張の形であり、最大の待ち数の形である。この形はルールによってはダブル役満となることもある。
[編集] 十二面張
[編集] 十三不塔
十三不塔の形は一面から十三面までの全ての待ちの数を取ることが出来る。十三不塔の十三面待ちでない形では十二面が最高である。
[編集] 十三面張
[編集] 国士無双十三面張
上記の国士無双の十三面待ち。
[編集] 十三不塔における十三面張
十三不塔にも十三面単騎のようなものがある。
[編集] 三十四面張?
海底牌のツモの前で、それまでの捨牌がすべてヤオ九牌でしかも鳴かれておらず、さらに手牌の中にヤオ九牌がある場合を考える。すると海底が何であっても必ず流し満貫が完成させられるので、これを三十四面張と考えることもできる。ただ流し満貫があがり役と言えるかどうかは異論がある所であり、必ずしもこれが「多面張」であるとは言いきれないが、認めるとするとこれが最高の待ち数となる。