組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
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通称・略称 | 組織犯罪処罰法 |
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法令番号 | 平成11年8月18日法律第136号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 刑事法 |
主な内容 | 組織犯罪や犯罪収益に関する刑法の特別法 |
関連法令 | 暴力団対策法・破壊活動防止法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(そしきてきなはんざいのしょばつおよびはんざいしゅうえきのきせいとうにかんするほうりつ、平成11年法律第136号)(通称:組織犯罪処罰法)は、日本の法律である。暴力団・テロ組織などの反社会的団体や、会社・政治団体・宗教団体などに擬装した団体による組織的な犯罪に対する刑罰の加重と、犯罪収益のマネー・ローンダリング(資金洗浄)行為の処罰、犯罪収益の没収・追徴などを定める。略称は、組織犯罪処罰法・組織的犯罪処罰法。
現在、本法に共謀罪の新設するか否かを国会で審議中。
目次 |
[編集] 沿革
暴力団による薬物・銃器犯罪や、地下鉄サリン事件など、組織的犯罪の規模拡大・国際化が大きな治安悪化要因となっていることから、これに対処するため本法は制定された。
[編集] 団体(2条1項)
この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。)により反復して行われるものをいう。
[編集] 組織的犯罪の加重処罰(3条以下)等
団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。)として、下記の罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、通常の刑罰よりも重い刑罰が科される。また、団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で、下記の罪を犯した者も、同様に加重処罰される。
- 一 刑法186条1項(常習賭博)の罪 5年以下の懲役(通常は、3年以下の懲役。)
- 二 刑法186条第2項(賭博場開張等図利)の罪 3月以上7年以下の懲役(同、3月以上5年以下の懲役。)
- 三 刑法199条(殺人)の罪 死刑又は無期若しくは5年以上の懲役(通常と同じ。)
- 四 刑法220条(逮捕及び監禁)の罪 3月以上7年以下の懲役(通常は、3月以上5年以下の懲役。)
- 五 刑法223条第1項 又は2項(強要)の罪 5年以下の懲役(同、3年以下の懲役。)
- 六 刑法225条の2(身の代金目的略取等)の罪 無期又は5年以上の懲役(同、無期又は3年以上の懲役)
- 七 刑法233条(信用毀損及び業務妨害)の罪 6年以下の懲役又は50万円以下の罰金(同、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。)
- 八 刑法234条(威力業務妨害)の罪 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金(同、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。)
- 九 刑法246条(詐欺)の罪 1年以上の有期懲役(同、10年以下の懲役。)
- 十 刑法249条(恐喝)の罪 1年以上の有期懲役(同、10年以下の懲役。)
- 十一 刑法260条前段(建造物等損壊)の罪 7年以下の懲役(同、5年以下の懲役。)
なお、組織的な身の代金目的略取等における解放による刑の減軽、組織的な殺人等の予備の自首には刑の必要的減免が定められている。
[編集] マネー・ローンダリング行為の処罰(10条以下、54条以下)等
広義のマネー・ローンダリング(資金洗浄)行為のうち、犯罪収益等の隠匿・収受の処罰を定めた。また、金融機関に対して、疑わしい取引の主務大臣への届出を義務づけ、その情報は金融庁長官を経由して捜査機関に提供されることを定めた。
なお、マネー・ローンダリング行為の処罰の他、犯罪収益等を用いて取得した株主等の地位により、法人に影響力を行使することも処罰することを定めた(9条)。
[編集] 犯罪収益等(2条)
- この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
- 一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表(犯罪が68項目にわたって列挙される。)に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
- 二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
- イ 覚せい剤取締法41条の10 (覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
- ロ 売春防止法13条 (資金等の提供)の罪
- ハ 銃砲刀剣類所持等取締法31条の13 (資金等の提供)の罪
- ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律7条 (資金等の提供)の罪
- 三 不正競争防止法11条1項の違反行為に係る同法14条1項7号 (外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば、当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
- 四 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律2条 (資金提供)に規定する罪に係る資金
- この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
- この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
- この法律において「薬物犯罪収益」とは、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)2条3項に規定する薬物犯罪収益をいう。
- この法律において「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、麻薬特例法2条4項に規定する薬物犯罪収益に由来する財産をいう。
- この法律において「薬物犯罪収益等」とは、麻薬特例法2条5項に規定する薬物犯罪収益等をいう。
[編集] 犯罪収益等の没収・追徴(13条以下)
犯罪収益等の没収・追徴について、その範囲を拡大し、手続を整備した。
[編集] 関連項目
- 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約
- 国際捜査 - 捜査共助 - 国際捜査共助等に関する法律
- 破壊活動防止法(破防法)
- 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法・オウム新法)
- 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)
- 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)
- 共謀罪
[編集] 外部リンク
- 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 - 総務省・法令データ提供システム
- 警察庁・組織犯罪対策
- 一部英訳、Art. 9-11 in English
- 54-58 in English