殺人
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殺人(さつじん、俗に人殺し)とは他人の生命を絶って死に至らしめる行為のこと。中でも特に、故意によるもの、不可抗力ながらそれを隠そうとした場合、などを指すことが一般的である。刑罰(死刑)の執行や国際法下での戦闘行為によるもの、妊娠中絶など、法に従って他人を殺すことは、殺人とは呼ばれないことが多い。
特に自殺と区別するため、他殺(たさつ)と呼ばれることもある。
多くの国で法律上もっとも重罪とされている。凶悪性をはらむ場合、裁判所では「死に値する罪」ともされ、場合によっては死刑が課せられる。
法治国家がその誕生と共に厳しく取り締まるようになった人間の反社会的行為の内の重要な一つが、殺人である。同時に、古代には法律以上に社会に深く浸透していた宗教においても、殺人は忌むべきもの、犯してはならない戒律として多くの宗教に規定されている。ユダヤ教においてモーゼが受けた「十戒」でも、信仰と親への孝行を除く社会生活上の禁忌五つのうち真っ先に採り上げられている。
ただし古来より、戦時下における殺害行為(特に軍隊・軍事行動による殺人)は、国際法の不備により、有効に処罰されてこなかった。裁かれることがあっても、戦勝国による戦争裁判や、戦後の混乱状態の下で私刑にかけられるなど、特殊な裁かれ方を経ることになる。また、国家元首や政府の高官など権力を持つ者が自国民を大勢殺害した場合、その国の法律では調査・訴追・公正な裁判を行うことが極めて困難である。そのため、国際刑事裁判所が創られた。一方で2006年現在、日本を始めとする一部の国はこの枠組みに参加しておらず、さらにアメリカは参加しないだけでなく、アメリカ国民を国際刑事裁判所に引き渡さないことを約する免責協定を結ぶよう各国に要請するなど、その趣旨に自国民を加えることに反対している。このため、その実効性を疑問視する声もある。