狂気 (アルバム)
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狂気 | ||
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ピンク・フロイド の アルバム | ||
リリース | 1973年3月24日 | |
ジャンル | プログレッシブ・ロック | |
時間 | 42:52 | |
レーベル | キャピトル・レコード | |
プロデュース | ピンク・フロイド | |
レビュー | ||
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ピンク・フロイド 年表 | ||
雲の影 (1972) |
狂気 (1973) |
炎~あなたがここにいてほしい (1975) |
狂気(きょうき、The Dark Side Of The Moon)は、1973年に発表されたピンク・フロイドのアルバム。
目次 |
[編集] 概要
本作はアメリカのビルボードチャート200位以内に15年(741週間)に渡ってランクインするというロングセラーのギネス記録を打ち立てた歴史的なアルバムである。全英2位、全米1位を獲得し、全世界での売上枚数は3500万枚とされているが、まだ売上枚数計測のシステムが整っていない時期に発売されたため、それを上回る可能性は非常に高い。一部では、スリラーをも超えて世界で最も売れたアルバムではないかという声も聞かれる。
プログレッシブ・ロックというジャンルを超え、ロック史に残る名盤として現在も君臨している。ピンク・フロイドの作品の中でも、『ザ・ウォール』(1979年)、『炎~あなたがここにいてほしい』(1975年)と並ぶ代表作である。また、本作をきっかけにアメリカでの人気が決定的となった。コンセプト・アルバムの代表作としても名高い。
このアルバム以降、ロジャー・ウォーターズが全作詞を手掛けるようになり、バンド内でのバランスに大きな変化が生まれたという点でも、重大な意味を持つ作品となった。人間の内面に潜む「狂気」を描き出すというコンセプトを考えたのもロジャーである。
[編集] 内容
哲学的な歌詞に加え、それを際立たせる立体的な音作りで、極めて完成度の高い作品に仕上がっている。特に、アラン・パーソンズが編集したSE(効果音)の巧みな使い方によって、うまくストーリーを演出している。笑い声、会話、爆発音、時計の針、レジスター、心臓の鼓動(実際はニック・メイスンのドラム)等が使われている。サンプラーは無かったため、録音した音をひとつひとつテープに貼り付けるという原始的な手法で組み立てられた。アラン・パーソンズによれば、マネーの冒頭で聴かれるレジスターの音は編集に30日要したと言う。
曲と曲のあいだに空間が無く、基本的に全楽曲が繋がっており、流れるような展開でアルバムは進んでいく。その中で主人公の誕生から苦悩、葛藤などを描き出している。作品中では主人公はYouと記されているだけだが、狂気の人となってしまったシド・バレットの姿も重ねられていると言われている。エンディングでは、Gerry O'Driscollによる「There's no dark side of the moon really. Matter of facts it's all dark(本当は月の暗い側なんて存在しないんだよ。何故なら、すべてが闇そのものだからね)」という台詞(つまり、実際は何もかもただ「明るい」のは「ただ太陽の光が当たっているだけ」で「暗い側」も「明るい側」もないということである)が入っており、核心的な一言でアルバムは終わりを告げる。
[編集] 客演
メンバー4人以外にもゲスト・ミュージシャンが起用された。
- 「マネー」と「アス・アンド・ゼム」でサックスを演奏したのはDick Parry。
- 「虚空のスキャット」他でスキャットを担当したのはClare Torry。
- 「タイム」他で女性コーラスを担当したのはDoris Troy、Lesley Duncan、Liza Strike、Barry St Johnの4人。
- 随所で聴かれる声の主は、関係者やメンバーの友人。例えばローディーのRoger ManifoldやドアマンのGerry O'Driscoll等。
[編集] スタッフ
- エンジニアはアラン・パーソンズが務めていたが、最終段階に入ってクリス・トーマスも招かれた。
- アルバム・ジャケットはヒプノシス。デザイナーのストーム・ソーガソンが幾つかのアイディアをメンバーに提示し、満場一致で光のプリズムを表現したデザインに決定した。ロック史に残る名作とされている。
- アメリカで商業上の大成功に寄与したのはキャピトル・レコードのBhaskar Menon。「マネー」のシングル・カットを決断するなど、様々な営業戦略を駆使して狂気を売り込んだ。ただし、このシングル・カットはバンドに無断で決定されていたらしく、メンバーは怒りを露にしていた。
[編集] 収録曲
- スピーク・トゥ・ミー Speak To Me
- 生命の息吹 Breathe
- 走り回って On The Run
- タイム~ブリーズ(リプライズ) Time~Breathe (Reprise)
- 虚空のスキャット The Great Gig In The Sky
- マネー Money
- アス・アンド・ゼム Us And Them
- 望みの色を Any Colour You Like
- 狂人は心に Brain Damage
- 狂気日食 Eclipse
[編集] 5.1ch版
発売30年後の2003年に、ジェームス・ガスリーによってリマスターが施されて5.1chのサラウンド・オーディオ・システムに対応したマルチ・チャンネル版がSACDとDVD-Audioでリリースされた。
[編集] メイキング
発売30年後の2003年に、当時の映像と現在のメンバーのインタビューを編集したメイキングDVD「ピンク・フロイド|狂気」がリリースされた。デヴィッド・ギルモア自身がギター・ワークを再現したり、「走り回って」に於けるシンセサイザーの操作を実演したり、リチャード・ライトがみずからピアノ・コードの分析を行ったりするなど、メンバー自身が作成に大きく寄与している。