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学級崩壊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

学級崩壊(がっきゅうほうかい)とは、文部科学省(学級経営研究会)の定義によれば、「子ども(達)が教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成立しない学級の状態が一定以上継続し、学級担任による通常の手法では問題解決ができない状態に立至っている場合(学級がうまく機能しない状態)」である。

目次

[編集] 概説

近年、学校で児童生徒が、授業が行われているにも関わらず、勝手に席を立って教室を入室もしくは退室したり、私語を慎まなかったり、周りの生徒にちょっかいを出すなど、授業の不成立ひいては学級の機能が停止した状態が起こることがある。この状態を「学級崩壊」と言う。学級崩壊という言葉は主に小学校において使用される。これは、「児童の集団による教師いじめ」という側面も有している。

小学校において学級崩壊までいかないが、学級が機能しにくい状況に対しては主に「荒れ」という言葉が使われる。 また、実際の学校現場ではこの「学級崩壊」という言葉を使用することには非常に激しい心理的抵抗があり、明らかに学級崩壊している状況でも「荒れ」としてあいまいに表現される事も多々ある。 学級崩壊という言葉は1997年頃から頻繁に使われるようになってきたとも言われる。その背景に関しては多くの識者によって様々な考察が為され、教育学的、心理学的、社会学的に研究されている問題である。

そもそも、現在の学校教育システムは「保護者が学校に協力的で、子どもも教師の言うことを素直に聞く」という伝統的学校文化を前提として成立しており、現在の学校教育システムが、社会の変化・児童保護者の変容に対応しきれていなのではないかという説がある。 例えば現在の小学校高学年は情報化や都市化・発達加速化などにより、10年前、20年前の中学生と似たような困難を多く有している。しかし、学校教育のシステムはあくまで小学生を対象に教えるシステムであるので、子どもの変化に追いついていない。

また、学級崩壊の背景としては「教師の権威の崩壊」「家庭教育の崩壊(家庭で終えるべき躾けができていない)」「地域の教育力の崩壊」があると言われている。

従来の学校教育においては、学級崩壊の責任のほとんどが教師の責任であり、教師の教育技術の不足によるものと思われるが、 現代においては教育技術だけで学級崩壊を防ぐのは不可能であるとおもわれている。 また近年では、荒れた学級を新規採用の教師や転任してきた教師に押し付ける事例も存在し、問題を複雑化させている。 「保護者が学校に協力的で、子どもも教師の言うことを素直に聞く」という前提で成立している現在の学校教育システム自体に欠陥があるのではないかという説も存在する。

学級崩壊の原因としては、LDADHDの児童生徒などが要因となった授業の遅れ(妨げ)が原因であるという説や、教育能力の低い教師の学級経営の失敗が原因だとするという説がある。

[編集] 学級崩壊の原因

実際には下記の原因が複合的に組み合わさって起こる場合が多い。

[編集] 主に教師に原因がある場合

90年代およびそれ以前の学級崩壊の原因は、ほとんどが教師の教育技術の欠如にある。

現代においても、低学年・中学年の学級崩壊については、多くの場合教師の教育技術の不足及び学級経営の失敗があると思われる。

[編集] 主に児童に原因がある場合

いじめや学級内の人間関係によるもの。 もしくは軽度発達障害児(学習障害ADHDなど)の児童生徒が誘因となる授業の遅れ・荒れによるもの。

[編集] 主に保護者に原因がある場合

近年、保護者の変容が言われて久しい。 例えば、次のような事例では主に保護者に原因があるといえる。 担任教師が児童の行動をきつく叱った場合に、保護者が謝罪を要求する→担任教師が児童の前での謝罪→その謝罪している姿を見た児童達が教師をますます馬鹿にするようになり、学級の荒れが加速していく。 このようなケースで学級崩壊が進む場合、結局一番苦しむのは児童達である。 保護者が児童を大切に思う気持ちが、結果的に学級の荒れを加速させてしまうという場合があるのである。

[編集] 主に校長・学校に原因がある場合

新規採用の教師のクラスで学級崩壊が起こった場合、その多くが教師の原因というよりも、むしろ校長の人員配置のミスであるという場合が多い。 担任の配置は校長の権限という事になっているが、現実問題として、問題のある学級を持つことを嫌がる教師も多い。 教師集団から人望を得ている校長ならば、そのような場合にも教師を説得することは容易であるが、人望がなく、教師集団から陰で嫌われている校長の場合には、誰からも担任を引き受けてもらえず、新規採用の教師や、転任してきた教師にそのような困難なクラスを持たせるという事例がある。 その他、軽度発達障害に対する無理解。担任教師を支える支援体制の不足。

[編集] 主に地域・環境に原因がある場合

教育困難な地域である場合(例えば、繁華街の近くやホームレスが多い地域)。

[編集] 学級崩壊の類型

[編集]  1年生の学級崩壊

1年生の学級崩壊では、誤った自由保育や、家庭の教育力の不足などにより、基本的生活習慣のできていない子が要因となって起こる場合が多い。高学年の学級崩壊が教師に対する反発・暴言・暴力が多いのに比べると、低学年の学級崩壊は「授業中に椅子に座っていられない」「机の上を飛び回る」などである。

[編集]  2・3・4年生の学級崩壊

2・3・4年生に多いのは、

  • (1)教師の人格・指導技術になんらかの問題があり児童が反抗する
  • (2)前年度に学級崩壊しており、その影響。

という二つのパターンである。

[編集]  5年生の学級崩壊

5年生の学級崩壊では、発達加速現象による子どもの変化に、現在の学校教育システムが対応しきれていないということが背景になっている。 高学年による学級崩壊では、女子が要因となるパターンが多い。 小学校高学年を一人でみるという現在の教育システムに無理があり、高学年は教科担任制にする方が良いという説もある。 小学校高学年では、主に教師への反発・暴言・暴力という形をとって現れ、「児童の集団による教師いじめ」という側面が強い。

[編集]  6年生の学級崩壊

6年生の学級崩壊のほとんどは、前年度までの崩壊していたのをそのまま引きずり、6年生で担任が替わっても立て直せないというパターンである。また一部には、5年生時にあった児童と担任教師の不適応がなんらかの形で発現せず(児童が我慢するなど)、それが持ち上がりで6年生で爆発するというパターンも見られる。

[編集]  中学校以降の学級崩壊

学級崩壊は主に小学校について使われる言葉であり、中学校・高等学校においてその実態を表現するならば、「授業崩壊」「学校崩壊」「荒れ」といった言葉がふさわしい。 一部には小学校在学時には崩壊していた学級に所属していた児童が、中学校に進学すると何事もなかったかのように落ち着くケースが多いという検証がある。フロイトのいう「タブー破り」、思春期の一過的な反抗ということなのだろうが、安易に説明のつかないケースもある。内申書や受験などの重圧により生徒が我慢しているという部分も看過することは出来ず、現代の学校や教育の歪みとみなされ、注目されている。

[編集] 学級崩壊の歴史

[編集] 戦前の学級崩壊

戦前の文献に学級崩壊とみられるような記述のある文献は存在しない。(「荒れ」と思われるような記述の文献は存在する。[要出典]) 戦後になってからの回想などでは、学級崩壊に近いような記述も存在するが、そのほとんどが「いたずら」の延長として回想されている。

[編集] 戦後~80年代の学級崩壊

従来の学級崩壊は、教育界では公然の秘密の一部としてはあったが、あまり表にでることもなく、注目されることも少なかった。確固たる統計が存在するわけではないが、件数も少なかったものとおもわれる。この時期の学級崩壊はほとんど教師自身の教育力の問題といっても過言ではない。

[編集] 90年代の学級崩壊

「学級崩壊」という言葉は90年代のNHKドキュメンタリー番組で使われたのが最初とされている。この時期より、教育界だけに限らず国民の関心の的になった。この時期の学級崩壊は子供の教師への反発が広がって学級運営が立ち行かなくなる「反抗型の学級崩壊」が主流である。 この時期でもやはり、学級崩壊の中心的な理由は教師の力量の不足・教育技術の不足に負う所が多い。この時期までの学級崩壊は「黄金の三日間」など学級経営についての基本を知っていて、一定の教育技術を有していれば防ぐことができたといわれる。

[編集] 現在(00年代以降)の学級崩壊

90年代に比べ現在、「学級崩壊」はそれほど世間の注目を集めてはいない(「学力低下」「経済力の差による学力格差」「教育における愛国心」「道徳」「教師の教育力向上」が教育における問題として注目を集めている)。 しかし、教育の現場では、いまもって大きな問題として立ちふさがっている。埼玉県教育委員会の調べでは、県内の大多数の学校で学級崩壊の事例があるという。

日本の教育界では伝統的に、教育の諸問題は教師個人の力量論に帰せられることが多かった。たしかに、従来の社会のように「学校に行くのがあたりまえ」「目上の人間を立てるのがあたりまえ」といった社会であれば、学級崩壊も教師個人の責任に帰せられる。

しかし、現在においては「学級崩壊は教師個人の責任である」とは言いがたいというのが教育界の定説である。一方、多くのマスコミや一般の保護者は90年代以前と同じように教師個人の力量論に帰する言説が多い。いまだに学級崩壊などの問題が教師個人の責任に着せられている原因としては、実際の教育現場にあたっている者の主張が、「身内をかばう言説」「学級崩壊を社会のせいにしている」と受け取られてしまい、理解されにくいというのが原因である。自らのの責任を取りたくない保護者にとって、学級崩壊を教師個人の責任に帰してしまえば楽であるから、教育現場からの発信は理解されにくいのではないかとも考えられる。

一方で、件数は少なくなったものの、教師個人の責任に帰するしかない事例もいまだに存在する。しかし、それらの多くは専科にまわすなどといった対応が現場でとられており、「指導力のない教師が担任をやって学級崩壊を起こす」という構図は世間で思われているほど多くはない。むしろ現代では「学級崩壊はどんな教師にも起こりうる」というのが教育界での一般的な認識である。

「担任が替わったらクラスが落ち着いた」という事例を取り上げて学級崩壊を教師個人の責任とすることには慎重でありたい。「学級崩壊によって担任が替わる」という重大なできごとが起これば、当然児童や保護者の認識も変化し、取り組みの姿勢も変わっていく。

近年、教員採用試験の採用数が増え、教師の教育力が低下しているのではないかと言われる。しかし、採用試験の倍率をみるならば、現在の50歳代の教師の方が採用倍率は圧倒的に低く、かれらの方が指導力がないということになってしまう。このような姿勢については慎重でありたい。 

また、ここ近年で増えているのが、友達感覚の優しい先生との馴れ合いの末に秩序が崩れる「馴れ合い型の学級崩壊」である。一方、従来のような「反抗型の学級経営」も地方を中心に依然として存在するといわれる。また、この二つのは厳密に区別できない場合も多い。

[編集]  医学的・科学的・社会学的見地からの学級崩壊 

[編集] (医学)学級崩壊と軽度発達障害児(注意欠陥多動性障害など)

近年では学級崩壊の原因のひとつとして軽度発達障害児(ADHD=注意欠陥多動性障害学習障害高機能自閉症アスペルガー症候群など)の存在があげられるといわれる。軽度発達障害児は、医者でさえ、そうでない子と見分けるのは難しいと言われる。軽度発達障害児は、一見して普通の子であり、軽度発達障害に理解のある保護者は少ない(理解ある教員も多いとは言えない)。また、軽度発達障害は、普通の障害以上に「親がその障害を受け入れられない・認めようとしない」という問題が存在する(実際にはそれどころか教師を含めた周囲が気づかないという事例も多数存在する)。

例えば、注意欠陥多動性障害に対しては、アメリカでは多くの場合、投薬で抑える。しかし日本においては、注意欠陥多動性障害や投薬治療に対する偏見が根強く(錠剤リタリンの項目参照)、なかなか活用されていない。アメリカ国内においてさえ、投薬治療への偏見があり、投薬が批判される。

80年代以前には軽度発達障害児はいなかったのかというと、そのようなこともなく、80年代も軽度発達障害児は存在したと考えられる。 しかし、

  • (1)地域の教育力
  • (2)体罰
  • (3)(教師の言葉には従うという一般認識に基づいた)周囲の児童からの圧力

により、軽度発達障害児は自然と矯正され、大きく注目されることはなかった。

(上記の説が有力だが、軽度発達障害は、蓄積された食品添加物によるもので、昔より実数として増えているという説もある[要出典]

近年「教師が自分の指導が通りにくい子を軽度発達障害児扱いしているのではないか」という説が一部に存在している。 しかしこういった説を唱える者は、学級崩壊といった今の教育現場を知らない、社会学などの学者である場合が多い。 教育現場にいる者及び教育分野に取り組む医者の間では「軽度発達障害が学級崩壊の一つの要因になりうる」というのは一定の支持を受けている。

[編集] (社会学)学級崩壊の背景 

学級崩壊の背景には、近年における教師の地位の低下があげられる。 そもそも、現在の学校のシステムは、明治大正昭和時代のように「保護者が学校に協力的で、子どもも教師の言うことを素直に聞く」 ということが前提で成り立っている。

かつて学校の教師は(一部の代用教員を除き)当時の保護者とは比べならないほどの高い学識と教養を有していたといわれる。[要出典]さらには義務教育を日本へ定着させようという熱意及び協力体制があった。そして、社会に「大人の言うことは聞くものだ」という前提が存在したいた。

さらに言えば、戦前は天皇・国家など、教師がよってたつべき権威があった(天皇臣民を育成するのが教育の目的であった)。 やや乱暴な言い方であるが、教師に逆らうのはある意味で天皇陛下に逆らうということでもあった。

その結果、明治初期を除き、教師は尊敬される存在であり、「父兄は学校に協力するものだ、子どもは先生の言うことを素直に聞くべきだ」という認識が広く一般に存在していた。 近年、学力で注目されるスウェーデンにおいては、教師の社会的地位が医者・弁護士並に高い。社会全体も教師は「尊敬されるべき職業」とされる。 しかし、現在の日本社会における教師の地位はそうした国と比較した場合、いわゆる「尊敬されるべき職業」と即座には分類されないかもしれない。

その原因としては、

  • (1)保護者の学歴が高度化し、教師と同程度の学歴・学識を有している事。
  • (2)塾の興隆、地域スポーツ団などの習い事の存在によって公立小学校教師の地位が相対的に低下している事。

があげられる。 実際、塾や習い事の少ない地方部においては、都心部に比べ教師の権威が依然として高い傾向にあり、学級崩壊も少ない傾向にある(ただし、いわゆるニュータウンまた特殊な状況を呈す)。

「保護者が学校に協力的で、子どもも教師の言うことを素直に聞く」 という前提が崩れた今、 一部の学校では従来の学校教育というシステム自体が維持できなくなっている。現在の小学校教育は担任教師の人徳に支えられているのが現状である。

さらには「保護者・児童の権利意識の肥大」というのも、学級崩壊の背景の一つとなっている。 学校教育において権利意識を重視すると、教育を「サービス業」と捉えざるをえない。 しかし、日本の場合は教育基本法にあるように、「人格の完成」が教育の目的となっており、小学校においては教科指導と同じくらい生活指導が重視される。しかし、叱責を伴う人格教育・生活指導は絶対に「サービス業としての教育」とは相容れない。

[編集] (教育学)学級崩壊と教育技術 

現在は、児童生徒・保護者が多様化しており、教育技術だけで学級崩壊を防ぐことは不可能である。 実際に、教育技術の重要性を提唱していた団体の代表の教師(6年生担任)の学級経営に困難が生じ、保護者からの批判を受け、定年前に学校を退職せざるをえなくなったという事例もある。 現在の学級経営においては教育技術以外に、教師の人間力(人柄・オーラ・雰囲気・ムード・その人だったら話を聞くといった総合的な力)が必要になってくるのである。

[編集] 学級崩壊を防ぐ方法

学級崩壊を防ぐ方法については様々な方法・指導理念が提唱されている。

教師の努力を重視するもの

  • 「学級集団アセスメント(QU)」-児童同士の関わりを利用。
  • 「非暴力的危機介入法」-学級崩壊というよりも、問題行動の解決の態度。
  • 「態度教育」-靴を揃える・椅子を引くといったことから教育していく。原田隆史氏など。
  • 「楽しい授業」-授業作りネットワークなど。
  • 「TOSS型学級経営」-斉藤喜博・東井義雄・船井幸雄などの影響を受けた教育技術を重視した指導。自己啓発の要素も加味している。

行政的な対応を重視するもの

  • 「ゼロトレランス」-児童生徒の小さな問題行動にそれに応じた罰を与える。
  • 「オンデマンド教育」-人格教育をやめ、他国のように教科指導に特化。
  • 「家庭・地域教育」-「心の東京革命」のように、家庭・地域の教育力を復活させる。
  • 出席停止・原級留置の有効的活用
  • 医療機関・警察との連携(欧米ではスクールポリスとして一般的である)
  • 体罰の復活(腕立て、廊下に立たせるなど)
  • なんらかの方法による教師の権威の復活。

上記が、近年注目されている学級崩壊を防ぐ方法である。しかし、人間相手の仕事に、「こうすれば必ずうまくいく」というような決定的な方法は存在せず、学級崩壊の原因・特徴自体も、地域・校種・学年・学力などにより様々である。これらの方法を過信することには慎重であるべきである。

現在教育現場にいる者の一定数は自身の学級運営に不安を抱えている。このような、自分の学級経営に対して不安を抱えているような教師を対象とした、自己啓発的なセミナーも一部で開催されている。そのようなセミナーでは高額な講演料や検定料が存在し、関連書籍や関連グッズが大量に売られている。こういったセミナーに来ない普通の教師を罵倒し、参加者に優越感を与える事例が多いという。

一部にはこれらの団体に対して「学校休んで全国を飛び回る。目の前の子どもを相手にせず教祖のために授業をやっている」などといった厳しい批判も存在する。一方でこれらを受講することによって自信がつくのならば、それは良いことなのではないかという意見も存在する。セミナー参加料金が高額かどうかについても人によって意見が分かれるところである。また、ビジネスマンを対象とした自己啓発セミナー的なものが批判を受けることは少ないのに、教師を対象にしているだけで批判されるのはおかしいという意見も存在する。そもそもセミナーまで存在するということが、学級崩壊が現代の教師にとって大きな問題であるということの一つの証明である。

[編集] 学級崩壊を解決する方法

上述の通り、学級崩壊を解決する決定的な手段は存在しない。 そもそも学級崩壊には様々な原因があるが、多くの場合教師が児童からの信頼を失うという形態を伴う。学級崩壊した時の先生が、それを立て直すというのは非常な困難を伴う。 関連文献のうち『学級崩壊からの生還』では、その宣伝文句で「唯一学級崩壊からの生還の記録」とうたっているが、その多くが「前年度に崩壊していた(他の教師)のを立て直した」「自分で荒れさせてしまったのを立て直した」「学級崩壊したクラスでそのまま耐え切った」というもので、「自分で学級崩壊までいってしまい、自分でそれを立て直した」という例は一例も存在しない。せいぜい、「自分で荒れさせてしまったのを(学級崩壊の前段階まで)立て直した」というのが2例あるだけである。

学級崩壊をして同じ先生が立て直す方法はないが、学級崩壊の改善の方向には次のような事が有効であろう。

  • (1)学校全体で取り組む。

(教頭などをクラスに入れ、複数体制で臨む。ただし小学校の場合、荒れてないクラスを複数の先生がみると、ルールの混乱などで、荒れの原因となる場合がある)

  • (2)保護者の協力。

(保護者が日替わりで教室に入る。ただしこれも学級崩壊していない普通のクラスで行うと、子どもが落ち着かなくなる)

  • (3)担任教師が病休などを取り、交代する。

(一般にはあまり知られていないことだが、実際の教育現場では「校長判断による病休」も存在する。ただし非常に少数である)

また、学年が変わる時の学級解体は、学級崩壊の改善策として非常に有効である。 従来の学校教育においては1・2年/3・4年/5・6年が同じクラスであることが多く、3年生時、5年生時にクラス替えをすることが多かった。 そのため、1年生・3年生・5年生の時に学級崩壊していても、保護者がなんら働きかけをしなければ、その崩壊したままの学級で次年度に持ち越される場合が多かった。 崩壊したクラスに指導力のある先生が配属され改善される場合もあるが、次年度も荒れを引きずる場合・担任の力が及ばず、かえって酷くなる場合も非常に多い。 これを防ぐためには、崩壊したクラスの保護者が一致団結して、学校側にクラス替えを要求することが必要である。 特に、教育現場では5年生から6年生にあがる時に学級解体・クラス替えすることは非常に不名誉なこととされ(校長の指導力に疑問を持たれるため)、なかなか難しい。しかし、荒れを持ちこすのは子ども自身の教育にとってよくないので、クラス替えを要求するという方法は有効であるといえる。

[編集] 関連文献

学級崩壊についてはチャールズ・E・シルバーマンの『教室の危機 学校教育の全面的再検討』上下が1973年にサイマル出版会から翻訳が刊行されたのを機会に、教育、学校、教室の危機や崩壊といった言葉が盛んに使われるようになった。(川上源太郎の論争を引き起こした本『学校は死んだ』など。)同書は、これに反論したり、擁護したりする類書を多数登場させる引き金になった。

  • 原田隆史著『本気の教育でなければ子どもは変わらない』旺文社(2003/10)、ISBN 4010550252
  • 村上龍著『教育の崩壊という嘘』日本放送出版協会(2001/2)、ISBN4140805838
  • チャールズ・E・シルバーマン著『教室の危機 学校教育の全面的再検討』サイマル出版会
  • 川上源太郎著『学校は死んだ』
  • 朝日新聞取材班『学級崩壊』朝日新聞社 -世間的に大きく注目されるきっかけとなった。
  • 小林正幸『学級再生』講談社 -教育臨床心理学の立場から解説。わかりやすい良書。
  • 大石勝男他著『学級づくりにいきづまった時』国土社-学級経営論。
  • 今泉博著『崩壊クラスの再建』学要書房-崩壊クラス再建というよりも、著者の実践記録。
  • 金子保著『学級崩壊・授業困難はこうして乗りこえる』小学館-学級崩壊についての包括的な解説書。
  • 向山洋一編著『学級崩壊からの生還』扶桑社-編著者の団体のイデオロギーの立場から書かれた書物。

[編集] 関連項目

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