変態性欲
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変態性欲(へんたいせいよく、英語:Perversion)は、人間の性的行動や性欲のありようにおいて、正常と見なされない種類の嗜好を指す。大正時代から昭和初期にかけては、精神医学における用語でもあったが、今日では、性的倒錯(paraphilia)という言葉が術語として使われる。「変態性欲」は現代では俗語であり、それ故、個人個人で意味の捉え方が一定しない。
なお、日本においては大正時代には早くも俗語化しており、当時、「変態性欲」ブームが起きて文学者から民俗学者までさまざまな人が変態性欲について論じている。当時は自慰やインポテンツも変態とみなされることがあったが、時代の推移により意味内容は変わっていった。「変態性欲」の語が日本で広まったのは、1914年(大正2年)にクラフトエビングの『Psychopathia Sexualis』が、『変態性慾心理』の題名で翻訳刊行された影響が大きかった。
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[編集] 概説
通常では性的魅惑を生じない、一般的に、あるいは個々人で考えられている行為や状況に対し、性的興奮を覚える心理を指す。ときとして、異常なまでに性に執着する様態を意味する。異常性欲、変態とも云うが、微妙に意味が異なっており、変態性欲の意味内容自体に曖昧さがある。変態性欲を行動に移すとき、場合によって、変質者と呼ばれることがある。
俗語化した結果と、古い時代の性的倒錯に対する考えかたをそのまま残していること、加えて個々人の偏見に基づく決めつけの為にこの概念が使用される結果、俗語である以上に、他者に対する侮蔑語、差別語として使用されている。21世紀の現代になってもなお、クラフトエビングの著書が、大正時代と同様の『変態性慾ノ心理』という題名で出版されており、本来は学術書である研究書が興味本位で読まれていることも、この趨向に拍車をかけている。
ローマ字表記の「HENTAI」の頭文字を取って、H(エッチ)という言葉が生まれたという説もある。
[編集] 分類
一般的な男女カップルの性交(セックス)を標準に捉えると、それから逸脱したと見なされる行為が変態性欲ということになる。例えば、次のような性行為のありよう、性的衝動、同性愛などの性的指向、また多様な性的嗜好が変態であり、「異常」とされることがある。
[編集] 通常の性欲に基づくもの
- 正常位以外の体位(後背位・騎乗位など)
- 性器以外の部分で行う性行為(フェラチオ・クンニリングス・パイズリ・アナルセックスなど)
- 性具(ダッチワイフ・バイブ・ローターなど)を用いた行為・通常は性行為に用いない道具を用いた性行為
- 集団での性行為(3P・グループセックス・スワッピング)
- 同性愛者(ゲイ・レズビアン)の性行為
- ナルシズムと強迫観念を伴わない自慰
[編集] 逸脱した性欲に基づくもの
- 性対象(性的魅力を持つもの・状態)の異常
- 性目標(性的満足の行為)の異常
(参考文献:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
[編集] 正常と異常
変態性欲においては、正常であるか異常であるかを問題にするが、性的嗜好においては、精神医学的に精神障害と見なされる極端な逸脱を除いて、今日では正常と異常の区別には意味がないと考えられている。むしろそれは、偏見などに基づく社会差別の装置の一部を構成している。
例えば、フェラティオ、自慰などは、日本であっても、その他の多くの国の文化伝統を見ても、「異常」などと見なされていなかった。しかし西欧近代では、「異常」な行為の範疇に数えられていた為、日本においても、このような見方が流布した。正常と異常ではなく、本人や相手の身体的・心理的な健康や、また周囲との人間関係における障害の有無が問題となる。
このような性的な生活における健康と規準から見て、通常のセックスであっても、極端に回数が多い場合や、あるいは見境なく不特定の相手と行っている場合などは、変態の範疇に入れられることもある。自分達の行為を写真やビデオに撮影して楽しむ行為なども、パートナーが嫌がるのに強要したり、第三者に見せたりすれば変態の領域になりえる。
[編集] 偏見に基づく誤用・濫用
「変態性欲」あるいは、それが更に俗語化した「変態」という言葉は、社会的に少数者の性的嗜好に対し、また差別の意図から敢えて、他人を貶める目的で使用されることがある。本来の性の嗜好についての逸脱という原義から懸け離れている例も多く、このような用法は、主に若い男性に対して用いることが多い。例としては、「流行の服装や外見をしていない男は若い女性に相手にされないので性欲を溜めており変態だ」、「貧乏な男は若い女性に相手にされないので変態だ」など。他にも、年長者の女性に思慕の念を抱く男性を「マザコン」の性癖をもつとしたり、少女のアイドルやスポーツ選手のファンを「ロリータコンプレックス」の性癖をもつものとして、一方的に変態性欲の持ち主として扱う傾向もある。
このようなことから派生して、いわゆる「おたく的な趣味をもっている男は変態」とか「美少女アニメファンは変態」など、趣味に性欲を絡めるような認識も増えている。
これらは、典型的なタブロイド思考であり、偏見と差別に基づく臆断であるが、実際にはこのような者に対する偏見は、近年の日本ではより激しくなっており、変質者、犯罪者あるいはその予備軍であるとしてコミュニティからの排除さえ行われることがある。