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地雷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

地雷(じらい、(『ぢらい』とあらわすこともある。)landmine)とは、地面に埋めるなどして用いられる兵器。対人用、対車両用がある。

目次

[編集] 解説

地雷
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地雷

古典的かつ伝統的な物では、一定の重量信管にかかることによって作動し、爆発することで通過した人や物を殺傷破壊することを目的としている。対人地雷には、前述の圧力式のほか、ワイヤでピンが抜かれることで爆発するもの(引張式)、遠隔操作で起爆させるもの、赤外線センサー等を使用するものがある。設置方法はさまざま。

基本的に踏めば即起爆するものが一般的であるが、第二次世界大戦中にドイツ軍が使用したSミネと呼ばれる対人地雷は誰かが通過すると地中から高さ1m位に飛び上がり起爆することで踏んだ人物以外にも効果を与えうる。

対応する重量によって、対人地雷・対戦車地雷などに分類される。第2次大戦中の対戦車地雷の感知重量は90kgから200kgに設定されており、通常、人が踏んだくらいでは爆発しない。

地雷の欠点として、一度通過すればそこは安全地帯になってしまうということが挙げられる。一度爆発すればそこにはもう地雷はないし、爆発しなければそこにはそもそも地雷がない。そのため過去においては、捕虜に前を歩かせその後ろを行軍するといったことも行われた。また巨大なローラーのようなものを車両の前に取り付ける対地雷装備も開発されている。この欠点を補う為に複数回刺激が加わって爆発する地雷が造られた。これには隊列を組んで行軍している部隊に対してより多くの被害を与えられるというメリットもある(先頭を歩いている者が踏んで爆発するよりも隊列の中間で爆発する方がより被害が大きい)。一方でこのような地雷は残留地雷の問題をより厄介にしている。

広範囲に地雷が埋設された場合、その地域は地雷原と呼ばれる。地雷原に対しては小型爆弾を大量にばらまき地雷ごと爆破させる日本92式地雷原処理車のような対地雷兵器なども開発されている。(→地雷処理戦車

適切に敷設し、適切に管理された地雷原は比較的低コストで防衛ラインを設定できるため、国境線や海岸線の長い国にとっては、効果的な防衛に適している。しかし不適切に敷設されたり、適切に管理されていない地雷原は敵だけでなく味方にとっても脅威となる。前線がいきつもどりつしているような場合、内戦が長期化している場合など、地雷は敵・味方あるいは軍人・民間人を区別せず爆発する。そのため、地雷を敷設した場合は、そのことを直ちに友軍へ連絡する必要があり、戦闘終結後には速やかに地雷を撤去することになっている。

[編集] 新機能

近年になって開発された地雷は、行方不明になった際の安全対策も進化したものになっている。

  • 敷設時にタイマーをセットし、それを経過した時点で完全に無力化する。
  • 暗号化された無線送信に対して応答して所在を知らせ、回収を容易にする。

その他残置された地雷を非戦闘員が後日に触れて被害に遭うことを相当な高確率で防止する機能は次々に開発されている。つまり、今叫ばれている地雷の人道的な面での問題のほぼ全ては、(コストは掛かるが)技術で解決が可能なものである。しかし、昨今問題とされているのはこうした機能を持たない旧式の地雷であり、発展途上国では現在でも依然として安価且つ大量に製造販売が行われている。

[編集] 戦略上の地雷

地雷は原則として(自分から飛んで行ったり)能動的に攻撃を行うものではない。これは日本政府が標榜する「専守防衛」に極めて適ったものである。これを製造販売しないとすることはまだしも、現有分を破棄処分し、かつ今後にわたり決して敷設しないと宣言するということは、仮にその国に攻め入ろうと企む勢力があるとした場合、この者たちの地上作戦立案がいかに容易なものとなるかは想像に難くない、という主張もある。

[編集] 対戦車地雷

TM-46対戦車地雷
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TM-46対戦車地雷

対戦車地雷(たいせんしゃじらい)は、主に戦車などの装甲戦闘車両を破壊する事を目的として使用される地雷である。

一般に、軍用車両は底部の装甲が最も薄いため、地雷による攻撃はかなり有効な手段となる。故に、5から10kg程度の火薬でトラックや装甲兵員輸送車等を十分に破壊することができ、軽戦車を横転させ、主力戦闘戦車に対してもキャタピラやサスペンションを破壊するなどの威力がある。

70kgから130kg以上の加重で起爆するようにされており、これは武器弾薬等を携帯した兵士が踏んでも起爆せず車両を攻撃する為である。磁気吸着式により、車両に吸着させるタイプや、有人管制により手動で起爆させるタイプもある。地雷除去を防ぎ、殺傷力を上げるために対人地雷とセットで埋設されることがある。人間が踏んでも起爆装置の中心点を踏めば起爆しないが少しでも中心点を外れた部分を踏めばテコの要領で起爆する重量に達してしまい起爆してしまう。そのため現在の陸上自衛隊での教育時にも対戦車地雷だからと言って踏んでも問題ないわけではないことを十分に教育している。

対戦車地雷に対抗する為には、車両の底部の装甲を厚くしたり、二重にする、車両床を高い位置にし爆風を逃がすV字型にする、装輪数を増やすなどの方法がある。

爆薬が不足している軍・武装勢力においては榴弾砲迫撃砲砲弾航空爆弾を地面に埋め込み、対戦車地雷として利用した例がある。日本軍の場合、地雷を背負って敵戦車の前に身投げしたり、穴を掘って爆弾を抱えてうずくまり、敵の接近に合わせて信管を叩く「人間地雷」戦術を実行している。

パレスチナでは重装甲で知られるイスラエル国防軍メルカバ Mk 3戦車を行動不能にし、イラクでは対戦車地雷を積み重ねる事によりアメリカ軍M1A2SEPエイブラムス戦車を完全に破壊した。

[編集] 対人地雷

対人地雷の一種 クレイモア地雷
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対人地雷の一種 クレイモア地雷

現在使われる主な対人地雷(たいじんじらい)には、踏みつけた人間の足を踝(くるぶし)から吹き飛ばす程度の威力をもった小型のもの、容器が二重になっていてワイヤーや踏圧その他で信管が作動すると内側の容器が空中に1-2m打ち揚がって爆発し、内部の鋼球などを撒き散らして周囲数十mの敵を倒すことを狙った大型のもの(跳躍地雷)、信管が作動すると扇状の範囲に鋼球を撒き散らして殺傷する地上設置型のものなどがある。

一定の方向に炸裂する性質(指向性)を持った地雷(クレイモア地雷など)を指向性対人地雷といい、危害範囲が非常に広いのが特徴である。敵兵が密集していた場合、一度に10名以上を殺傷できることもある。

安価で数多く使われる小型のものは、敵兵を殺すことではなく、敵兵に重傷を負わせることにより戦闘不能にすることを目的としている。敵兵を1人戦死させれば、それは敵の兵力を1減らすことになる。しかし、敵兵1名に重傷を負わせれば、敵は重傷者を後送する兵・手当てする兵を確保せねばならず、前線の敵兵力を2名以上減らすことができることに加えて、重傷者が身近で苦しむ姿を見させることにより、戦闘可能な敵兵の戦意をも喪失させることができる。また、しかけられた地雷は後々まで残り、戦争終結後にも数多くの犠牲者を出してしまう。また、近年では地雷除去対策が施された地雷なども存在する。このようなことから、対人地雷は悪魔の兵器と呼ばれている。それゆえ、規制が議論されている

[編集] 戦場に於ける地雷原の突破

戦場に於いて地雷原を突破する際には以下のような方法が取られる。

  • 地雷処理用の専用機材を用いる

もっとも望ましい方法で、前述の地雷処理戦車や地雷処理用の機材(地雷原処理用のロケット弾発射機等)を使用する。以前は、戦車の前方方向に伸びた機材で対戦車地雷を捜索し爆破するスネークが使用されたこともある。また第二次世界大戦から使用され始めた金属探知機を用いる方法もあるが、これは木製地雷等金属の使用量が極めて少ないものに対しては効果を発揮できない。

  • 地雷原に砲撃を加える

砲兵部隊の支援が受けられるならば、地雷原に砲弾を撃ち込み地雷を誘爆させるという方法もある。これは砲兵でなくとも、進撃する戦車自身が搭載砲で道路を射撃することもある。

  • 無人の車両を走らせる

戦場に於いて捕獲した自動車のエンジンを掛け、一定距離を走らせる。自動車は貴重品だが、それを惜しみ失うであろう戦車や人命に換えられるものではない。

  • 歩兵の一般装備を用いて地雷を処理する

上記のような方法が取れないとき、歩兵がスコップナイフを用いて地中を探り、地雷を除去(単にマーキングだけに留めることもある)する。地雷は一定以上の圧力が加わらないと爆発しないので、ナイフ等でコツコツする程度には安全である。

ただし地雷の中には除去する人物をも対象にしたものがあるので注意が必要である。例えばある一定の角度以上に傾けると爆発するものがある。また、そんな機能を備えていなくとも地雷を二重に設置し、下の地雷の信管を上の地雷に結ぶ。こうすれば除去する誰かが上の地雷を取り外そうと持ち上げれば、下の地雷が起爆する。

  • 非人道的な方法を用いる

上記のような「正攻法」ではなく、敵の捕虜や一般市民を背後から銃で脅し、部隊の先頭を歩かせるという方法がある。第二次世界大戦東部戦線では独ソ両軍で見られた光景である。また人を使うのではなく動物を使う方法もあるが、こちらは成功しないことが多い(あらぬ方向に走っていく)。但しこれらの方法では対戦車地雷に対する効果は薄い

  • 無視する

悠長に地雷を処理していられる時間のない緊急時に於いては「踏んだら不運と諦めろ」というふうに地雷の存在を無視して行動することもある。また、人命が軽視される、あるいは出来うる体制下にあっては、「十個の地雷があっても、十一人の兵士がいれば必ず突破できる」という考え方がなされる場合もある。

[編集] 対人地雷全面禁止条約

██ 条約批准国
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██ 条約批准国

ゴラン高原の地雷原標識、シリア陸軍によって40年以上前に設置されたもの
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ゴラン高原の地雷原標識、シリア陸軍によって40年以上前に設置されたもの

このような地雷に対し、人道的な見地から「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(対人地雷全面禁止条約、オタワ条約などともいう)が作られ、1999年3月1日に発効した。この条約が作られる機運を盛り上げるにあたっては、イギリスダイアナ元皇太子妃も大きな役割を果たした。

日本1998年9月30日に、この条約を受諾して締約国となり、2003年2月8日に保有していた対人地雷のうち、訓練用など一部を除いたすべての廃棄を完了した。この式典には小泉純一郎首相(当時)も出席した。

ただ、外国などからの侵略行為に対し日本の長い海岸線を対人地雷なしに(対戦車地雷を高感度で使用する方法もあるが)どのようにして守るかについては自衛隊をはじめ新たな防衛方法が模索されており、当面の間は指向性散弾を対人地雷の代用とするようであるが、これも極めて限定的な補完にしかならないため、防衛力の空白が懸念されている。さらには米中露といった大量配備/輸出国が批准していない現状では条約は象徴的で限定的な意味しかもっていない。

[編集] 地雷除去

戦乱のあった地域では、対人地雷が残存し、戦争終結後も一般市民への事故が後をたたない。しかし戦後の復興には安全な土地の保証がかかせない。その地域の国家が地雷除去の能力に不足する場合など、他国の部隊や非政府組織NGOが対人地雷除去を人道援助として行うことがある。

地雷の除去方法は未だに効率が悪く、危険を伴う「人力作業」が一般的である。ただし世界的に地雷の問題が注目を集める中で、機械を用いた除去方法も普及しつつある。

[編集] 日本発の除去活動

日本の政府開発援助(ODA)は、地雷除去を進めるNGOにも「日本NGO支援無償」として資金協力している。

人道目的の地雷除去支援の会(JAHDS)
1998年設立。カンボジアやタイで地雷除去プロジェクトを実施
日本地雷処理を支援する会(JMAS)
2002年に自衛隊OBが中心となって設立されたNGOで、「日本NGO支援無償」による援助を得てカンボジアで地雷・不発弾処理活動を行った。
日本紛争予防センター (JCCP)「人道的地雷除去プロジェクト」
実際の人道的対人地雷除去作業を日本の組織として初めて単独で行ったのは、外務省のNGO支援無償資金協力により活動資金を得て、元陸上自衛官の辰巳竜悟が中心となって2004年1月にスリランカで開始した日本紛争予防センターの対人地雷除去プロジェクトである。

また、難民を助ける会が行う地雷回避教育や被害者の義足作成支援など、日本の非政府組織NGOによる対人地雷除去を後方から支援する活動も盛んに行われている。また、地雷により皮肉にも義足の需要が急激に増えており、義足などを無料で配布するボランティアなども多く存在している。

2001年に、坂本龍一が中心となりN.M.L.(NO MORE LANDMINE)というユニットを結成、地雷撲滅のチャリティーソング「ZERO LANDMINE」を発売した。このCDの収益は地雷除去活動を支援するために使われた。

日本などの国では、地雷を除去するためのロボット開発が進んでいる。

  • 右の写真は陸上自衛隊施設科装備の89式地雷原探知機セット
    検知部・本体部・操作部・ハンドル・受話部などからなり、地中の金属を探知する機器。地雷や不発弾を探知する目的で使用する。
    掃除機の吸い込み口を思わせる検知部を、地上十数センチの高さに浮かせて動かし、地中に金属反応が無いか探る。

[編集] 転用

  • 地雷という語は、「うっかり踏むと爆発する・踏んではいけない」という連想から、色々な場面で「触れてはいけないもの」「禁忌」を表す喩えとして用いられるる。巧妙に偽装され爆発するまで気付かない、仕掛けられてから長期間放置されていたものが突如爆発し被害をもたらすといった地雷の特性による喩えもある。
  • 日常の会話などで、相手を怒らせたり恥ずかしい思いをさせ、人間関係やその場の雰囲気を壊さないためにあえて触れないようにしている話題を地雷という。そのような話題にうっかり言及してしまった場合「地雷を踏んだ」などといわれる。

たとえば、久しぶりの同窓会であった友人が瞼を二重にする整形手術をしており、他の友人達もそのことには触れないでおこうとしているにもかかわらず「あれ、おまえそんなに目が大きかったっけ?」などという発言をし、その場を白けさせてしまった者に対して使われる。

  • 酒の席などである特定の話題に反応して延々と自慢話や説教を始めてしまう者がいる。とくに目上の者がこの種の話を始めてしまった場合には途中で抜け出すことが憚られるため最後まで付合わされる羽目になる。この様な場合の話題も地雷と呼ばれることがある。
  • 就職・転職活動では退職者が多いなどの問題のある企業のことを指して地雷と呼んだり、そのような企業が多い業種のことを地雷原と呼ぶ場合もある。
  • ○×式や選択式のテストでは、受験者がほんとうに試験の内容を理解しているかどうかを判断し当て推量での合格を防ぐために、この問題を間違えたらたとえ他の問題が全部正解であったとしても不合格となるような問題を地雷とよぶ。
  • ネット上にテキストを公開する時、自分の文章が転載されたかどうか判断しやすくするために、あらかじめ誤字や、英数字の全角半角の間違い、目立たないように半角スペースや改行を入れるといったことを地雷を仕掛けるなどということがある。

ウィキペディア日本語版では、古い版にプライバシーの侵害や著作権侵害の虞やなどの削除が必要となる記述が見つかった場合「地雷が爆発した」といい、そのような記述を紛れ込ませることを「地雷を仕掛ける」という。ウィキペディアはGFDLに準拠しており、過去の版の全てを保存している。過去の版に削除が必要となる記述があった場合、その版以降のすべての書き込みが削除の対象となる。また、そのような記述に気付かないまま記事の分割がおこなわれてしまった場合、分割された記事の全てが削除の対象となるため復旧作業に多くの手間がかかることがある。

  • 風俗遊びにて、相手になった女性がとても対応が劣悪だったり、容姿が醜悪だった場合「地雷」を踏んだと言う事もある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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